酒に歴史あり。薬酒から生まれたジンの香りと味
- 2016/09/27
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ジンは、アル中への直行便?
海外ミステリー、特にアメリカのには、アル中の人物が数多く登場しますね。私立探偵は事件の関係者を訪ねるのが商売ですが、部屋に踏み込むと、中年女がベッドにひとり。脇には空き瓶が転がっているなんて場面が、よく描かれます。そして、そういうときの酒はたいていジンです。
出てくるアル中患者の多くは低所得層。スピリッツの中でも値段の安いジンは、彼らがアル中になる直行便。これが、現代アメリカを描くミステリーからのメッセージということでしょうか。
オランダ生まれで、もともとは薬酒
それではジンは酒の中でも安かろう悪かろうなのかというと、そんなことはありません。日本ではもっぱらジンライムやジントニックなどスピリッツの入門編、もしくはカクテルのベースとして飲まれ使われますが、これでなかなか由緒正しい酒なんですよ。
ジンはオランダ生まれ。そもそもはリキュールと同じ薬酒でした。熱病の特効薬とされていたジュニパーベリー(セイヨウネズ)の実(松ぼっくり)をアルコールに浸し、利尿薬としたのが、その始まりです。ジンという名も、ネズを意味するフランス語genévrier (ジュネヴリエ)から生まれたと言われます。
オランダ人が英国王になって、広まった
ただし、ここから先がジンの本当の歴史。時は1689年。この年、新しい英国王としてオランダから迎えられたウィリアム三世が即位します。この人、ジン狂い。イギリスに渡ってもジンの味が忘れられず、それどころか外国からのスピリッツの輸入を禁止し、ジンを英国に広める政策を大々的に打ち出したのです。
やがて19世紀になると、蒸留法に一大革命が起こって、イギリスのジンもライトで洗練された味に変化。オランダ・オリジナルのジュネヴァ・ジンと区別するため、ロンドン・ドライ・ジンが生まれたのでした。
その香りは、現代では多種多様
といった次第ですが、現代のジンは、19世紀に比べてずっと多種多様です。日本で知られているジンのブランドはゴードン、ビーフィータ、ギルビーといったあたりですが、ジン通はイギリスのオールド・トムやスコットランドのブードルス、アイルランドのコークなどを愛飲します。ウィスキーで知られる米シーグラム社もジンを造っています。
スコッチウィスキーとバーボンウィスキーの香りが違うように、これらブランドのジンの違いはやはり香り。ジン本来のジュニパーベリーだけでなく、穀類や柑橘類を加えて、個性的な香りと味を演出しています。
Joshua Rainey Photography / Shutterstock.com
ケネディ大統領やシナトラが愛した酒でもあり
その中で特におすすめするとしたら、ロンドン・ドライ・ジンを代表する銘柄の1つ、タンカレー・スペシャル。ゴードンやビーフィータに比べるとややお値段高めですが、それでも750mlで1,500円前後。手軽です。
かのケネディ大統領やフランク・シナトラが愛した酒でもあります。蒸留を4回繰り返して生まれるすっきりした味の1杯を口にふくめば、少しエグゼグティブ気分になれるかも。