空母のようで空母でない軍艦とは
- 2017/08/10
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空母とは何ぞや?
中国が空母を保有するに至って、一般オヤジの間でも空母に対する関心が高まっているようです。一部の言論人?などは、海上自衛隊の「駆逐艦」まで空母だといっています。海上自衛隊が持っている全通甲板のヘリコプター搭載護衛艦は、第二次世界大戦当時のイメージでいえば空母に見えないこともありませんね。
では、そもそも現代における空母とは何ぞや?という話です。
英語をカタカナで表記すると空母は「エアクラフト・キャリア」となります。直訳すれば、航空機輸送艦とか航空機運搬艦といったところです。しかし、空母が単なる航空機の運び屋ではないことは論を待ちません。大戦末期には日本海軍の空母が輸送任務にあたったこともありますが、あれは主に機動部隊としての運用が絶望的な背景があったからでした。
さて、空母とは艦載機を作戦機として運用する攻撃兵器です。まず、艦載機を運搬する能力があるのは当然です。艦載機に積載する弾薬や航空燃料、メンテナンス機材、部品も搭載します。そして、パイロットや整備員、管制員など航空作戦を遂行するための要員を乗せて活動させるシステムが欠かせません。格納庫と飛行甲板を結ぶエレベーターも必要ですし、搭載機が発着艦できることはいうまでもないでしょう。
このどれかひとつが欠けても、まともな空母としては機能しなくなるというものです。
要件を備えていても空母ではない軍艦
ところで、これだけの要件を備えていても空母に分類されない軍艦があります。それが、強襲揚陸艦です。ある意味、空母から分派した艦種ともいえる強襲揚陸艦の外観は、昔の空母によく似ています。F14やF/A18などの空母艦載機を載せることはできませんが、多くは垂直離着陸機を搭載して航空作戦を行うことも可能です。また、揚陸艦と名付いているように、上陸作戦用途として上陸用舟艇や陸戦兵力を運搬し戦場に投入します。艦載機は、その任務に資するためのものといえます。
空母のような強襲揚陸艦が存在する理由をネガティブな側面から考えるとき、陸軍と海軍の隔たりがあります。上陸作戦を行う陸軍としては、上空支援は重大関心事です。しかし、空母を持たない陸軍が自前で海上から飛行機を飛ばすことはできません。そこで海軍が機動部隊を派遣して協同作戦となるのですが、指揮命令系統が異なる軍種でうまくいかないこともあります。
日本陸軍が空母に似た船を作ったのが、海軍への不振からだったかどうかはわかりませんが、初めから上陸作戦用の空母があれば、所属が海軍であっても話は早いです。現代の強襲揚陸艦がそれにあたるといえます。ただ、名称こそ空母ではないものの、垂直離着陸戦闘機などを多数運用できる能力は、ちょっとした国なら文句なく空母と呼べるものです。アメリカの原子力空母と区別するなら、軽空母とでも呼ぶべきレベルでしょうか。上陸作戦用に作られているため、空母以外の部分が多いため現実的な名称になっているといえます。