帰ってきた男・マハティール・93歳にして世界から必要とされる人脈力とは
- 2018/10/06
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安倍首相は、昨年末、アジア太平洋経済協力会議(APEC)時に、在位年数の長さが吉田茂氏を抜いて歴代二位になる事で、各国の首脳から、一目も二目も三目も置かれた、対応が違うとご満悦だった。
だがその後の総裁選では、石破氏に勝ったものの蓋を開けると、陣営のパラハラが表面化。国民表と言われる議員票の45%を石破氏に持っていかれるという結果に終わった事は、安倍政権のほころびが出たと言わざるを得ない。
長期政権で必ず出るといわれる綻びを繕いつつ、改善すべき所は改善するという面では、安倍政権はまだまだだという証拠が他国の例で明らかになった。今年5月、93歳で再選されたマレーシアのマハティール首相だ。
在位22年に及ぶ前回の政権とルック・イーストの政治手腕は、日本と変わらない。だがそこから先は、日本と大きく違う。
マハティール氏が再び首相に就く事が出来た理由とは何だろうか。
発足100日で10の公約を守るといった男
マハティール氏率いる野党連合の希望連盟(PH)が、現職のナジブ首相率いるマレー国民組織(UMNO)を破ったのはGW開けの総選挙。
マハティール氏はもし当選すれば3度目となり、野党PHは政権を取る事がないだろうという前提に、過大な選挙公約をあげて立候補した所、当選。
過大な選挙公約の内訳は『政権発足から100日で、10の公約を実現する』というもの。
まさか当選すると思わなかったので『できないかもしれません』というネガティブキャンペーンを行ったにも関わらず、国民の期待はマハティール氏に注がれた。
今年8月18日、発足から100日を迎えたマハティール政権は、実際どうだったのだろうか。
公約内容を殆ど守り、支持率7割強を維持している。
彼の新政権は『マハティール2.0』と言われているが、彼が100日で成し遂げた実績はどの様なものだろうか。
国内の汚職や不透明な金の流れを一掃
マハティールの支持率の高い理由は、国内の不透明な金の流れを一掃した事にある。
ナジブ政権時に作られたとみられる政治系ファンドIMDB(ワン・マレーシア・デベロップメント)に対する積極的な汚職捜査と監視、撲滅が国民の信頼を得る一番の要因となった。
主犯とされたナジブ首相や、ナジブ首相の息のなかったIMDB関係者の逮捕、400に及ぶ
関連銀行口座の凍結と徹底した捜査は、金融機関の膿を出しつくすと言っても過言ではない。
その他にもシンガポール資本と中華系資本が投資した総事業費500億ドルのインフラプロジェクトの見直しは、外国人投資家を安心させるものとなった。
マレーシア国内の外国資本による巨額インフラプロジェクトの多くは、一部の外国の金融機関にとってメリットになるものが多数で、マレーシア国内の利益が優先されるものが殆どないという事が長年、外国人投資家から疑問視されていた。
この様な強気な外交は、各国に対し政治面でも勢力を強めている中国からみて挑戦的と思わわれるだろう。
だが、マハティールと、他の先進国首脳には、決定的な違いがある、それは何か。
NOと言える外交こそ本物の外交
マハティール首相が、米国、日本の歴代首相と違うのは、過去の首相在任中に何度も訪中し、現地顔なじみの政治家を訪ね、新たに台頭してきた政治家にも顔をきちんと売っている所だ。
今年、8月20日にも、中国の習近平国家主席お飛び、李克強首相と会談したマハティールは、マレー半島横断鉄道計画など、中国一帯一路構想の主要事業を中止する事に中国側の了解を取り付けた。
現在のシルクロードを作ろうとする中国主導のインフラ対策にNOを堂々と突きつけられるのは、おそらくマハティール首相一人だろう。
トランプ大統領は、暴言を吐き捨てるだけで話にならないだろうし、安部総理は遠回りにのらりくらりしているように中国の首脳にとられるだけだ。
そんな日本の歴代総理たちにもマハティール首相は、在任20年以上の経験からこう語っている。そこまで世界中にペコペコして得た外交で褒められて何になるのかと。
マレーシアは1963年に連邦国家として独立したが、長々と州の独立性はないがしろにされていた。首相は、公約にのっとり、州の独立性を見直すべく、閣僚委員会を設立。
多民族国家を目指し財務大臣に初の中華系マレーシア人を任命し、今まで以上に中国系、東マレー系の人物を閣僚人事に任命した。
前の政権では、ルックイーストと言いながら『戦後の日本を見習え』と言わんがばかりの日本びいきが目立ち、それが間接要因となり長期政権崩壊につながったが、今回は前回の政権崩壊を反省し、多民族国家を目指している。
93歳という年齢を考えると、前回の様に政権は長く続かないだろう。
それでも正当な後継者が見つかるまで、もう少しマレーシアで頑張ってもらいたいのが現状だ。