距離を間違えて止まっちゃった若手競馬騎手をあんまり責めないでくれ
- 2018/10/18
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前代未聞の超大ポカやっちゃった
さる10月13日土曜日に開催されたJRA新潟競馬の第6レース。
2番人気のペイシャエリートに騎乗していた若手の山田敬士騎手が「競争距離を錯誤して」勝手にレースを止めてしまい、結局最下位になってしまったばかりか、レース後に「こっちがいいというまでオマエは反省してろ!」とJRAからキツいお灸を据えられる事件が起きました。
競馬を知らない方のために手っ取り早く説明すると、2500Mあるレースを半分も行かない1000M地点で終了させて、そのあとは軽く流しちゃったンですわ。
悪気はないんです、もちろん。勘違いなんだから。
でもお金がかかる公営ギャンブルにおいては致命的なミス(2番人気だったし)であり、彼のキャリアの今後にも多大な影響が出そうで、いち競馬ファンとしてちょっと心配な事態なんです。
押しています!?って実況もビックリしちゃってる
この事件の一部始終はJRAのHPから誰でも映像で見られるので、気になる方はご覧頂くとして、まずなぜこんな事態が起きたんだろうと想像するに、
▼その1 そもそもダートの2500という条件が超レア
ないことはないんだけど、JRAには長距離のレースとくに2400Mを超えるダートのレースはうんと数が限られているんです。
単に競馬場の形として長距離コースが設定できないという場所もあれば、距離の設定はあるんだけど、週に1回やるほど馬が集まらないという事情もあります。
芝でさえ最近は長距離レースが廃れちゃってるので、ダートの長距離なんて走れるメンバーは推して知るべし。
相当なコアなファンでさえ「どの競馬場なら長距離ダートのレースができるか」スラスラ言える人はいません。
もしかしたらキャリアの浅い若手騎手でもその点は同じかな、なんて思うんです。
▼その2 新潟コースはダートの2500Mと1000Mのスタートラインが近い
彼が間違ったと思われるダート1000Mのスタート地点と2500Mのそれとは目と鼻の先、距離にして100Mも離れていません。
しかも何の印もない砂地の上のこと。新潟に慣れた騎手なら少しは「ここらへんから始まるレースはダートの1000」と体に染みこんだ感覚があって当然なんです。
▼その3 4コーナーの馬の手応えに騙された?
彼が騎乗していたペイシャエリートという馬は、このレースが距離2500M初経験で、それまでは1800Mばかり走っていました。
ですから1度目の4コーナーに差し掛かったとき、馬が「お、もう少しでゴールかな?」と反応するときがあります(これはホントによくある話)。
馬は4コーナーの意味は知っていても、その日走る総距離は知りませんから。
普段ならその手応えを感じた騎手は「こらこら、もう1周あるよ。まだ行くところじゃないぞ」と手綱を絞るんです。
しかしなにしろ事件当日は騎手本人が距離2500だと思っていないし、また運が悪いことに彼は先頭を走っていたので、目の前に誰もいない。
そこで馬の行く気に任せて「よし、ホラ行け!」とばかり、体がゴーサインを出してしまったんでしょうな。
ラジオNIKKEIの実況アナも、先頭の山田クンだけがご丁寧にムチまで入れて追ってるもんだから「!!!(え?大丈夫か?)…押しています!」って珍実況したくらいですから…。
哀しいかなもうこの時点では、人馬ともに報われることのないスイッチが入っちゃってるンですけどね…。
本当に言い逃れはできないけれど
過去にホンモノの大舞台で「ゴール板の位置を間違えた珍事件」といえば、何といっても93年のジャパンカップでしょう。
大本命コタシャーンに騎乗していた米のK・デザーモ騎手が、府中の直線残り100Mの標識をゴール板と間違え、馬を追うのを止めてしまい、勝ってもおかしくなかった馬を2着に沈めてしまったという事件。
これももちろん世紀の大チョンボ(オジサンはそのとき現場に)なんですが、デザーモだって米国の騎手ですから、アウェーの府中にたくさん立っている標識を間違える素地はありましたし、米国のローカル競馬場なら確かにゴール板でさえもっと簡素な棒だけのところもあるんでね。
今回の山田クンに関しては間違えた距離が長すぎますし、途中からは馬も追っていないということで、一歩間違えれば八百長案件ですから長期のリタイアは免れないところ。
しかし当時超一流だったデザーモと違い、こっちは苦労して集めた馬の中でちょっとずつ目が出てきた若手騎手なのでね。
反省期間を経て再出発のあかつきには、どうか温かい目で見守ってほしいと思うんです。
本人は一瞬ホントに馬上でちびるんじゃないかと思うくらい、イヤ〜な冷や汗をかいたはずですから…。