一日に一番裁くだけ?! あこがれの立行司「木村庄之助」への道
- 2018/10/23
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土俵に秩序と格式をもたらす行司という存在
協会と貴乃花親方の騒ぎををよそに、連日満員御礼。大相撲に何度目かのブームが訪れています。くり返される暴力の問題、八百長の疑惑などなど不祥事が起こっても、その度に人気を回復してきた大相撲。
そんな根強い人気の理由として、髷を結った半裸の大男がぶつかり合うという非日常性、それらが放つ磁場をあげることができるでしょう。
しかし大相撲とは闘いの場、一歩間違うと殺伐としかねない空間なのです。
にもかかわらず大勢の人たちが好むのは、空間に秩序と格式が保たれているから。そんな場をつかさどっている「行司」がいるからではないか? と、私、アントニオ犬助は感じるのです。
独特の装束、よく通る声、美しい所作。行司だけに注目して相撲を観るのも面白いもの。
取り組みが進むにつれ、番付が上がるにつれ、段々と豪華になっていく行事の装束。最初は素足だったのに、白足袋になり、草履になり、横綱の取組になるころには短刀まで差しています。
最高位・立行司への遠い道のり
そんな短刀を差せるのは「立行司」と呼ばれる別格の方々だけ。代々「木村庄之助」と「式守伊之助」を名乗る2人体制をとっているのですが、40代・式守伊之助のセクハラ問題などにより現在は不在。年末には11代・式守勘太夫が昇進し、41代・式守伊之助を襲名する予定です。
そんな立行司が裁く相撲は木村庄之助が結びの一番、式守伊之助は結び前の二番、合わせて三番のみという驚き。この労働時間の短さ、何て楽な仕事なんだろう思ったとのですが、そこは厳しい相撲の世界。やっぱり、立行司に出世するまでが大変だったのです。
まず行司になるためには、どこかの相撲部屋に行事見習いとして入門する必要があります。
資格としては義務教育を終了していることと、満19歳未満の男子であること、そして相撲協会から適格と認められる必要がありますが、それですぐに行事として土俵に立てるか? というと、そうはいきません。
3年間は見習いとしての養成期間、所属する部屋の事務を主に担当。
後援者への番付の発送、冠婚葬祭の宛名書き……事務仕事が苦手な人は、土俵に立つ前にギブアップとなるでしょう。
相撲文字、アナウンス、宿割りなどなど、行司の仕事は多い
土俵に立つようになっても、行事の仕事は多岐に渡ります。
例えば「番付」、相撲文字(根岸流)と呼ばれる独特の書体で書かれていますが、あれを書くのも行事の仕事。
現在、番付に掲載されている力士は約600名余り。これだけの人数を、場所ごとにビッシリと書き込んでいくのですから重労働、特に相撲文字に秀でた行司の一人が担当するといいますが、おおむね10日間もかかるといいます。もちろん修正ペンなどという洒落たものは使ってはいけません。
他には場内アナウンス、「ただ今の決まり手は……」というのも行司の仕事。明日の取組紹介や、力士の土俵入りの誘導、勝負結果の記録、地方巡業の列車や宿舎の手配などなど、まあ仕事の多いこと。
宿舎で誰がどの部屋に泊まるか? という宿割も相撲の場合は行事が相撲文字で書かなければいけないとか。エクセルで適当なフォントを使って、というわけにはいかないのですね。
立行司となると、収入は充分といえますが
そして、序の口格、序二段格、三段目格、幕下格、十両格、幕内格、三段目格と力士たちと同じような段階を踏んで順調に出世していくと、遂に立行司になれるというのですが、こうなると待遇は素晴らしいもの。月給は40〜50万円、衣装代も支給されますし、タニマチ(後援者)からお小遣いももらえるでしょうから、収入は充分といえるもの。
十両格以上にまでなれば、巡業では個室に宿泊できますし付き人も付きますから、ここまで出世すれば行司として成功したといえるでしょう。
しかし厳しいのは入門したてのころ。序の口格ならば月給は2万円程度、これを乗り越えなければなりません。
でもいいなあ、行司……あのたたずまい。大相撲のエッセンスとも呼べる彼らに、私、アントニオ犬助は力士以上の魅力を感じたりするもの。何といっても土俵をつかさどっているのは、彼らなのですから。