30代からの筋トレ。何を足して何を引くべきか。

  • 2019/08/16
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  • 角谷 剛【スポーツトレーナー】
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一般的には若ければ若いほど体力があって、運動能力も高いと思われがちだ。だが年齢を重ねても20代の頃のパフォーマンスを維持するどころか、さらに進化を続けているランナーが数多くいることは前回の記事で紹介した。

その一方で、早ければ30歳ぐらいから既に加齢による体力の伸び悩みや劣化に悩む人がいることもまた事実だ。最近疲れやすくなった、昔のように走れなくなった、無理して走ったら足が攣った。そんな人はもうトシだから仕方ないとあきらめてはいないだろうか?

30代でも(40代でも50代でもあるいは80代でも)、トレーニングをすることによって体力も筋力も向上させることは可能だ。問題はその方法。若い頃と同じようにトレーニングするのは無理であるし、あえて無理をするとケガをする。

それに多くの人にとって、30~50代は一生のうちで最も忙しい年代にあたる。仕事もあれば、家庭もある。時間と体力を無制限にトレーニングで使い切ってしまうわけにはいかない。だからこそ、大人のスポーツマンでいるためには、人は限られた時間内で効率的かつ安全に体を鍛える方法を見つけなくてはならないのだ。

 

筋トレで加齢による劣化を食い止める

筋トレで加齢による劣化を食い止める
大人が健康のために行うスポーツと言えば、ジョギングを頭に浮かべる人は多いだろう。2007年に始まった「東京マラソン」をきっかけにランニング人口は増え続けている。その人気を支えているのは実は中高年だ。市民マラソンに出場するランナーの多くを30代以上が占めている。

しかし、こうしたマラソン・ブーム、ランニング・ブームが30代以上の人々の健康や体力を向上させているかと言えば首をかしげざるをえない。

20代までは、ジョギングだけを行っていても、それなりの効果はある。体は引き締まり、ぜい肉は消え、持久力もアップする。ところが、人は30代を過ぎると、代謝率が低下し、体の自然なカロリー消費能力が低下する。平たく言えば、脂肪はよりつきやすくなり、筋肉はよりつきにくくなるのだ。

そのため、若い頃と同じ効果を得るためには、若い頃より強度の強い運動が必要になってくる。ジョギングだけでは不充分なのだ。そのためにお勧めするのが筋トレだ。

加齢によって、筋肉量と骨密度が低下することにも注意が必要だ。筋トレはダイエットに効果があるだけでなく、筋肉量や骨密度を向上させ、さらには血圧の低下、睡眠の改善、認知機能の強化に役立つことが多くの研究によって明らかになっている。つまり、一般的に加齢による劣化と思われる様々な現象を、筋トレを行うことで食い止めることが出来るのだ。そのため、年齢が上がれば上がるほど、より積極的に筋トレを日常生活に取り入れることが望ましい。

 

目的別に筋トレの種類を考える

目的別に筋トレの種類を考える
ダイエットや健康のためと言うより、あるスポーツのパフォーマンスを上げることを目的として、補強運動として筋トレを行う人もいるだろう。そのような人は、自分が行っているスポーツにとって最適な、かつ効果を最大限に引き出すためのメニューを作ることを最優先に考えてほしい。

最大筋力をつけて、スピードを上げて、持久力も伸ばして、体重も減らしたい。気持ちはよくわかるが、それは高望みというものだ。大前提として、1つのトレーニングには期待できる効果は1つしかない。これを特異性の原則と呼ぶ。

それを踏まえて、自分にとって今何が最優先課題なのかをはっきり把握することが、筋トレメニューを作成する第一のステップになる。

そもそも、スポーツによって要求される運動能力は異なる。例えば、野球選手であれば、重要なのは瞬間的なパワーと俊敏性。長距離ランナーのような心肺能力や筋持久力はさほど要求されないし、試合で発揮する機会もない。伝統的に長距離走や腕立て伏せを何回も選手にやらせる野球指導者は今でも多い。根性を鍛える効果はあるかもしれないし、ダイエット効果もあるかもしれない。耐久系の心肺能力も筋持久力もあったら悪いわけではない。だが野球と言うスポーツのパフォーマンス効果を考えるとあまり意味はない。

スポーツの特異性によって求められる運動能力とは何であるかを意識して、それに沿った筋トレの種類を選ぶことが重要だ。

 

停滞期に陥らないための自己管理

停滞期に陥らないための自己管理
注意してほしいのは、唯一で万能な筋トレはないということだ。絶対にやらなくてはいけないという筋トレのメニューはないし、逆にこれだけをやっておけばよいものもない。むしろ、自分の身体の反応を見ながら、定期的にメニューを変えていく創意工夫が重要になる。

筋トレの効果を得るためには、常に筋肉に刺激を与え続けることが不可欠だからだ。そのためには定期的なトレーニングを継続して、かつ重量や回数を少しずつ増やしていかなければいけないのだが(漸進性過負荷の原則と呼ぶ)、毎日同じ単調な動きを繰り返していれば、そのうちに筋肉は刺激を感じなくなり、パフォーマンスは伸びなくなる。いわゆるプラトー(停滞期)に落ち込んでしまうのだ。

精神的な面も見逃せない。なぜなら、多くの人にとって筋トレとはそれほど面白いものでも楽しいものでもないからだ。「きつい」は勿論、「つまらない」とか「飽きた」と思ってしまうときに、筋トレをついついサボり気味になってしまうし、悪くすると辞めてしまうことにさえ繋がってしまう。

学校の部活なら先生やコーチが選手を叱咤激励してくれるわけだが、社会人が趣味で筋トレを行う場合は、自分で自分を鼓舞しなくてはいけない。ジムのインストラクターにその役割を期待してもいいのだが、それにはカネと時間がかかる。

社会人の筋トレとは大人の嗜みだ。モチベーションは外部に求めず、常に自分の中で維持しなくてはいけない。少し目先を変えてトレーニング内容を変えてみるとか、小さな目標を達成するたびに自分にご褒美を上げるとか、トレーニングを継続するための自己管理能力が筋トレを継続する上で問われてくる。

 

まとめ

最後になるが、どれだけ筋力を向上させたとしても、回復能力だけは年齢とともに必ず減少することを覚えておいてほしい。

20代までは、一晩中飲み歩いても翌朝元気に出勤することが出来たかもしれないが、30代にもなると二日酔いから回復するには時間がかかるし、体へのダメージも大きくなる。筋トレにも同じことが言える。

体力を回復させるためには色々な手段があるが、最も重要なのは適正な休息だ。休息とはただトレーニングをしないだけではない。暴飲暴食や睡眠不足の生活を送ると、ただでさえ低くなった回復能力がさらに下がってしまう。

従って、30代以上の人は、年齢が上がれば上がるほど、適切な睡眠、充分な休息、規則正しい生活リズム、正しい食事の重要性が増してくることを強調してし過ぎることはない。そのことに気をつけないと、せっかく筋トレで得た効果も生活習慣によって台無しになってしまうからだ。30代以上のスポーツマンを目指すなら、適正なトレーニングと健康的なライフスタイルが不可欠なのだ。どちらが欠けても望ましい効果を得ることはできない。

この記事の作者

角谷 剛【スポーツトレーナー】
角谷 剛【スポーツトレーナー】
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。 【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani
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