ランニングとダイエット - どれだけ走ればどれだけエネルギーを消費するか?生ビール中ジョッキに換算すると?
- 2019/07/23
- ライフスタイル・娯楽
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痩せるために走るという人は世の中に多い。美味しいビールを飲むために走るという人もまた多い。矛盾しているようにみえて、実のところ、その両者は根っこのところで繋がっている。
体重の増減を決めるのは基本的には摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスだ。人はじっとしていても、生きている限りはエネルギーを消費する。それを基礎代謝と呼ぶが、現代人が普通に1日3食を食べて生活していると、それ以上のエネルギーを摂取してしまう。だから痩せるためには、その余剰エネルギーを消費するための運動がどうしても必要になるわけだ。
その意味では、夏は酒好きのランナーにとっては体重コントロールが難しい季節でもある。夏が近づく→ビールが美味い→思わず飲み過ぎる→摂取エネルギーが普段より増えるという構図がある一方で、暑い→走るのが億劫になる→消費エネルギーが普段より減るという一面もある。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、当然のことながら太る。結果として、ただでさえ暑い夏が、さらに暑苦しくなってしまう。
夏に太りたくないランナーは、ビールを控えるか、暑くても走るか、そのどちらかの選択を迫られる。この記事はどうしてもビールはやめられない、やめるぐらいなら死んだ方がマシだ、というランナーにぜひ読んでほしいと思っている。
消費エネルギーの計算式
運動をすることによって、どれだけのエネルギーを消費するか?については運動の強度を示すMET(Metabolic Equivalent)という指標がある。ただじっと安静に座っていたときを1 METとし、運動の種類によってその何倍になるかを示したものだ。
下はMedicine & Science in Sports and Exerciseという米国の学術雑誌に発表された一覧からランに関する項目を抜粋した。
3.0 MET: 散歩(時速4キロ)
9.0 MET: ゆっくりしたジョグ(時速8.4キロ)― マラソン5時間ペース
10.5 MET: ジョグ(時速10.8キロ)― マラソン サブ4時間ペース
11.8 MET: ラン(時速12.9キロ)― マラソン サブ3時間半ペース
12.8 MET: ラン(時速14.5 キロ)― マラソン サブ3時間ペース
上の値に自分の体重を用いて、下の計算式で1分ごとのエネルギー消費量を求めることが出来る。
1分ごとのエネルギー消費量(kcal) = 0.0175 x MET x 体重(kg)
仮に、体重60キロの筆者が30分ゆっくりジョグしたとすると、消費エネルギーは以下のようになる。
0.0175 x 9.0 (MET) x 60(体重) x 30(分) = 283.5kcal
ランニングをビール中ジョッキに換算すると
生ビール中ジョッキ(500ml)一杯は約200kcalということだから、とりあえず上で求めた30分ジョグの消費エネルギー283.5kcalよりは僅かに少ない。30分ジョグしたら、生ビール中ジョッキを一杯飲んでも太らないのだ。
だが、おつまみに枝豆でも頼んだら、合計の摂取エネルギーは283.5kcalを簡単にオーバーランしてしまうだろう。気分が良くなって、「生中おかわり!」なんてしてしまったら、さっき走った分は残念ながら台無しになる。それが嫌なら30分ではなく、1時間走ればいいのだ。それならば消費カロリーも倍になるので、おかわりしても安心だ。生中2杯なんて生ぬるい、もっともっと心ゆくまでビールを飲みたいって人は、ハーフマラソンぐらいの距離を走るとよい。
走ってダイエットをするということが、いかに難しいのか分かってもらえるだろうか。ランとビールとダイエットを巡っては、このように不都合な真実が横たわっているのだ。
良い一面もある。走るペースの違いはダイエットに関しては影響が少ないということだ。同じ距離ならば、ペースが遅いとゴールまでかかる時間は長くなるので、かえって消費エネルギーは高くなることもある。
フルマラソン42キロをサブ3で走る人は5時間かけて完走する人よりはるかにエライと思われがちだが、ダイエットという観点から見ると必ずしもそうではない。
再び、ランナーの体重を60キロと仮定として、フルマラソンを走った場合の消費エネルギーを計算してみると以下のようになる。
サブ3ペース:0.0175 x 12.8 (MET) x 60 (体重) x 180(分) = 2419.2 kcal
5時間ペース:0.0175 x 9.0 (MET) x 60 (体重) x 300(分) = 2835 kcal
つまり、フルマラソンを3時間で走るより、5時間かけて走る方が消費エネルギーは大きいのだ。ゆっくり時間をかけて長い時間を走るトレーニング方法をLSD (Long Slow Distance)と呼ぶが、少なくともダイエット効果は高いことがこのことからも分かる。
勿論、「30分間ジョグ」のように一定の時間を走る場合は、速く走る方が消費エネルギーは大きい。つまり、強度の高い運動の方が、時間あたりのエネルギー消費効率は高い。ウサギと亀の寓話のように、ゆっくり、だが着実に進めば、良いこともあるということだ。
ランニング・ウォッチの落とし穴
いちいち計算しなくても、消費エネルギーを表示してくれるランニング・ウォッチが増えた。とても便利な機能ではあるのだが、実際はあまり当てにはならないという研究結果もある。
スタンフォード大の研究グループがアップルウォッチやフィットビットなど9つの代表的な商品を調査したところ、表示されるエネルギー消費量と実際の数値では大きな隔たりがあったことが報告されている。最も誤差が少ない機種で27%、最も誤差が大きな機種では93%の違いがあったということだ。
ちなみに、どの機種も心拍数などのデータは比較的正確だったそうだが、消費エネルギーの表示は不正確である上にばらつきも多かったとしている。ランニング・ウォッチには○○カロリーを消費したって表示されているから、今日は缶ビール何本飲んでも大丈夫と安易に考えるのは間違いの元になるかもしれない。注意してほしい。
この夏も1人でも多くのランナーが美味しいビールを飲めますように。