ふとした瞬間に「指がしびれる」こと多くないですか?【内科医が悩み解決】

  • 2019/04/26
  • ヘルスケア
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  • 浅野 翔吾【内科医】
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作業したあとに指がしびれるって何かの病気の前兆?

ふとした瞬間に「指がしびれる」こと多くないですか?

皆さんは手のしびれについて悩んだことはありませんか?パソコンを使用している時、ボルトでネジをとめている時、字を書いている時、窓の掃除をしている時、何かしらの仕事や作業に集中しようとしているのに指のしびれのせいで集中できない。

そんな悩みを抱えている方はいませんか?特に昔みたいに若くはないけど社会や家庭でまだまだ働き盛りとして貢献されている30~40代のいわゆる「オヤジ」の方々が日常生活の中でそんな症状を気にしながら生活するのはつらいだろうと思います。

今回はそのような症状について何かしらの疾患の可能性なども含め解説させていただきます。

 

そもそもしびれって?

しびれといっても色々とあります。実は人それぞれで表現されるしびれは違っています。例をあげると「触った時に感覚が鈍い」「熱さや冷たさがわからない」「痛みを感じない」など感覚自体の鈍さを表現するためにこれらをしびれと言っているものもあれば、「ジンジン、ビリビリする」「針で刺されたようなチクチクとする」「灼けつくような感じ」など異常な感覚を覚えることもあります。このようにしびれとは実に多彩な症状の表現で成り立っています。

またしびれを引き起こす原因も様々で脳、脊髄などの中枢神経の病気が災いしていることもあれば手足の末端の神経に異常が生じる病気が原因であることもあります。これらの病気の治療法もそれぞれで違うためにまずは対処法を見つけるためには正しい診断が必要になります。

そして診断が正しくなされるポイントとして症状の出るタイミングや動かしにくさなどその他の症状もしびれの原因を見分ける重要な方法になります。

 

健康診断で糖尿病を指摘されたことがある。

アルコールをたくさん飲む習慣がある。 →糖尿病性神経障害、ビタミン欠乏症

糖尿病は血糖値が異常に高くなり、それが長らく続くことで全身の血管の動脈硬化の原因となります。動脈硬化がすすむと血管を通じて生命活動に必要な栄養や成分を全身の臓器に供給することができなくなり、やがて脳卒中や腎臓の機能障害、網膜症などを引き起こし日常生活が送れなくなる怖い病気です。それは当然血管から栄養をもらっている神経にも起こりえます。手足の神経は細いためその影響を受けやすく、糖尿病の影響によりダメージを受けやすくなります。

糖尿病のしびれの特徴は多くの場合脚の指や裏に「ピリピリ「ジンジン」といった感じの痛みに似たようなしびれが生じて手指には認められません。しかしそのまま放っておくと手指にも「ジンジン」としたような自覚を覚えるようになりちょうど手袋や靴下で覆われる部分に症状がみられるようになります。

さらに症状が進行すると次第に神経自体が働きを失っていくためしびれるような症状もなくなり感覚そのものが弱くなっていきます。

また同じように手指の神経にダメージを及ぼすものは糖尿病だけではありません。ビタミン欠乏症やアルコールの多飲でも同様の症状を引き起こします。ビタミン欠乏症では特にビタミンB1、B12の不足が生じることで手足の神経にダメージが及びやすくなります。

また多量の飲酒を毎日続けるとそのアルコールを代謝するためにビタミンB1が多く使われるために身体は慢性的なビタミンB1欠乏症になりやすくなります。

そしてさらに踏み込むとビタミン欠乏症の背景にはアルコール依存症をはじめとしたバランスが極端にとれていない偏った食事を続けていることが背景にあります。そのため糖尿病に関しても同じことが言えますが毎日の生活において野菜、肉、穀類、魚介類、乳製品などが少しずつでも含まれているバランスのとれた食事の摂取を心がける必要あります。

 

首を後ろにそらすとしびれが酷くなる

→頚椎症(けいついしょう)

頚椎症
脊髄の中でも首の位置の相当する頚髄に何らかの圧迫が生じて肩や首の痛みの他、手指にジンジンとしたようなしびれ感を感じることがあります。圧迫の原因として良く言われるのが頚椎椎間板ヘルニアです。人の頭部の重さは4~5㎏程度あると言われています。直立二足歩行をする人間は首だけでそれを支えています。

そして常にその重さが首にかかると首の骨同士の間にクッションの役割を果たしている椎間板が壊れてはみ出てしまいすぐ後ろに位置する頚髄を圧迫することでしびれの症状が現れます。最初は上を見上げて長時間作業をする時や手を酷使する作業をすることで手指の先がジンジンする症状が現れます。そのうちそれは作業をしていなくても常にじんじんとするような感覚になり、更に悪化すると手指を動かしにくい、指で細かい作業ができないなどの症状がでてきます。

治療方法としてはお薬によって症状を緩和する、頚椎カラーをつけて首の負担を少なくするなどの方法がありますが根本的に解決するためには手術で頚髄の圧迫を取り除く必要があります。

 

