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何故キヤノンはゼロックスに勝つことが出来たのか?オープン&クローズドを使い分ける特許戦略

  • 2018/12/23
  • ビジネス
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  • 沖倉 毅
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特許ビジネスは独自技術を他社に使わせないか、ライセンス料を取るクローズド戦略か、事業拡大の為に公開するオープン戦略のどちらかにわかれる。

この違いは具体的にどういうものだろうか。

 

昔は特許=クローズドだった

昔は特許=クローズドだった
クローズ戦略には、二つの手法があり法律に強い米国で発達を遂げた。

一つ目は、自社の技術を特許化せずにノウハウとして秘匿化し、他社には技術情報を公開しない方法。これは特許期限が20年で切れる事が判っていて、盗用されるリスクを知っているからだ。

この手法を取っているのがコカ・コーラの原液レシピで、原液レシピは1886年に作られて以来、会社で2人しか知るものがおらず、社外持ち出し禁止になっている。

二つ目は、技術を特許として権利化し、技術は公開するが、自社だけで独占実施する手法である。これは米国だけでなく様々な企業がやっている俗に言われる『特許出願』と呼ばれるものだ。

その反対に『オープン戦略』は、技術そのものを公開したり、所得した特許の使用を有償、無償で認める事だ。

故・安東百福が、インスタントラーメンの市場拡大を狙い、チキンラーメンの特許を開放したのはオープン戦略だ。

昨今の特許のあり方は、会社の技術の心臓部であるコアな部分はクローズドにし、自社の一部の部分は、同業他社との間で情報をシェアするオープン戦略を取るという、オープン&クローズド戦略となっている。

では、オープン&クローズド戦略の先駆けとなったのは、どこの会社だろうか。

 

オープン&クローズドの先駆けとなったのは、インテル

オープン&クローズド戦略の先駆けとなったのは米インテル社だ。

インテル社は、マザーボード(PC周辺機器)の製造技術ノウハウに関しては、アジア企業に提供し、PCの頭脳とも言うべきCPUに関する技術は自社の聖域として新しいものが生まれる度に特許を出願、技術を守っている。

日本で、オープン&クローズド戦略を取り、成功しているのはミドリムシを活用した製品で知られるユーグレナだ。

ユーグレナは、コア事業であるミドリムシの大量培養技術に関してはクローズド戦略を取っているが、生産したミドリムシを食品、化粧品、燃料にするなど多角的に利用する為の技術についてはオープン戦略を打ち出している。

ここまで紹介した例は、同じ業界に、強力な力を持つ同業他社がいなかった例だが、もしも強力な同業他社が居た場合はどうなるのか。

 

何故キヤノンはゼロックスに打ち勝つ事が出来たのか

既に揺るぎない特許と市場を持つ業界の巨人に切り込む事ほど、難しい事はない。
それと同時に、後から市場参入してくる同業他社に対し、50:50以上の関係以上のクロスライセンス契約を結ぶ事はもっと難しいとされていた。

それを可能にしたのがキヤノンだった。

キヤノンが複写機市場に参入した’60年代、市場は100%米ゼロックス社だった。

ゼロックスは複写機に関する1100もの特許を、きめ細かく定めており、この特許網をかいくぐり、新たな技術を開発し複写機を作る事は日本のみならず米国でも不可能とされていた。

当時のキヤノンの社長はそれでも『ゼロックスの特許は一件も使わずに複写機を作れ』と社員に命じた。技術面での開発リーダー・田中氏と、特許チームのリーダー・丸島氏がタッグを組み国産独自の技術を持つ複写機の商品化まで12年の歳月がかかったという。

複写機の心臓部は感光材だが、ゼロックス社はセレンを使っていた為、キヤノンは硫化カドミウムを使う事に。セレンも硫化カドミウムも、元々はカメラの露出調整に使う物質だった。

ゼロックスとキヤノンの運命の別れ道になったのは、特許に対する考えだろう。
複写機などでライセンス収入を得る事を目的にしたゼロックスと、オープン&クローズド戦略を取り、
同業他社同志の事業の拡大を図ったキヤノンでは後者が生き残る事が明らかだった。

キヤノンは現在、専任の知的財産担当者を800人抱え、ライセンスする商品や技術の管理に努めている。
自社に影響がなければ特許使用を承認し、競合相手であればクロスライセンス契約を結ぶようにしている。

また、あらゆる業界との特許関係の知的財産担当者とネットワークを結び、いざという時に、訴訟を避け、担当者同士で話し合いで解決できるようにしているのも、キヤノンの強みだろうし、これからはこうした、攻めと守りが一体となった企業が増えてくると思われる。

いかがだろうか。

自社の特許は攻防一体になってこそ、初めて活かされる。
キヤノンに学ぶ例はまだまだあるはずだ。

 

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沖倉 毅
沖倉 毅
ビジネスと国際関連をメインに執筆しています沖倉です。 転職経験と語学力を生かし、語学教師とフリーライターをしています。 趣味は定期的に記録会に出る水泳、3000本以上お蔵入り字幕なしも観た映画、ガラクタも集める時計、万年筆、車、ガーデニング、筋トレです。 どうすれば永遠の男前になれるかをテーマに、取材は匿名を条件に記事執筆に勤しみます。
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