「車好き」からしたジャガーのイメージとは
- 2018/07/04
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イギリスの高級車とは何なのか?
イギリスは純然たる階級社会です、という話は、何度か「YAZIUP!」でもお話している通り。「アッパー」「ミドル」「ワーキング」という3つの階級があり、昔ほどではないにしろ、ライフスタイルもキッパリと分かれているものなのです。
そしてそれぞれの階級は、ほぼ固定されているもの。ワーキングクラスはどれだけ裕福になったとしても、アッパークラスには入れないものですし、それをおかしいとも思わない。それだけ、キッパリと分かれているのがイギリスの階級社会なのです。
ですから、乗る車も階級によって分かれているもの。
アッパークラスならロールス・ロイスやベントレーの後部座席に鎮座するもの。自らハンドルを握るならアストン・マーチン、広大な領地を視察するのにランドローバーといった具合。イギリスの高級車とは、本来これらを指すのです。
外観と内装は一流の中途半端な車
ならば、ミドルクラスは何の車に乗っているのか?「ジャガー」が頭に浮かびます。
もちろん高価なジャガーですから、普通のミドルクラスでは手が出ない。乗れるのは医師や弁護士など収入が良い連中、いわゆるアッパー・ミドルの連中です。
ですからジャガーとはイギリスにおいて、純然たる意味では高級車ではありません。
高くていい車だけれど、アストン・マーチンなどと比較するとブランドのランクは数段落ちるという扱い。アッパークラスの人たちなら、使用人といえどジャガーには乗せないもの……まあ、何台かは英国王室にも納められているみたいですが。
ですからイギリスにおいて、中途半端なイメージがあるのがジャガー。
イギリス=紳士の国=良いものという、イギリスに対する誤ったイメージを未だに抱き続けている人が、ありがたがるのがジャガー。
他にも車のブランドは数多いのに、なぜジャガーを選ぶのか?……まあ、外観と内装は確かにいいからねえ。これが、車好きが1980年代まで持っていたジャガーのイメージだったのです。
そんなジャガーは90年代から2000年代までフォードグループの傘下にありました。
ジャガー伝統の流麗なスタイリングや質感の高い内装は維持されていましたが、中身は実はフォード車という残念な状態になりました。これで、ジャガーに対する印象は、ますます複雑なものになる。
だって中途半端ブランドイメージを持つ、高価なアメリカ車をありがたがる人などいないからです。
狙いは従来のイメージから決別か?
そんなジャガーのブランドをフォードグループが手放したのは、2000年代後半。次にジャガーはインドのタタ・モーターズ傘下となりました。アメリカの次はインドか……ジャガーのブランドイメージも地に落ちたもんだ。
犬助はそんな風に思ったものです。
しかし、その後のジャガーの復活ぶりには目を見張るものがあります。
例えば「Fタイプ・V8S」は、V8・5,000cc、スーパーチャージャー付きという怪物のようなエンジンを搭載したもの。今までのジャガーでは、あまり手掛けられることがなかった純然たるスーパーカーです。そして、SUV「Fペース」シリーズをリリースしたのが2016年、これもジャガー初のこと。
この様にジャガーは次々と新しいチャレンジを開始して、車好きを驚かせました。
そして、それ以上に車好きを驚かせたのがボディデザイン。タタ傘下になって以来、誰が見てもそれとわかる、ジャガーらしい流麗なボディラインが消えたのです。
変わって登場したのが攻撃的なジャガー「らしくない」デザイン。
2000年代からデザイン・ディレクターとして就任しているイアン・カラムの影響がモロに出たイメージです。
グローバルブランドへと脱皮するジャガー
もちろん現在のジャガーも、伝統のフラッグシップセダン「XJ」を手掛けてはいます。
しかし、Dセグメントの「XE」やEセグメントの「XF」も含めて、それらのデザインは実に、従来のジャガーらしくないのです。
つまり、現在のジャガーは過去のイメージ……イギリスの階級社会とか、アッパーミドルクラスとか……これらから決別しようとしているのではないでしょうか?
かつてのジャガー伝統のブランドイメージを脱ぎ捨て、新しいブランドイメージを確立する。現在のジャガーは過渡期にあるように感じられます。
イギリスのブランドから、グローバルブランドへ。
過去のジャガー・ファンの多くは裏切られた気がするかもしれませんが、同時にそれより遥かに多くのファンをつかもうとしているかに思われるのです。