新幹線開通半世紀・高速適応検査がなくなるって本当?
- 2019/01/01
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新幹線が『夢の超特急』と呼ばれ開通して早、半世紀。
運転士になる為には、時速200km/hで走る車両を手動で操縦出来るかどうかを見極める『高速適応検査』を受ける必要がある。
だが、新幹線に限らず在来線、大手私鉄各社、地下鉄運転のコンピューター制御化に伴い、従来の検査の有効性を疑問視する声が社内で上がっていた。
その為、在来線の運転士の免許があれば、今後は高速適応検査が免除される予定となる新幹線の運転士。安全性に問題はないのだろうか。
高速適応検査って?
高速適応検査は、’64年に前の東京五輪が開催されるのに合わせ、新幹線が開業した2年後、国鉄により導入された。
世界鉄道史上実例がない時速200km/hを超える速度で走る為、運転士に適正があるか図るものだった。
筆者の叔母が国鉄管理職だったので、そのつてで昔聞いたのだが、今現在90近い元国鉄社員は、嫌でも、研修の一環で、運転士免許は取らされたという。
その後、様々な部署に配置になり、デスクワークになるか、運転士として残るか決まったそうだが、当時運転士として残った社員にとって、新幹線運転士募集は、花形だった。
第一期新幹線運転手応募性は全員ベテランの在来線運転手。
中にはヤジ馬根性を出して応募したものも居たので、そうした人間をふるい落す為に、当時の国鉄は試験でありとあらゆる策を練った。
最初の新幹線運転手適応検査には、用意された紙に色鉛筆で家を描くというものもあった。
これは適格に状況を把握できるかを見る検査なのだが、これで落とされた人もいたという。
ヤジ馬で応募するような人は、在来線の運転士適性検査や、養成所面接で落とされるので、現在は居ないと思う。その代わり高速適性検査は、5種類に分かれている。
その中で有名なのが処置判断能力検査だ。
表面に約20個の5mm程の矢印が描かれた円盤が、ゆっくり回転し、円の上に置かれた二本の針を矢印をよけながら通るというもの。
その他にも、50個のランダムなカタカタの中から『ア、メ、フ、リ』の4文字を出来るだけ多く拾い上げる『アメフリ検査』もある。
高速で電車を運転するには、頭をフル回転させマルチタスクでやらなければいけない為、このような試験項目が取り入れられているのだが、何故なくす方針となってしまったのか。
在来線の運転士免許で補う方針か
現在、JR各社の新幹線運転士は、鉄道各社の養成所に入り、筆記や技能試験を通過した後、各社の在来線の運転士の経験を経て、高速適性検査を受ける事が条件となっている。
その一方で、JR在来線、新幹線、大手私鉄、地下鉄に関わらず、運転面でコンピューター制御が進んでいるのが現状だ。
そこで’18年3月、国土交通省は、在来線の運転士であれば、高速適応検査を免除する方針を固めた。
背景にあるのは、高速適応検査の項目数や、合格基準が在来線運転士のそれを超えると思えないという結果に陥ったからだという。
だが高速適応検査に合格し、現場で10年以上働く新幹線運転士は、どう考えているのだろうか。
在来線出身の山陽新幹線運転士・七村賢治さんは、新幹線運転士歴18年のベテランだ。
これだけコンピューター制御が進んでいても、運転は自動ではなく、人の感覚をフル回転させなければなりたたないという。
彼の世代だと、0系新幹線で研修を行い、なおかつ、0系こだまを運転した経験をもつ貴重な運転士だろう。
どの駅までくれば、スピードを上げ、またどの看板が見えれば減速するか、モニターを見ながら常に頭をフル回転させるのが新幹線運転士の仕事だという。
こうした話を聞くと、在来線の運転士の免許があるという理由で、新幹線の高速適応検査を外してもよいのかと思ってしまう。
今まで新幹線の事故で、人的ミスによる事故がなかったのは、高速適応検査があったからではないか。今後なくなれば、人的ミスによる重大な事故が起こりかねない。
今まで人的原因で事故が起きなかったのは、一重にこの適応検査があったのと、現場の運転士のたゆまぬ努力の積み重ねがあったからだと思う。
それを考えると、高速適応検査をなくすといのは、いかがなものかと思う。