元プロ野球選手・島野修氏の生き様を考える
- 2018/04/05
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巨人が指名したのは、星野ではなく……
1月4日の突然の訃報から、しばらくたった3月28日。
中日、阪神、楽天で監督を努めた星野仙一氏の「お別れの会」が、おこなわれました。
阪神ファンの犬助にとって星野氏は、18年ぶりのリーグ優勝という夢を叶えてくれた人。監督に就任するとすぐに、FAしていた金本知憲・現監督を阪神に加入させるなど、数々のチーム改革をおこない、現在の阪神を築いた人。思い入れもありますから、訃報には、少なからずショックをおぼえたのです。
そんな星野氏の二つ名は「燃える男」。
闘志を前面に出して対戦相手に向かっていくスタイルに、ファンは心をつかまれたもの。特に打倒・巨人にかける思いは凄まじく、現役時代には「巨人キラー」と呼ばれ、その姿勢は監督になってからも変わりませんでした。
なぜ、そんなに巨人を目の敵にしたのか?
それは1968年のドラフトまでさかのぼります。巨人から内定を受けていた星野氏は指名されるものとばかり思い、ドラフト当日を迎えました。しかし、巨人が指名したのは星野氏ではなく、高卒右腕・島野修氏。
「星と島を書き間違えたのではないか?」
裏切られた!! そんな思いを胸に星野氏は中日に入団。以来、打倒巨人に情熱を燃やし続けることになるのです。
島野修氏とは、誰なのか?
そんな経緯で巨人にドラフト1位で入団した島野修氏。
星野氏を差し置いて指名を受けるくらいですから、さぞかし活躍したであろうと思い調べてみたところ、実はそうではありません。
巨人に在籍したのはたった4年、1勝しかあげられずに、1976年に阪急ブレーブスへと移籍。その後は一軍で登板することなく、1978年に現役を引退しています。
その後、打撃投手を務めたり、スナックを開業したり……まあ、よくあるプロ野球選手としての「余生」を過ごしていた島野氏なのですが、転機が訪れたのが1981年。
阪急の球団マスコット「ブレービー」の着ぐるみの中の人にならないか? という話が舞い込んだのです。
この話を聞いた島野氏の心情はどんなものだったでしょうか?
腐ってもドラ1、それも巨人のドラ1です。それが野球と関わりのある仕事とはいえ、着ぐるみの中の人。プライドが許さなかったであろうことは、想像できるのです。
当然、正式に話を断るべく球団事務所に足を運んだのですが、その場で説得を受けて承諾。ブレービーとして生きる決心を固めました。
スーツアクターとして、1175試合・フル試合出場!!
着ぐるみの中の人。
犬助もその昔、体験したことがあるのですが、あれは見た目以上にハードです。
まず、着ぐるみらしい体型にするために肉じゅばんを着る、これが実に暑い。そして巨大な頭をかぶる、重いわ、視野は狭いわ、空気はまともに吸えないわ。
普通に歩くだけでも滝のように汗をかき体力を消耗しますし、中は非常に汗臭い。
二度とやりたいとは思わない仕事の一つが、着ぐるみです。
それを島野氏は1981年から1998年で引退するまで18年間、球団の運営会社がオリックスとなり、キャラクターも「ネッピー」に代わることがあっても中に入り続け、1175試合に渡って1試合も欠場することなく演じきったというのです。
当初は元・ドラ1がスーツアクターを務めているとのことで心ないヤジが飛んだとか、新聞などでもネガテイブな報道をされたとかで、辞めてしまうことも考えた島野氏。
しかし球場に足を運ぶ子どもたちが喜んでいる姿を見たい一心で、時には肋骨を骨折しながらも演じ続けたといいます。
阪神・トラッキー、中日・ドアラ、ヤクルト・つば九郎……現在、球団のキャラクターは大勢おり、試合を盛り上げるために欠かせない存在となっていますが、その礎には島野氏演じるブレービー、そしてネッピーがいるといっても過言ではないでしょう。
星野氏のような輝ける人生ではないにしても
そんな島野氏が亡くなったのは2010年の5月。
星野氏のように、大きく報道されることはありませんでしたし、プロ野球ファンを自認する犬助も全く知らないでいたのです。しかし今回、星野氏を調べていた副産物として、島野氏の人生を知ることができ、少なからず感動を覚えました。
裏方として活躍する、元・プロ野球選手。
でも考えてみれば、そんな存在は島野氏だけではありません。
打撃投手やブルペン捕手、球団の広報やスカウトとして、数々の元・プロが活躍をしているもの。そして、彼らがいるから現在のプロ野球が成り立っているのです。彼らのほとんどが夢破れて、第二の人生を裏方として送ることを決心した人たち、その世界で努力を続けている人たちなのです。
星野氏のように輝かしい実績を積み上げてきた人生は、いうまでもなく素晴らしいものです。しかし島野氏だけでなく、裏方としてプロ野球を支え続ける人々の何と素晴らしいことか。これを読んでいるオヤジたちの中にも、後者の方に共感をおぼえる人も多いのではないでしょうか?
いよいよプロ野球も開幕!! 決戦の火蓋が切られました。裏方さんたちの存在に思いを馳せつつ、日々のドラマを楽しみにしたいものです。