被害者から加害者へ、「貴ノ岩」に見る付き人の役割とは?
- 2018/12/19
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とてつもない差がある「十両」と「幕下」
「番付一枚違えば家来同然」「一段違えば虫けら同然」
スポーツ界といえば厳しい上下関係が付き物ですが、中でも相撲の世界は格別。それを端的に表した言葉だといいますね。同じ番付(格付け)でも「◯枚目」が違うだけで扱いが大きく異なるという、ならば番付が違うとどこまで違うのか。「虫けら」というのですから、尋常ではありませんね。
そんな、ただでさえ大きな一段の差が、最も大きく開くのが「十両」と「幕下」。
十両になるということは、力士として一人前になったということ。協会から給料がもらえるようになりますし、大部屋を出ることをゆるされる。晴れて関取ですから「◯◯関」という尊称で呼ばれるようにもなる、正装では紋付袴が着用できますし、髷も大銀杏になりますし、移動もビジネスクラスを使用することが許されるのです。
十両以上に出世すると、付き人もつく
そして十両に上がると「付き人(付け人)」がつく。
これは幕下の力士から選ばれるもので、関取の身の回りの世話をする人。ですから十両と幕下、たった一枚番付が違うだけでお世話される側とする側、立場は180度違ってくるのです。
そんな付き人の仕事は多岐にわたるもの。
ちゃんこ(食事)になると給仕をしなければなりませんし、個室の掃除や買い物も付き人の仕事。関取にテーピングを巻いたり、マッサージをするのも付き人、風呂に入れば背中を流すのも付き人、関取が歯を磨きやすいように、あらかじめ歯ブラシに歯磨き粉をつけておく、稽古につける「まわし」を冷たくないようにストーブの前であたためる……全部付き人の仕事になってきます。
付き人への暴力事件で、貴ノ岩関は一転加害者に
千賀ノ浦部屋に所属する幕内、貴ノ岩関が付き人に暴行を加えたという事件は、起こした人物、タイミングとともに最悪なものでした。
というのも貴ノ岩関といえば、一連の「貴乃花部屋騒動」のきっかけになった、元横綱・日馬富士関からの暴行事件の被害者。「今度は加害者に回ったのかよ」と思った人も多かったことでしょう。
相撲協会はいかなる暴力も許さないと「決別宣言」を出したばかりでしたし、同じ部屋の小結、貴景勝関が九州場所で初優勝を果たしたばかり。「何というタイミングでやらかすのか」というのも、多くの人が感じたことです。
「付き人が財布を忘れてきたばかりか、言い訳したことに腹が立ち、平手とこぶしで4、5回殴った」と報道されていましたが、前回の被害者が今回の加害者とは。暴力をふるわれる痛みをわかっているはずなのに、残念なことです。
相撲の悪い体質を象徴する付き人制度
しかし、関取による付き人への暴力事件は決して珍しいものではありません。
今年の3月には、同じ千賀ノ浦部屋の貴公俊(たかよしとし)関が付き人を殴打し血まみれにするという事件が起きていますし、同じような事件は同時期に峰崎部屋でも起きているもの。
昭和の時代には元横綱、双羽黒関にエアガンで撃たれるなどの暴力を受けた付き人たちが集団で脱走するといったの事件も起きて世間を呆れさせましたが、まあしょうがないのです。関取にとって幕下の付き人は先述のとおり「虫けら」のようなものですから。
……といっていては、絶対に駄目なのだと思います。
自身のことを人にやらせておいて、何が関取だ?と、私、アントニオ犬助なんかは思うのです。厳しすぎる上下関係は新弟子希望者の減少を招きますし、これから力をつける必要がある幕下の力士を付き人の仕事で忙殺してしまうなど、百害あって一利なし。
付き人問題は相撲界の未来に大きく関わってくると思うのです。
「幕下期間が長くて付き人ばっかりやっているような力士に、そもそも未来なんかないよ」という声もあるでしょうが、相撲の体質改善はこの辺からではないかと思うのです。