アボカドの種から生分解プラスチック?ネックはお値段

  • 2019/02/27
  • ビジネス
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  • 沖倉 毅
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マイクロプラスティックによる海洋汚染が社会問題となる中、メキシコのベンチャー企業が、アボカドの種を原料に生分解プラスティック製品を作る事に成功した。

同国はアボカドの生産地として知られ、世界シェアの半分以上を占めている。
今までゴミとして捨てられていたアボカドの種をリユースした、試みの裏にあったのは何だったのだろうか。

 

化学専攻の学生が立ち上げた会社

化学専攻の学生が立ち上げた会社
アボカドの種から生分解プラスティックを作る事に成功したのは、メキシコに本社を置く『バイオフェーズ』という会社だ。
会社の従業員は現在20人程の中小企業で、社長は大学時代、化学を専攻していたスコット・ミュンジアという若い青年だ。

スコットは大学時代から海洋プラスティック汚染問題に取り組み、自分で生分解プラスティックを作ろうとしていた。
その原材料がアボカドの種に行きつくまで、試行錯誤と長い年月を費やす事になる。

マンゴーなど南米特有のフルーツの種子を片っ端から実験で試したが、どうしても生分解プラスティックを作れない。
そんなある日、スコットは論文でトウモロコシの分子から生分解プラスティックを作る事が出来るという事を知り、トウモロコシの分子構造に似ているのはアボカドの種である事を突き止めた。

スコットは一年半かけて、アボカドの種から、分子化合物とバイオポリマーを取り出す事に成功し、’13年に技術の特許を所得。
その年に『バイオフェーズ』社を立ち上げ、現在ではアボカドの種から取れる生分解プラスティックを原料に、ストロー、フォーク、スプーンを作っている。

今までアボカドオイルとして利用するほかは、大半はゴミとして捨てられていたアボカドの種が、よみがえったのだから会社としてはクリーンヒットを生み出した事になる。

現在は国内だけでなく、コスタリカや米国にも取引先がある。
だが、この状況をスコットは楽観視していない、何故なのか。

 

ネックは価格の高さ

バイオフェーズ社の製品のネックとなるのは価格だ。
ストローの価格を見ると、2000本入りの袋入りストローの価格は、639ドル、一本あたりの平均単価は35円だ。スプーンは1本67円で、日本の業務用プラスティックストローの価格が1000本平均670円とすると、1本0.7円になる。

価格が何倍になるかは言うまでもない。
便利で安価で使い捨てという事から広まったプラスティック。
『使う人の概念を変える事が一番難しい』とスコットは言う。

企業も海洋プラスティックに対して何のアプローチもしないわけではない。
具体的に企業がやっている事とは、どんな事なのか。

 

大企業が参入すれば生分解プラスティックの価格が下がる希望も

大企業の取り組みとしては、米飲料大手のコカ・コーラや、衣料大手のH&M、仏化粧品のロレアルなど約250社が’18年10月に、’25年までにプラスティックゴミをなくすという共同宣言に署名している。

別の記事にも書いたが、国を挙げて海洋プラスティック汚染に罰金刑を科して取り組んでいる国もある。
ケニアがその典型的な例で、ポリ袋を持っていただけで莫大な金額の罰金刑となるのだ。

飲食業では、マクドナルドやスターバックスなど、世界中にフランチャイズ店を展開する企業が、相次いで、プラスティックストローの全廃を掲げたのをきっかけに、国内でも『すかいらーくホールディングス』がこれにならう方針に切り替えた。

私は生分解プラスティック製品を使うか否かという事も、エコバックを持ち歩くか否かという事も、国民の意思にかかっていると思う。

日本はコンビニやスーパーに行けば、店員さんが『袋いりますか~』『お箸おつけしましょうか』と、こちらが何も言わなくてもサービスしてくれるサービス過剰な国だ。
大手スーパーがレジ袋の配布を禁止し、自治体がポリ袋でのゴミ出しを禁止した所で、なかなかポリ袋全廃にはならないだろう。

生分解プラスティックの製品が日本で広まらない原因の背景には、サービス過剰という事にもあるのでは、と思う。

この記事の作者

沖倉 毅
沖倉 毅
ビジネスと国際関連をメインに執筆しています沖倉です。 転職経験と語学力を生かし、語学教師とフリーライターをしています。 趣味は定期的に記録会に出る水泳、3000本以上お蔵入り字幕なしも観た映画、ガラクタも集める時計、万年筆、車、ガーデニング、筋トレです。 どうすれば永遠の男前になれるかをテーマに、取材は匿名を条件に記事執筆に勤しみます。
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