午前10時の映画祭、10年目にして一旦終了?マニア熱と裏腹に採算が合わないのが原因?
- 2019/02/16
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東宝を中心に、一部の松竹、東映系列の映画館で朝10時に往年の映画を上映する企画『午前10時の映画祭』が、’19年4月をもって一旦終了となる。
往年の映画を週替わりで1000円(学生、子供は500円)で観れる人気企画だが、採算が取れないのが原因だ。
午前10時の映画祭って?
午前10時の映画祭は、川喜多記念映画文化財団、映画演劇文化協会が主催となり、映画ファンに新作だけでなく往年の名作も観て貰い映画ファンを増やす目的で企画された。
’10年2月に全国25館の映画館でスタートしたこの企画、CGを駆使したアクション映画や、映画を観るのに、MX4DやIMAXなんて要らないという往年の映画ファンが飛びついた。
過去の傑作を低料金で週替わりで鑑賞できるとあり、新たな映画ファンを開拓するという主催側の思惑と異なり、映画ファンが主な顧客となり、現在では全国58館で上映されるまでになった。
’19年の上映で10回目となる、この企画。
採算が合わない理由はどこにあるのだろうか。
デジタル移行、週替わりの上映では採算がとれなくなった事実
実は『午前10時の映画祭』は、第三回を開催した後、一度終了の憂き目に遭っている。
シネコンの普及により映画上映方法がフィルムからデジタルに変わり、フィルム映写機を撤去する映画館が続出。
フィルムをそのまま上映する事で成り立っていたこの企画が成り立たなくなったのだ。
’13年に、デジタルに対応し『新・午前十時の映画祭』となってからは、上映劇場が大幅に増えた。
だが通常の新作映画が上映すれば元が取れる方式なのに対し、この企画は主催者の負担が増えるばかりだった事は言うまでもない。
デジタル映写機器を提供する会社に支払うVPF(ヴァーチャル・プリント・フィー)や宣伝費、作品の版権所得、宣伝費など、ブロックバスター作品を上映する以上の負担が映画館にのしかかってきた。
観に行く映画マニアは、毎週観に行けば違う往年の名作をやっているので、自分好みでない新作にお金を出すよりはずっとお得な企画だ。
大半が東宝、松竹、東映系列の映画館で上映しているので、鑑賞後はそれぞれのシネコンカードのポイントも貯まる様になっている。
だが映画マニアの期待に応えればこたえる程、運営側の首を絞める結果になっていたのは事実だろう。
オフィシャルサイトで運営を嘆く人の声は様々だが、値上げしてでも観に行きたいという人も居れば、今後もし復活上映する事があれば、この作品を上映してほしいという声、レイトショー上映にしてほしいという声などがあった。
この上映会に頻繁に足を運び、オフィシャルサイトに書き込みまでして、料金が値上げになってでも観に行きたいという人は、普段はミニシアター系の映画館に観に行く映画マニアかもしれない。
どちらにせよ、これ以上の継続は一部の人間が望んだとしても難しくなったのは事実なのだ。
好きな企画だが、値上げしてでも観に行くのか
私自身も、この企画は始まった時から好きで、お目当ての映画があると観に行ったが、なんせ上映期間が1週間で朝10時の一度だけ。
一度逃すと後がないというので、3本観に行きたい候補があっても仕事の都合で1本観れるか観れないかという事は日常茶飯事だった。
だがミニシアター系映画の様に、公開第一週を逃すと第二週目からレイトショー一本のみに代わるよりはマシかと思う様になり、無理をして観に行く程でもなくなった。
『午前10時~』はシネコン主催のものは一旦幕をとじるが、今回の事で思ったのが、この企画が本当に存続して欲しいと思っている人は映画にお金を惜しまない映画マニアだ。
彼、彼女らは、1本1500円と、往年の旧作に対し、劇場前売り券価格は叩くべきだと考えている。
映画にそれほど興味がなく、MX4DやIMAXなどアドベンチャーに期待する人は、
往年の旧作には1000円でさえも勿体ないと思うだろう。
この温度差もまたシネコンでこの企画が継続不可能になった理由の一つではないかと私は考えている。
私自身、MX4Dなどのアドベンチャー感覚の映画よりも、普通に字幕のついた2D上映の映画が好きだ。
だからこそ午前10時の映画祭は、懐かしい映画らしい映画をお得な価格で観れるという事で、重宝していた。
だが1本1500円まで映画のフィーを復活させようという考えをマニアの人から持ち出されると、少々疑問なのである。
それではシネコンで上映することは不可能だろうし、もしもやるのであれば岩波ホールやテアトル梅田など映画好きのポリシーを理解してくれる所でなければ成功しないのではと危惧してしまうのだ。
だとすれば『映画って何だろう?』と思っている新たなファンをこの企画で獲得できるのかという疑問にぶちあたる。
午前10時の映画祭では、ファンからの最後のリクエストを受け付け、9年間に上映されたものと、本年度上映する作品全223作品をリスト化するという。