人民のあこがれの時計は「オメガ」だった!! 北朝鮮、腕時計事情
- 2018/06/09
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金正恩氏の時計が10万円という、意外性
「金正恩氏が身につけている時計、定価は10万円」
スイスのブランド・モバード「ミュージアム」、70周年アニバーサリーエディションなんて話を書いていたアントニオ犬助です。一国を率いる金氏ともあろうお方が10万円の時計とは意外!! という話を前回に書きましたが意外ですよね、やっぱり。
そして、意外な点は価格だけではありません。
北朝鮮の時計といえば、長らくオメガだったから。
例えば現体制のNo.2とされている、崔龍海氏の腕時計はオメガ・コンステレーション、1990年代に製造されたであろうゴールドのモデル。
この様に、オメガと北朝鮮の関わりは深いものがあったのですが……モバードとは。
北朝鮮の腕時計といえば、オメガだったのです
金正恩氏の父上、そのまた父上。
いうまでもなく金正日氏と金日成氏なのですが、彼らは腕時計を人心掌握に活用していましたが、用いられていたのは、やはりオメガのコンステレーション。
犬助が目にしたものは、オメガのロゴの上にハングルによる「金日成」のロゴがあしらわれ、デイト表示にもハングルが用いられるというカスタムモデル。文字盤には「1972.4.15」という文字が入っていましたから推測するに、金日成氏の還暦を記念してのものだったのでしょう。
こんなオメガを与えられた朝鮮労働党や軍の幹部たちは、よりいっそうの忠誠を誓ったのは間違いないないのです。何といっても高級時計のオメガ、それだけでもうれしいはずなのに、「永遠の国家主席」様の御名が刻まれているのですから、まさに天にも昇る心地、これほど名誉なことはないと感動に打ち震えたはずなのです。
加えて、このオメガには別の効用もあるとも聞きました。
たとえば交通事故で行き倒れていた某氏は、御名時計を腕にしていたことに気が付いた人が通報したことにより、最新鋭の設備を備えた病院に収容、治療を受けることができ一命を取り留めることができた、とか。
北朝鮮の慣例で退役後の軍人は、穀物の配給が半分になってしまうのだそうですが、御名時計を見せると現役時と同じ量の配給を受けることができる、とか。
オメガを腕にしているというのは、北朝鮮では特権階級であるという証なのです。
廃れた? オメガを下賜する風習
しかし、新しいリーダーである金正恩氏が身につけている時計はオメガより格が下がるモバード。ということは、折に触れてオメガを下賜するという、2代に渡っておこなわれてきた北朝鮮の風習は廃れてしまったのではないか? と、犬助は思いました。
日本で伝え聞く金正恩氏のうわさといえば、誰某を高射砲で肉片にしたとか、実兄をVXガスで暗殺したとか、血生臭いもの……これでは、飴とムチどころかムチばかりではないですか。御名時計という飴を与えるなんて、まどろっこしいことをやるのではなく、恐怖に震え上がらせていればいいという、金正恩氏の姿勢がうかがえるではないですか。
モバードの着用は国内向けのアピールでもある
ところが、この「ムチばっかり作戦」どうやら違うようなのです。
先日耳にしたニュースによると、北朝鮮は米朝首脳会談がおこなわれるシンガポールのホテル代、1泊65万円を他国が負担するよう求めているとか。
これを「わざわざシンガポールまで来てやったんだから、万事そっちがお膳立てしろよ!!」という面子の問題ではないか? と考える人が多いようなのですが……犬助には、国庫が苦しいことの国内向けのアピールであり、大勢の引き締めを狙ったものと解釈しました。
加えて、金正恩氏のモバードなのです。
ホテル代はともかく、オメガをばら撒くにしても外貨がない。
そんな中で自身だけが、高級な時計を身に付けているわけにはいくまい? という、計算が働いているのではないでしょうか。自身だけが豪勢な暮らしを送っているわけではない、だから国民のみんなも節約にはげんでほしいという……まあ、江戸時代の倹約令みたいなもんですね。
つまり、前回の「腕時計のセレクトから考える、金正恩氏一流の処世術」に書いた内容とあわせるとモバードは国内外、両面に対するアピールではないか? と。
ところで……先述の御名入りオメガですから、きっとレアに違いない!! と、多くの人は思うことでしょう。しかし、昔、犬助が「ヤフオク!」でも見かけたときには、10数万円という、ごく平凡な価格で落札されていました。
まあ、どれだけレアでも需要が少なければ、値段が跳ね上がることはないという好例かもしれません。日本で所有していても、恩恵などありそうもないですし。