これって歯周病?歯茎がやせてカッコ悪い【歯医者アドバイス】
- 2019/05/22
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はじめに
歯茎がやせてくると、歯が大きくなったように見えたり、知覚過敏を起こして歯がしみるようになったりと、いろいろ困ったことになります。
この歯茎がやせてしまう現象を、専門用語では『歯肉退縮(しにくたいしゅく)』と言います。
歯肉退縮という病名が付いていることから、歯茎のやせは、歯茎に生じる病気であることがわかります。
歯茎のやせ、つまり歯肉退縮とはどのような病気なのでしょうか。
今回は、オヤジの歯茎のやせ、その原因や対策に迫ります。
歯ぐきとは何?
今回の主題の歯茎とは一体どんな組織のことなのでしょうか。
歯周組織の一つ
歯周組織とは、歯を支える役割を担っている組織で、『歯肉(歯茎)』『歯槽骨(歯を支えている骨)』『セメント質(歯根の表面を覆っている硬い物質)』『歯根膜(歯槽骨とセメント質をつなげている靭帯のような薄い膜)』の4つから成り立っています。
つまり、歯茎は、歯周組織の一つであり、歯を支えている重要な役割を担っている組織なのです。
歯周病とは?
歯周病という言葉をお聞きになったことありませんか、もしくは歯槽膿漏という言葉を。
実は歯周病=歯槽膿漏でして、以前は歯槽膿漏とよばれていた病気が改名されて、現在は歯周病とよばれるようになったのです。
歯周病とは、歯周組織に生じる病気を指します。
歯茎も歯周組織の一つですから、そこに生じた病気ということで、歯茎のやせ、つまり歯肉退縮も歯周病の一つと言えます。
歯茎がやせる原因とは?
どうして歯茎はやせてしまうのでしょうか?
不適切な歯みがき
歯茎がやせてしまう原因で、最も多いのが不適切な歯みがきと言われています。
歯茎の縁の部分は柔らかく、傷つきやすいところでもあります。
歯みがきは、あくまでも”歯”をみがく行為であって、”歯茎”を磨くと、歯茎は傷つき、弱い縁の部分から少しずつ減っていってしまいます。
その結果、歯茎がやせてしまうのです。
特に硬すぎるような歯ブラシを使った時、起こりやすい傾向があります。
働き盛りの中高年の方々は、多忙なので食後の歯みがきをつい乱雑にしていまいがちです。
不適切な歯みがきは、歯茎を下げる要因なので、注意しましょう。
歯周病
歯周病になると、歯を支えている骨、つまり歯槽骨が吸収されてやせていきます。
歯槽骨は歯茎の直下にある骨ですので、歯周病が進行し、ここが減ってくると、それに伴って歯茎もまたやせてくるのです。
歯周病は、30代以降から増えてくる傾向があります。
中高年の方々は、要注意ですね。
加齢
加齢も歯茎のやせに関して、見過ごせない要素の一つです。
実は、歯周組織が健康な状態の人でも、1年間に0.2[mm]程度の速さで歯茎がやせていくことが知られています。
10年間で見てみると、0.2×10=2.0[mm]ですから、例えば20代の若い頃と比べると、40代になれば4[mm]ほども下がっている計算になりますし、50代にもなれば更に下がってしまいます。
もちろん、個人差があり、もっと遅い人もいれば反対の人もいるわけですから、一概に20年で4[mm]となるのではないのですが、それでも加齢が無視できない要素であることがわかってもらえると思います。
噛み合わせのくせ
歯ぎしりや食いしばりといった、噛み合わせに関わるくせも、歯茎がやせてしまう原因となりえます。
意識することがないのでわかりにくいのですが、実は上下の歯は、1日のほとんどの時間、当たることがなく、上下の歯の間には数[mm]の隙間が存在しています。
そのために、歯ぎしりや食いしばりだけでなく、下の歯で上の歯を触るような軽い接触でも、歯にとっては過大な力が加わることになります。
この結果、歯を支えている歯槽骨が減ってしまい、歯茎がやせてくるようになるのです。
歯ぎしりや食いしばりの背景にはストレスが多く潜んでいると言われています。
中高年の方々は、仕事などのストレスを抱えやすく、この点からも注意が必要です。
矯正歯科治療
前歯の歯茎に現れやすいのですが、矯正歯科治療によって歯茎がやせてくることがあります。
これは、歯並びを整えるために、前歯のように歯槽骨が薄い歯を動かすことで、歯槽骨が減ってしまうために起こります。
□歯茎がやせるとどうなるの?
