持ち家と賃貸どちらが良いか論争に一石を投じる?台風と所有権とは?
- 2017/11/13
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台風被害の責任は誰にある?
秋台風が吹き荒れた日本列島も落ち着きを取り戻している中、先の台風で地盤が崩落した奈良県の住宅地では、いまも深刻な問題が残っています。
三郷町の住宅地で、盛土をして分譲販売された土地の一部が、台風の影響で崩落し、下を走る近鉄生駒線の線路上に雪崩れ込むという事態が起こったものです。住宅側は床下の土地が一部なくなってしまう状況で、今度はいつ住宅そのものが倒壊するか危険な状況です。
そんな危険な状況なら、早急に復旧する必要があるじゃないかというところですが、困ったことにもめているのです。この土地は私有地であるため、三郷町や奈良県、国には直接の責任がありません。もちろん、近鉄にも責任のない話です。
近鉄としては、線路をふさがれる被害を受けた側であり、近鉄の利用者にも大きな影響が出ています。そのため、近鉄は費用を自社で持つので線路の復旧を行わせてほしいとの意向を示しました。これに対し、復旧よりも原因究明が先だとする住民が反発します。復旧を急ぐ近鉄に対し、「都合が悪いことでもあるのか」という発言まで飛び出しています。事情を知らないで聞いたら、まるで近鉄が加害者のように聞こえます。
住民の気持ちはわからないでもないが
住民が苛立つにはわけがあります。ひとつには、県が造成を認めた物件を買ったらこんなことになったとの被害感情があるためです。しかし、県の処分が不当だったかどうかも判然としません。責任の追及が困難な状態になっています。
また、近鉄側の説明が高飛車だとする怒りもあります。配布された同意書には、自分がすべきところ、直ぐにできないので近鉄にお願いする。住宅の崩壊等があっても賠償請求しないという趣旨の記述がありました。大企業のやることか!と、これには同意しなかったようです。
しかし、大きな企業は小さな個人になんでも譲歩しなければならないというものでもありません。ましてや、公共交通機関であり、一部の住民の意向だけで止めておくなど、できる道理もありません。復旧より原因究明を重視する立場であれば、どのような表現だったとしても、同意などできなかったのではないでしょうか。
さらに、話がややこしくなっているのは、前述のとおり、この造成が奈良県の許可で適正に実施されたことになっているためです。奈良県がOKを出している以上、責任を取れというものです。
このままでは埒が明かないため、11月7日、奈良県は調査と一部工事を行うことを決定しました。但し、費用負担については住民と協議するとしています。これが、所有権のおそろしい面だといえます。欠陥品をつかまされたとしても、その損害は所有権者である自分に帰するわけです。第三者に被害を与えていれば、それも賠償しなくてはいけません。そのうえで、欠陥品をつかませた奴から取り戻す。気の毒な話ですが、あとは政治と納税者の判断でしょうか。
もっとも、今回は近鉄が復旧費用を請求する気はないと言っていたので、その分は負担がなくなります。
台風で土地が崩落するなどということは、そうそうあることではないでしょう。しかし、多かれ少なかれ、リスクはあるものです。持ち家と賃貸の論争を行う際には、こうしたリスクも真剣に考慮するオヤジでありたいものです。