ボクシングの無期限の出場停止処分ってどれくらい重い処分なのか?
- 2018/05/19
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アンフェアなボクサーに課されたペナルティ
前日計量で2.3kgの体重オーバー、挑戦者の山中慎介選手との差は2.5kg。
こんなコンディションで今年の3月に試合に挑んだ、WBCバンタム級王者・ルイス・ネリは山中選手を2回TKOにて下しました。試合当日の計量によると、ネリは実にフェザー級の体重、2階級上のパンチ力で山中選手を相手にしたのです。これではたまったものではありません。
アンフェアこの上ない結果に、日本中ばかりか世界のボクシングファンが落胆……これが最後の試合となった山中選手に対しては同情的な言葉が、ネリに対しては怒りの言葉がTwitterなどにあふれたものでした。
日本国内のボクシング界を統括するJBCは、こんなネリに1年間の招聘禁止という処分を下したもの。これでネリはファイトマネーが掛かったいかなる試合も、1年間は日本でおこなうことができなくなりました。
一方で試合を認定したWBCが下した処分は、無期限の出場禁止と公聴会への出席を義務付けるというもの。
王座については体重オーバーで試合に挑む時点で剥奪されていましたが、これによりネリは、WBCのランキングからも除外されてしまうことに。ということは剥奪された王座に挑戦することもできなくなる、それも公聴会の内容次第では永遠に……となったのです。
同様の事態で下された、無期限停止処分
後味が悪い一連の騒動が過ぎた1カ月ほど後、これと似た事態を引き起こしてしまったのが、元WBC世界フライ級王者・比嘉大吾選手。
今年の4月15日におこなわれた3度目の防衛戦の前日計量で0.9kgオーバー、比嘉選手はその時点で王座を剥奪されることに。ボクシングファンは、今度は日本人チャンピオンが!!と、大いにショックを受けたのでした。
まあ、比嘉選手の場合は試合当日の計量では設定された体重に合わせてきましたから、ネリほど悪質ではないとしても、ウエイトオーバーで前日計量に挑んだという点では同じこと。
これに対してJBCが下した処分は、比嘉選手のプロライセンスの無期限停止と所属する具志堅ジムへの戒告というもの。これで比嘉選手は日本のリングでボクシングの試合をおこなうことはできなくなったのです。
一見厳しそうな処分ながら、実は抜け穴も?!
ネリや比嘉選手に対して下されたのは両方とも「無期限停止」という処分。
その字面からは、非常に厳しいものに感じられるのですが……よくよく調べてみると、実はそれほど厳しいものではないことに気が付きます。
まずはネリについてですが、これは飽くまでもWBCが下した処分ですから、当然有効なのはWBCのリングに限ったこと。世界にはメジャーと呼ばれるボクシングの団体はWBA、IBF、WBOとWBC以外に3団体もあるもの。マイナーな団体となると、それこそ無数にある……WBCから無期限の出場停止処分を食らわされたからといって、ネリはプロのリングに二度と上がれないということではないのです。
一方で比嘉選手について。プロライセンスの無期限停止も非常に重く感じるのですが、これは飽くまでもJBCの影響下での話。海外での活動についてJBCは何ら効力を持っていないのです。ですから、比嘉選手が望めば海外のマットでボクシングの試合をおこなうことができるもの。現に亀田3兄弟を始めとして、JBCのライセンスなしで海外で活躍する(した)ボクサーも多いのです。
プラスにもマイナスにもなる、ダーティなイメージ
「処分はともかく、ネリに付いたダーティなイメージは、どうしようもないんじゃないの?」そんな風に思う人もいるでしょう。
しかし、ダーティなイメージはボクシングなど、興行の世界では必ずしもマイナスにはならないもの。なぜなら、ダーティなヒール(悪役)がリング上でボコボコにされる姿は誰もが見たい……つまり、ダーティなネリは裏を返せば客が呼べるボクサーということになるのです。
ですから、WBC以外の団体がこれを利用しないとは言い切れないですし、ネリ側は積極的にこれを利用して売り込みを掛けるかもしれない……なんともドス黒い世界なのですが、まあしょうがないのかもしれない。結果、WBCの無期限停止処分など全く意味がないものになりかねないのです。
しかし一方の比嘉選手の場合となると、こちらはネリと少々事情が異なります。
なぜなら、こちらはダーティなイメージが付くことを誰も望んでいないから。特に、所属する具志堅ジムの具志堅会長は、ユニークなキャラクターが受けて芸能活動も好調。となると、所属する選手の不祥事は徹底的に嫌うでしょう。また比嘉選手も将来、ジムの経営に乗り出すとするならJBCとのもめごとは避けたい。なぜなら、日本のプロボクシング界全てを牛耳っているのが、JBCなのです。
ということで比嘉選手の場合は、いくら無期限停止という処分が抜け穴だらけだったとしても、JBCが設けたプロライセンスの再交付の条件をクリアすべく努力していくでしょうし、それを期待したいものです。
比嘉選手に対しては厳しいながらも温かい目で、ネリに対しては徹底的に厳しい目で、今後の事態の推移を見守りたいと思います。