代行業者が事故を起こすと…

2018年4月21日夜、兵庫県姫路市の路上で、依頼先へ向かう運転代行業者の軽自動車と道路を横断中の歩行者が絡む事故が起きました。現場付近は見通しの良い環境とのことで、歩行者を発見すればブレーキをかけるだろうと思われますが、警察によればブレーキ痕はなかったとのことです。

管轄の網干警察署では、軽自動車の運転手を自動車運転処罰法違反で現行犯逮捕し、捜査を行なっているという事件です。

さて、この事件は運転代行業者が依頼先へ向かう途中の事故であり、依頼した人とは何の関係もありません。軽自動車も依頼した人のものではないですから、たいした影響は受けないでしょう。

もっとも、来るはずの代行業者は逮捕されており、いつまでも待ちぼうけになるという意味では、大きく影響を受けることになったでしょう。

こうした場合の責任はどうなるのでしょうか？

代行業者側の故意または過失によって依頼をすっぽかしたわけです。実際のところは、どのような契約関係にあったかで対応は変わることになります。しかし、到着できなかった場合に多額の賠償を可能にするような契約が実在するとも思えません。

結局は、待ちぼうけしただけということにもなりかねないでしょう。

しかし、この事件で考えるべきポイントは別にあります。それは、自分の自動車を運転代行業者に任せた後の事故の場合です。ハンドルを握っているのは運転代行業者ですが、その自動車は自分の所有車だという場合、事故の責任を問われる可能性があるのかないのかが問題となります。

他人が運転していたでは通らない

もし、扉を閉めたガレージ内に駐車して施錠もしていた自動車を盗み出され、犯人が事故を起こしたとすれば、赤の他人の窃盗に伴うものであり、責任を問われる筋の話ではありません。

では、運転代行業者はなんの関係もない赤の他人でしょうか？
残念ながら、自分が依頼して運転を任せた相手ですので、無関係では通りません。その結果、事故を起こした運転代行業者と同列で賠償責任を負う可能性が生じます。被害者から見れば、どちらに賠償を請求しても構わない関係です。

それなら、任意保険を使って払えば済むのではないかと思うところですが、これも残念ながら一般的には使えません。

運転者限定特約などを付けていてもいなくても、業者に運転してもらっている間の事故は保険金支払い事由にあたらないとするのが自動車保険の考え方だと思っておきましょう。念のため、自分が入っている自動車保険の約款を読むなり、問い合わせるなりしてみることをオススメします。

ただし、事故に備えて運転代行業者が加入すべき保険があります。それを使って払えば賠償責任の部分はクリアです。しかし、代行業者がこの保険に入っていないかもしれません。そうなると、多額の賠償金の支払いに追い詰められるリスクも出てきます。

自分が起こしたわけでもないのに多額の負債を抱える。これを回避するには、自己破産しかありません。破産法では、この種の賠償義務は免責の対象となっているからです。ただし、自分が悪意を持って行なった場合や、死傷事件に故意または重大な過失で関わっている場合は免責されません。もっとも、代行業者が事故を起こしたという事案では、このどちらにも該当しないはずです。

それにしても、被害者はまったく無関係に命を奪われ、賠償さえ受けられない可能性があり、自分は破産か莫大な支払いをしなければならない可能性がある。もちろん、自分の自動車も壊れている。こんなリスクを抱えてまで、運転代行業者を利用する必要があるのでしょうか？

保険の加入を確認できればよいかもしれませんが、保証はできません。結局のところ、自動車に乗って飲みに行くという行為をやめればいいという話になります。事情があるからといっていたらキリがないです。

運転代行業者が見れば、営業妨害か！と思うかもしれませんが、ただのオヤジにとって、抱えるリスクが大きすぎます。どうしても使うなら、ちゃんとした業者を選ぶことです。