相撲の一門って結局は何の集まりなのか?
- 2018/10/09
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20日以外は地方巡業で稼いでいたのです
頼もしい大柄な体格、勝負に生きるストイックさ……お相撲さんってステキ!!
好きな人にとってはたまらないんでしょうね、「相撲女子」と呼ばれる熱心な女性ファンが増えているといいます。しかし、お相撲さんが女子からキャーキャーいわれる様になったのは、別に今に始まったことではありません。
例えば、古くは江戸時代。街で人気の職業をまとめて江戸の「三男(さんおとこ)」と呼んだものですが、この三男とは与力とお相撲さん、火消しの頭(かしら)を指してのこと。相撲さんは江戸時代でいうとことのアスリート、そりゃ人気が出ますよね。
また、当時の川柳にも「一年を 廿日でくらす いゝ男」というのがあります。ここでの「いゝ男」とはお相撲さんのこと。1年で20日間の土俵を務めるだけで生活していける、浮世離れした様もカッコイイね、なんてうたわれているのですが、ここでふと疑問が浮かびました。
いくらなんでも、年20日って労働時間が短すぎる気がしませんか?
現代の本場所は年6回、各15日ですから、お相撲さんは90日間は土俵に上っているのです。一方で江戸から明治期にかけて本場所は2回。10日ずつの20日間しか開催されていなかったというのです。これで、当時のお相撲さんは食べていくことができたのか?
当然ですが当時の力士たちが20日間の土俵だけで生活できていたわけではありません。食べていくために本場所がない期間は地方巡業に出かけていたという。
この地方巡業の騒動を描いた落語に「花筏(はないかだ)」というのがあります。
部屋単独での地方巡業は無理があった
そんな地方巡業に出かけるときには、一つ屋根の下、寝食を共に相撲に励む「相撲部屋」単位でおこなっていました。しかし、部屋1つだけでは所属する力士も限られていますから取組み数もこなせませんし、よその部屋の人気力士がいるならば巡業に参加してくれた方が客入りも違います。
そこで他の部屋の協力をあおぐことになるのですが、合同で巡業していた部屋のグループが「一門」の起こり。貴乃花親方の騒動でも耳にした、一門はここから始まっています。
そんな一門はしょっちゅう顔を合わせることになりますから、本場所になったからといって真剣勝負などできるはずがない。
ということで、1964年までは同じ一門同士では対決はおこなわれていなかったもの。現在では一門同士の対決は珍しくはなくなったものの「連合稽古」をおこなったりと、一門の結びつきは、依然として強いものがあります。
利害関係を一つにする部屋同士の集まりである
加えて現代ならではの事情が、一門の結びつきをより強くしています。
それは日本相撲協会の理事選挙。各親方が投票することで理事が選ばれるのですが、その集票装置として大いに機能しているのが一門。一門がこぞって理事に推す、理事は一門に役職を割り振るなど便宜を図る。国政でいう派閥のように機能しているのが、相撲の世界の一門なのです。
また、協会からは各部屋の運営のために助成金が降りる仕組みになっているのですが、これはいったん一門を通して各部屋に割り振られる。そりゃあ、一門が結束しますよね。
つまり一門とは、利害関係を一つにする部屋同士の集まり。
まあ江戸時代の地方巡業という一門の起こりも、利害関係からスタートしていますから、当然の成り行きではあるのですが。
一門から外れることで、協会からも外れた貴乃花親方
なぜ今回、私、アントニオ犬助がこれだけ相撲の一門について語っているか? というと、貴乃花親方が協会から引退せざるを得なくなった決め手に一門の存在があったから。
今年7月に、日本相撲協会によって定められた新ルール「親方は、5つある一門のいずれかに所属しなければいけない」という「一門所属義務化」があったからです。
そんなルールが定められた一方で、貴乃花親方は一門の所属していなかった。
協会と対立姿勢を見せていた貴乃花親方を受け入れようとする一門もなかった。
だから引退せざるを得なくなったということです。
貴乃花親方を狙い撃ちするために定められたのではないか? と噂される新ルールではあるのですが、「一門」は相撲と切っても切れぬ存在であることは、貴乃花親方も当然知っていたはず。今年の6月に自身が設立した貴乃花一門から離脱、所属する一門もなしに活動を続けていた段階で、彼は協会から離脱することを決意していたのかもしれません。
日本相撲協会と貴乃花親方は互いに相容れない関係。それではいっそのこと、貴乃花親方が新しい相撲協会を立ち上げてしまうというのはどうでしょう。名称は「新日本相撲協会」、明治の初期までがそうだったように相撲の団体が一つでなければならない必要もないはずなのですから。