これぞ本当の意味の野球人材メジャー流出だ

  • 2018/05/09
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  • のりき 夢丸
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イチローが選んだ「緩やかなリタイア」というべきもの

イチローが選んだ「緩やかなリタイア」というべきもの
いや、まさかそういう結論が待っているとは夢にも思わなかったが…。

今年からMLB古巣シアトル・マリナーズに復帰していたイチロー外野手(44)が、今季の残り試合に出場せず、チームの「会長付特別補佐」に就任したと伝わった。

このニュースが日本の野球オヤジたちにどう伝わったかは微妙だが、つまるところ、第2のキャリア形成に本格的に動き出した、もっとハッキリいえば「引退」までの道のりができあがった、ということで間違いなかろう。

もともとチームに呼ばれた事情も「ケガ人続出の外野手層を補完するため」なのが明確で、「5月半ば以降はどう身を処するかについて話し合うことになっていた」そうだから、チームとしては既定路線の提案。

それにイチローが快く乗った形なのだが…そうですか、そうきましたか…。

 

あの男と重なるセカンドキャリアの行く末

あの男と重なるセカンドキャリアの行く末
このニュースを聞いて、ふと「あの男と同じく、もう日本には戻ってこないのだな」と感じたのは、オジサンだけではなかろう。
あの男とはもちろん、MLBニューヨーク・ヤンキースで現在もGM特別アドバイザーを務める「ゴジラ」こと松井秀喜氏(43)である。

ヤンキースに入団後、Wシリーズでの日本人初MVPを筆頭に、数々の金字塔を打ち立てながら最後はチームに放出され、エンゼルス、アスレチックス、レイズと渡り歩いてキャリアを終えた大打者だが、その後彼もまた日本に戻って野球に携わる道より、アメリカにとどまることを選んだ。

以前国営BS放送の特集で、ヤンキースでのアドバイザー松井氏の働きぶりを追いかけるドキュメントが報じられた。
そこでの彼はなんというか、非常に生き生きとして、若手の指導にも熱が入り、それでいて冷静さを保ち、ベースボールの神髄を外から感じ取りながら充実した時間を送っているようで、ファンとしても嬉しかったことを覚えている。

と同時に、一度放出した選手をキャリア後も温かく見守るどころか、フロントの中枢に入れて離さないヤンキース、MLBビジネスのしたたかさ、見る目の確かさにも少し「恐怖」した。

 

MLBに大挙選手が押しかけることが「流出」なのではない

MLBに大挙選手が押しかけることが「流出」なのではない
今年からエンゼルスの一員となった大谷翔平選手(23)をはじめ、期待の日本人選手が海を渡るとき、必ず起こる論争が「日本はMLBへの選手供給リーグに成り下がって良いのか」というもの。

しかし日本からMLBを目指した若者たちは、本当に「流出」した人材なのだろうか。

「流出」には、その後帰ってくるという意味はあまり含まれない。
一度出たら出たまんま。覆水盆に返らず、である。

MLBで活躍後、再び日本球界でプレーできた人材はあまり多くない。
もちろんピークを過ぎて戦力としては…という事情もあるだろうが、やはり渡米時の「あつれき」「ゴタゴタ」「どうして」が拭い切れていないケースが多い。
よってフロント内に感情論が残り「君の帰る場所はここではない」的な雰囲気を醸すチームも存在するのが現状だ。

つまり外に出たらあくまで他人行儀で、一部を除いて後に古巣が手厚く迎えるような文化がないから、選手もちょっと帰りにくい→帰らないから結局「出たまんま=流出」という言葉で表されることになる。

人材流出を招いているのは、イッチ、ゴジラクラスでも、MLBで培った知識や知恵を還元する最適解がなかなかない日本野球界のシステム、体質そのものが原因ではないだろうか。

 

日本で監督やればいいじゃんという声に

日本で監督やればいいじゃんという声に
最後に「なぜ松井氏は巨人の監督をしないのか」ということも考えておきたい。

MLBで培ったものを発揮する場としてこれ以上ないように見える日本の監督業だが、松井もイチローも天才のように見えて「技術を突き詰めてブレークした」職人肌の選手であり、監督業が合う合わない、できるできないはまた別の問題である。

名選手かならずしも名監督とならず、とはよく言ったもので、これまでにも監督をしていない名選手はたくさんいるし、引退後の選手が目指せる第2の選択肢が日本野球界には少なすぎる。

そういうOBもある意味では「流出」した人材であり、それすら救い切れていない日本野球界に、イッチやゴジラに適したホットな席はいかほど残されているのだろうか。

この記事の作者

のりき 夢丸
のりき 夢丸
馬と日本酒と時代劇をこよなく愛するフリーライター。 モットーは「人の行く裏に道あり花の山」。 最近はドローンに興味津々の毎日。 競馬血統ブログ「ほぼ毎週競馬ナビ」にて執筆中。
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