池波正太郎の時代小説に学ぶ、ひと味違う湯豆腐
- 2016/12/04
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あのおっかない『仕掛人・藤枝梅安』シリーズに出てくる湯豆腐
池波正太郎の『仕掛人・藤枝梅安』シリーズに、こんな一場面があります。
「彦次郎は、台所へ行き、湯豆腐の仕度にかかった。
梅雨どきの湯豆腐は、彦次郎が、もっとも好むところのものだ。
品川台町の豆腐屋が、毎日のようにとどけてくれる。大根を千六本にして、豆腐と共に煮るのが、彦次郎の湯豆腐であった。こうすると、ふしぎに豆腐の味がよくなる」(「襲撃」)
作中に出てくる料理を作ってストレス解消をはかるファンがいる
池波正太郎の時代小説に料理を愉しむ場面がこれでもかこれでもかと出てくるのは、ファンならおなじみです。本業が商社マンのさる中年氏は、小説を読んで愉しむだけでなく、休みの日には必ず小説中の料理を自分で作るといいます。それが、この人にとっての最高のストレス解消法だとか。読むだけでなく、「使える小説」というところでしょうか。
実際に作中に出てくるのは当然ながら江戸料理ですが、といって江戸料理の文献を見ても全く同じ料理はあまり出てきません。池波流のアレンジがほどこされているからです。上の湯豆腐も、その1つ。
江戸期のベストセラー料理本にもないオリジナルレシピ
豆腐が中国から伝えられたのは遠く鎌倉時代ですが、これを湯豆腐として食べるようになったのは、ずっと後年の江戸時代。江戸期の料理本ベストセラー『豆腐百珍』には湯の代わりに葛湯を使う「湯やっこ」のレシピがありますが、18世紀後半のその時代には湯豆腐はすでに普通に食べられる料理だったということでしょう。
ただし、大根の千切りを添えた湯豆腐は、『豆腐百珍』にも出てきません。やはり池波流アレンジなのですね。
日本酒はもちろん、白ワインにもぴったり
ということで、作り方を。豆腐は木綿を使い、大根、塩、酒、醤油、昆布を材料として以下のように調理します。
①豆腐1丁を4等分し、大根はマッチの軸大の千切りにする。
②土鍋に昆布を敷いて水を満たし、塩、酒、醤油少量を加え、豆腐を入れて煮立てる。
③煮立つ直前に大根をたっぷり上にのせ、大根がしんなりしたら、たれで食べる。
まあ、これだけのことなんですが、大根を加えるだけで、いつもの家庭の湯豆腐とは全く別物になります。
しかも、これ、日本酒はもちろん、白ワインに合います。嬉しいじゃありませんか。