韓国・最低賃金引上げで、自営業者大量廃業の危機…何故政策撤回しない大統領?
- 2019/04/13
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韓国の25%を占める自営業者が、文在寅(ムン・ジェイイン)政権が推める、最低賃金の引き上げにより、
廃業に追い込まれている。
廃業までいかずとも、家族が無償で、自分の家の仕事を手伝う『無給状態』と、
コンビニなどのワンオペは深刻になる一方で、所得成長を掲げた『Jノミクス』は、
早くも失敗に終わろうとしているのに、現大統領は何故、政策撤回しないのだろうか。
10人開業する間に、9人が廃業する今の韓国
国税庁の国税統計と、小商工人連合会によると、
昨年’18年廃業した韓国の自営業者は100万人を超えたという結果が出た。
年間開業数を廃業数で割る廃業率を見ると年々悪化。
文政権になってからの廃業率は著しく上がり、’18年末には、9割に達していた。
これは10人自営業者が開業する間に、9人が廃業するという深刻な状況だ。
日本のフランチャイズビジネスの、スクラップ・アンド・ビルドよりも追い込まれている。
’19年1月の韓国全体の失業率は、前年比を上回る4.5%。
これは’08年のリーマンショックの煽りをうけた’10年1月の失業率5%に迫る勢いだ。
『イルチャリ(働き口)大統領』を自認し、保守派の李明博、朴槿恵、両大統領を
『大企業や財閥にすり寄る政権』と批判し当選した文大統領。
国の98%をしめる中小企業及び、個人事業主の生活を豊かにするために最低賃金を引き上げ、
’20年までに最低賃金を1時間1万ウォン(940円)にすると言ったが、その公約があだとなった。
最低賃金を上げた事が、あだとなった理由は、どこにあるのか。
最低賃金を上げると、物も買えなくなる悪循環
’19年度・韓国の最低賃金事業別区分適用策によると、韓国の5人未満の自営業者の小規模事業者もしくは、
家族経営の事業主では、平均月209万ウォン(205,600円)の収入という統計が出ている。
最低賃金の平均は、157万ウォン(154,000円)で、
韓国のサラリーマンの平均月収329万ウォン(323,700円)の半分だ。
が、実際は最低賃金以下で働いている人は大勢いる。
コンビニの店長は、月によっては、12万ウォンの収入しかないという。
新韓銀行の報告によると、’18年7月の『韓国版働き方改革』により、法定労働時間が、
週68時間から、52時間に減らされた事により、コンビニの営業時間や最低賃金にもシワよせが来ているのだ。
以前、コンビニの24時間営業試験的廃止という記事を書いたが、韓国のそれは、日本と事情が違う。
人件費が上がるという事は、物流コストもあがり、当然の事ながら物価もあがる。
それで苦しむのは、最低賃金以下で働く自営業者たちだ。
物流コストや仕入れ値が上がると、削らざるをえないのが自分の店の人件費だ。
私の通うスイミングスクールに、60代の韓国人の女性が来ているが
『日本人も困ってると思うけど、韓国人もっと困ってる。』といい韓国の50代以降の飲食店主が
人を雇えない事情を話してくれた。
彼女曰く、韓国の個人経営、家族経営の飲食店や小売店は、ここ数年の最低賃金のアップで、
人を雇いたくても1~2か月しか雇えないという。
他に忙しい時がある時は、どうしているのかと聞くと『親戚に頼んで手伝いに来てもらってるよ~もちろんタダで。』
と彼女は言うのだ。
これが韓国で問題になっている無休労働者たちだ。
にも関わらず、韓国人が退職後に、自営業者を選ぶ理由はどこにあるのか。
初期投資の少なさで自営業者を選ぶ韓国の人々
韓国では、福利厚生がきちんとしている公務員や大企業を除き、退職後に自営業者を選ぶ人が多い。
その理由は初期投資が少ないからだ。
飲食店や雑貨店やサービス業が多いのを見れば判るが、今後は客の奪い合いになる事も考えられる。
日本の様に『何が出来ますか』『部長が出来ます』という甘っちょろい考えは韓国では通用しない。
文大統領は『最低賃金引上げは弱り目に祟り目だったかもしれない』と
’19年2月の中小企業向けの懇親会で語ったそうだが、
政策を撤回しようともしないのが不思議な話だ。