機械のボルトを締めようとしても上手くできない。夜や明け方にしびれが酷くなる。

➡手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

手根管症候群
手首の裏側あたりに親指から薬指までの4本の指を動かす役割を担う神経である正中神経(せいちゅうしんけい)が通過しているじん帯があります。これが管のような形になっていることからこれを手根管と呼んでいるのですが何かしらの原因でこのじん帯が厚くなり、中を通過している正中神経が圧迫されることで手指にしびれが生じます。

じん帯が厚くなる原因として手首の骨折やリウマチなどによる炎症、手根管内の腫瘍、更に腎臓病や痛風などの代謝の変化でじん帯が厚くなることも起こりえます。手根管症候群は片手に発症することが多いのですが両手に発症してくると糖尿病によるしびれと似通ってきます。しかし正中神経は小指には到達していないため手根管症候群の場合には小指には症状がでません。これが糖尿病のしびれと見分けるポイントとなります。最初は中指のしびれ感で発症することが多く、次第に隣の指に拡がっていきます。

夜間や明け方のしびれ、そして手指を使う細かい作業中のしびれに始まり症状が悪くなっていくと痛みに近いしびれで夜に目が覚めたり、日中にも常にしびれを自覚するようになります。そして最後には手のひらの親指の付け根の筋肉が萎縮してきたりします。相当進行した状態では筋肉の萎縮が始まると親指を内側に曲げる力が弱くなり、人差し指と親指をくっつける力がなくなってくるため小銭をつまみにくくなる、ボタンがかけにくくなるなど日常生活にも大きな障害をきたします。手指にしびれのある方で小指と親指をくっつける動作をしてみてそれがつかない方は注意が必要です。

治療法としてはまずは手首の安静、さらに原因となっているじん帯に対して薬剤を注射して炎症を抑える方法があります。これで改善が乏しいようであればじん帯を切開して直接的に神経にかかっている圧迫を軽減する手術があります。

 

電車でつり革につかまると手のしびれが酷い、上肢を挙上すると手指がジンジンする。

→胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)

手根管症候群は手先の細い神経のみの症状でしたがこれがさらに根元の太い神経で起こることもあります。胸郭出口症候群はその疾患です。腕の神経は頸椎から分かれて一番上の肋骨や胸部の筋肉の間から腕に向かって伸びていきます。その腕にでてくるまでの間の骨や筋肉に神経が圧迫された結果生じるしびれのことを胸郭出口症候群いいます。上肢を挙上した時に多く認められつり革につかまる、洗濯物を干す、荷物を棚にのせるなど作業を行う場合に自覚されることが多いです。一般的には女性に多い病気なのですが筋肉を良く鍛えている男性にも発症しやすい傾向があります。腕の根本の方の神経の障害であるため手根管症候群よりもしびれの範囲が広く、上肢全体に痛みに近いしびれが襲います。

症状がひどくなると握力の手や腕の動かしにくさなどの麻痺症状がみられることもあります。治療方法としては基本的には鎮痛薬の内服、腕や肩の安静やストレッチなどが有効ですがあまりに症状がひどく耐え難い場合には神経を圧迫している腱や肋骨の一部を切除する手術療法を実施することがあります。

 

自分で判断するのは難しい

日常生活に影響がでるほどの手指のしびれに関してはやはり一度医療機関への受診をおすすめします。その原因によって対処する方法が違ってくるためまずは何かしらの疾患があるかどうかの診断をしてもらうことが重要でしょう。受診の際にはできればご自身のこれまでの病気の経歴やお薬手帳、過去の健康診断の結果などがあると医師の側も参考になる材料が増えてより診断も正確になります。

 

何科に受診すれば良い?

受診といっても病院の中は実に多くの診療科が存在します。特に30~40代の働き盛りの男性などは通院自体もあまり経験がない方も多いでしょうから何科に受診すれば良いかすらもよくわからないことが多いと思います。病院にいってみたものの受付ロビーでどうしたら良いかわからないなんてことは頻繁にあることです。しびれは神経のダメージによって引き起こされることが多い症状であることからも神経の病気について専門に取り扱っている診療科への受診が適切です。具体的には内科、中でも神経内科(2018年~脳神経内科へ専門医名が変更)を標榜している医療機関への受診が最適と考えます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?しびれと聞くと一般的には脳の病気?、脳卒中?と考えてしまう方も多いかもしれません。しかし実際は人間の大脳は左右に分かれており、身体の神経による支配も左半身は右脳、右半身は左脳で分かれて支配されています。そのため脳が原因の場合左右の両側の手や足に一度に症状がでることは稀なのです。

今回解説させていただいているようなしびれの症状の場合にはやはり違う原因を先に考えなければならないでしょう。先にあげたものはしびれの中でも代表的なものであるためこの他にももっとしびれを起こしてくる病気は存在しています。もししびれに関して悩んでいる方がおられれば早めに受診されることをおすすめいたします。

この記事の作者

浅野 翔吾【内科医】
浅野 翔吾【内科医】
1978年生まれ。中部地方のとある病院で内科医として勤務医をしつつ、ライター活動をしている。趣味はサイクリング、ランニング。2児の父、子育てをきっかけに医師の働き方に関して真剣に考えるようになる。2017年にそれまでの不眠不休の労働を改め、地方の急性期病院を退職し現在に至る。
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