歯茎がやせると、歯が相対的に大きくなったように見える、つまり見た目の問題についつい目が向きがちになりますが、実はそれだけではないのです。
知覚過敏
歯茎がやせることで起こりやすい病気の代表が、歯の知覚過敏です。
歯は、象牙質という物質でできています。
歯冠の部分は骨よりも硬いエナメル質で保護しているのですが、歯根は本来、歯茎や歯槽骨で覆われているところなので、歯冠のようにエナメル質で保護されているわけではありません。
ところが、歯茎がやせてくることで、歯根、つまり象牙質が露出するようになります。
知覚過敏は、象牙質が冷たい食べ物や飲み物によって刺激されることで起こる病気です。
歯茎がやせることで知覚過敏を起こしやすくなるのは、このためなのです。
むし歯
歯茎がやせると、歯根が露出してしまうのですが、歯根はエナメル質で覆われていませんので、歯冠のように強くありません。
そのために、歯冠よりもむし歯になりやすい傾向があります。
歯茎がやせたことによって起こるむし歯は、『根面う蝕(こんめんうしょく)』と呼ばれ、若い方ではなく中高年の方々に発生しやすいむし歯として知られています。
歯周病
歯茎がやせると、その部分だけ歯茎の形が変わってしまうので、歯みがきのときに注意しておかないと磨き残しを生じやすくなります。
そのために、歯茎が腫れたり、出血したりしやすくなる、つまり歯周病が悪化する恐れがあるのです。
そして、歯槽骨の減少が進み、最終的には歯がぐらつき始め、抜けてしまう可能性さえあるのです。
歯茎がやせた時の対処法
歯茎がやせてしまったら、どうすればいいのでしょうか。
歯みがきの方法を正しくする
歯茎を痩せさせてしまう最も多い原因が、不適切な歯みがきにあることは、前述しました。
そこで、これ以上歯茎がやせないように、正しい方法で歯みがきをする必要があります。
正しい歯みがきの方法は、歯科医院で説明してもらえます。
ご自身の歯にあった歯ブラシの硬さや、歯間ブラシのサイズ、デンタルフロス(糸ようじ)の選び方なども教えてもらえます。
正しい歯みがきの方法を理解して、歯茎を守るようにしましょう。
歯周病治療を受ける
歯周病を治すことで、歯茎がやせにくくすることも重要です。
歯の表面を爪や爪楊枝などでこすってみてください。
きちんと磨いているつもりでも、白いカスのようなものが取れてくることでしょう。
この白いカスが、プラークとよばれるもののです。
プラークの正体は細菌の塊で、歯周病を引き起こす細菌もここにいます。
また、歯茎の縁に石のように硬いものが付いているかもしれません。
それは歯石です。
歯石はプラークが古くなり、固くなったものです。
これらを取り除き、歯をきれいな状態にすることで、歯周病を防ぎ、歯茎がやせないようにします。
プラークも歯石も歯みがきでは取れないので、歯科医院で専用の器械を使って取り除く歯周病治療を受ける必要があります。
マウスピースを作る
歯ぎしりや食いしばりなどの噛み合わせのくせがある場合は、歯を守るために歯科医院でマウスピースを作ってもらいましょう。
マウスピースがくせを治してくれるわけではありませんが、噛み合わせのくせによる歯周組織への悪影響を防ぐ効果があります。
外科手術を受ける
手術の方法としては、『歯肉弁移動術』という歯茎のやせた部分の周囲に残っている歯茎を伸ばして縫合して留めることでやせた部分を覆ってしまう治療法と、『遊離歯肉移植術』という上顎などの他の部分の歯茎を採取してやせた部分に移植する方法があります。
ですが、どちらも後戻りを起こして再びやせてしまうこともあり、なかなか難しいのが実情です。
まとめ
今回は、中高年の方々の歯茎がやせてしまう現象について解説しました。
特に覚えておいていただきたいのが、
①健康でも加齢的に減ってしまう
②歯みがきの方法が影響する
③放置すると見た目が悪くなるだけでなく、知覚過敏やむし歯の原因にもなる
ということです。
歯茎がやせ始めるとき、その最初の症状は、歯と歯の間に食べものが挟まりやすくなることです。
もし、歯と歯の間にものが挟まりやすくなったら、一度歯科医院で診てもらったほうがいいでしょう。
今回の記事を参考にして、歯茎がやせないようにしてください。