冷やすばかりがビールではない!! 例えばイギリス「エール」ビア
- 2018/10/08
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ビールをチビチビと楽しむイギリス人
「バー」「居酒屋」「スナック」「クラブ」「パブ」。
色々な業態を名乗る日本の飲み屋さん、それぞれに明確な線引きはないということを日本人なら慣習的に知っています。しかし、気の毒なのが外国人。
「パブといえば我がイングランドの伝統的な酒場のこと」以前、知り合いのイギリス人が息巻いていましたから話を聞いてみると、彼が立ち寄った店はイメージしていたパブとは大きくかけ離れたフィリピン・パブだったらしい。もちろんロンドンなどにある伝統的なパブには、カタコトの日本語を話すフィリピーナはいませんし、席に座っただけでお金を取られるチャージのシステムもありません。
「ビールの入ったグラスをチビチビやりながら、思い思いに楽しむのがイングランドの伝統的なパブなのだ」と熱弁をふるっていたものです。
……と、ここで不思議な感じがするのは日本人。なぜ、彼らはビールをチビチビと飲むのか? ということ。私たち日本がイメージするビールとは、暑い日に一気に飲み干したくなるノド越し爽やかなアレのはず。ビールとは少しずつ楽しむのに向かない飲み物だと思っているからです。
イギリスのパブで楽しまれるエール・ビア
イギリス人はチビチビと、日本人は一気に。
なぜ両者のビールの飲み方に違いが出るかというと、イギリスのビールと日本のビールは本質的に違うから。前者は「エール系」、後者は「ラガー系」といった具合に別物だからです。
エール系とは発酵・貯蔵・熟成という製造工程を20度前後の常温でおこなうビールのこと。発酵中に液面の上部に酵母が浮いてくるという特長があることから「上面発酵」と呼ばれる方法で造られます。
そんなエール系のビールは、ラガー系よりも重目でコクがある味わいとフルーツのような香りを持っていることが特長で、じっくり味わうのにふさわしいもの。パブなどでは常温で供されますから知らずにグラスを手にすると、ぬるさに驚くはず。日本酒を冷や(常温)で、チビチビやっているのに近い感覚です。
日本やアメリカのビールはラガー系
一方、日本で広く飲まれているラガー系のビールとは5度前後の低温で発酵・貯蔵・熟成の工程をおこなうビールのこと。酵母は下部に沈んでいくという特長がある「下面発酵」と呼ばれる方法で造られます。
ラガー系のビールの味わいは皆さんも良くご存知の通り。コクが強い、弱いとか、色が濃い、薄いなど個性はありますが日本やアメリカのビールの大半はラガービール。
冷やして一気に飲むのが旨いのです。
寒い夜には、エール系のビールを試してみよう
もちろんイギリスのパブだからといって、全てのビールがエール系とは限りません。
若者ほど輸入ものを中心にしたラガー系を好むといいますから「ハイネケン」など日本でもおなじみのビールの銘柄も見かけますし、「ドラフト」とオーダーするとイメージ通りの生ビールが出てくるでしょう。
しかし、イギリスのビールと聞いてまず頭に浮かぶ「ギネス」はやっぱりエール系。
中でも焦がした大麦を原料にしたスタウトに分類されるものなのです。もっともギネスはアイルランド・ダブリンの会社ですから「イギリスの」というと怒られそうなのですが。
他にイギリスで有名なエール系のブランドといえば「ロンドン・プライド」や「ニューキャッスル」「ホブゴブリン」など。
「水曜日のネコ」や「インドの青鬼」など個性的な銘柄で人気の長野県「ヤッホーブルーイング」は、エール系を専門に手がけるクラフトビールメーカーです。
ここでは世界のビールとして製法の違いから、エール系とラガー系を紹介してきましたが、まあビールとは奥深いもので2種類に分類されるだけではありません。
製法でいうなら極少量ですが「自然発酵」系も造られていますし、色で分類しだすと5種類、スタイルで分類しだすと100種類以上にも分けられるのです。
夜になると肌寒く感じるようになり、ラガー系のビールには手が伸びづらくなる季節になりました。たまには趣向を変えてエール系のビールを楽しむというのもいいかもしれませんね。