今、フランスが徴兵制を復活させる理由とは?
- 2018/07/04
- ライフスタイル・娯楽
- 576view
- 教養/知識
- フランス
- 知識
徴兵制の復活になびくフランス世論
フランス・マクロン大統領が「徴兵制を復活させる」と宣言したのは、今年の始め。
このニュースを耳にして、犬助は大いに驚かされたのです。
徴兵制、何と禍々しい響きでしょう。私、アントニオ犬助は戦争を経験した世代でもないのに、徴兵制という単語を聞いただけで、無条件にアレルギー反応が出てしまうのです。
それだけにフランス国民も反発しているに違いないと思っていたら、実はそうではありません。昨年夏におこなわれた世論調査によると、徴兵制復活への支持は実に59%、おおむね賛成といいますから驚かされるではないですか。
なぜ、これほどまでに徴兵制復活への支持が高いのか。
背景には過去5年間のテロで、250人もが命を落としたという国内治安の悪化があるといいます。「ならば、警察官を増員するなど、他に方法があるのでは?」と普通なら考えるところなのですが、なぜかフランスでは徴兵制の復活となのです。
たった1カ月の兵役で、いったい何ができるのか?
フランスで復活する徴兵制で対象とされるのは18〜21歳の男女、参加を見込んでいるのは毎年約60万人とか。若者が60万人も軍に取られるなんて社会的に大損害じゃないの?と思うのですが軍役に付いている期間がポイント。
その期間は、ほんの1カ月程度という短い期間だといいます。
これならば徴兵制による社会的なダメージは小さいと感じる反面、また新たな疑問が起こります。
「たった1カ月で何ができるようになるの?」
特に最近の兵器は、少人数で運用されるように設計されているということもあり、扱うには高い技能が必要といいます。にもかかわらず、たった1カ月の兵役……これってムダ以外の何ものでもないように、犬助は感じるのです。
徴兵制は国民を連帯させるためなのだ
しかし、全くムダではないと考えるのがフランス人。
なぜなら、徴兵制で狙っているのは、直接、治安を向上させることではないからです。
徴兵制の本当の狙いは、フランス国民の結束が高めることだというのです。
「シャルリー・エブド襲撃事件」、「パリ同時多発テロ事件」。
フランスで起こった数々のテロの犯人の多くは、フランス生まれのイスラム教徒でした。
フランスに馴染めない移民の子どもたちが疎外感をつのらせ、凶行に走ったというのです。
そんな彼らをフランスに馴染ませるのに、大きな役割を果たすとフランス人の多くが考えているのが徴兵制。
約1カ月、軍という特殊な環境下で共同生活をおこなうことで、国民の連帯を育むことができると考えているのです。
「バカバカしい、18〜21歳のいい大人が連帯するために軍隊ごっこかよ!!」
徴兵制に対する動きを笑うことはカンタンでしょう。
しかし、そうでもしなければ、生まれ育った背景が全く違う移民の子どもたちを含めた人々の連帯はならないとフランスは考えている。そこまで追い込まれているのです。
日本でも連帯が必要となる時が必ず来る
「へえ、フランスも大変だねえ」……確かに現在では、他人事です。
しかし、日本も近い将来、フランスと同じような状況に陥りかねないということに気が付かなければなりません。
現在日本には外国人労働者という建前で、数多くの移民が流入しています。そして、ろくな議論もおこなわれないまま、なし崩し的に流入する外国人は増加しているのです。
革命にルーツを持ち、他国からの独立を血を流して勝ち取ってきたフランスのような国ならば、国民を連帯させるために徴兵制を用いることもできるでしょう。
また2002年まで、フランスにおいて兵役は国民の義務でした。
しかし日本は戦後教育のおかげか、国民を連帯させるのに徴兵制というツールを使うことはできません。しかし近い将来、外国人労働者の子どもを含めた国民が、連帯することの必要性を実感する日が来ると思うのです。
じゃあ、どうするのか?
まずは、自身の国を愛するとはどういうことか。このことを現在の日本人が、よく考える必要があるでしょう。
現在ロシアではFIFAワールドカップが開催中。
日本でもサポーターたちがナショナルチームのユニフォームに身を包み、国旗を振り回して盛り上がりを見せています。
自分の国を愛することの意味を考える、良い機会だと思うのですが、いかがでしょうか?