つかまったとしても、必ずしも刑務所へいくわけではない

「悪いことをするとお巡りさんに捕まって、刑務所に入れられるよ!!」
何とも昭和の匂いがするフレーズ、昔は街中でこんなセリフを口にして、子どもを叱っている親を見かけた気がするのですが、最近ではとんと目にすることはなくなりましたね。

私、アントニオ犬助も子どものころには「刑務所」という禍々しい言葉に恐怖したものですが成長するにつれて「悪いことをしてお巡りさんに捕まることはあったとしても、必ずしも刑務所に入れられるとは限らない」ということを学びました。
なぜなら「執行猶予」というものが付くから。

現に酒気帯び運転でひき逃げという事件を起こした、元モーニング娘。の吉澤ひとみ被告に下った判決は懲役2年、執行猶予5年というもの。今のところは刑務所にいかずに済んでいます。では、そもそも執行猶予とは何でしょうか?

何もなければ、刑罰を受けなくてもすむ

執行猶予とはウィキペディアによると
「判決で刑を言い渡すにあたり、犯人の犯情を考慮して、一定の期間（執行猶予期間）法令の定めるところにより刑事事件を起こさず無事に経過したときは刑罰権を消滅させる制度」
とあります。

刑罰、吉澤さんの場合は懲役2年という自由（を制限する）刑が下されているのですが、すぐに処罰するのではなく猶予期間をおきますよ、ということ。その間、何も罪を犯さなければ刑罰を下さずにおきますから、直ちに社会復帰してくださいね、ということです。
では、どんな罪を犯してしまうと執行猶予が取り消されてしまうか?というと、ウィキペディアにもあるとおり刑事事件。

執行猶予が付くと弁護士さんから「猶予期間中は、車の運転も可能な限り控えるように」と、釘を刺されると聞いたことがありますが、軽いスピード違反程度ならば「行政処分」。
「反則金」で済みますからキップを切られた程度では執行猶予が取り消されることはありません。

執行猶予が取り消されてしまうケースとは?

しかし、問題は時速30kmオーバー以上で捕まったケース。
こうなると刑事処分である「罰金」が課されますから立派な刑事事件。非常に悪質なケースと裁判官が判断してしまったら、執行猶予が取り消されてしまうことも起こりうる。
これを「裁量的取り消し」と呼びます。

車に乗っていて、執行猶予が取り消されるケースはもう一つ。
悪質な交通違反や人身事故で執行猶予がつかない実刑判決を受けた場合。「必要的取り消し」となってしまい、執行猶予されていた刑罰も加えて、つぐなわなければならなくなってしまいます。

「車の運転を控えるように」と、弁護士さんがいいたくなる気持ちもわかるもの。執行猶予期間中は、特に注意して生活しなければならないのです。

また、単に本人に注意させるだけでは不安と判断された場合には「保護観察」という処分が下されます。これは執行猶予期間中に保護観察所の元で更生を図るというもので、定期的に保護観察官のもとに報告にいったりしなくてはならず非常に面倒なのですが、これをサボったりするとおおごとになる。
場合によっては、執行猶予が取り消されてしまうこともありうるとのことです。

「弁当持ち」になったら、大人しく過ごさなければならない

こんな執行猶予、スラングではしばしば「弁当持ち」と呼ばれます。
常に付いて回り、罪を犯したらなくなってしまう執行猶予を、持ち運ぶことができ、食べたらなくなってしまう弁当にかけたもので、執行猶予が付くことを「弁当が付く」、執行猶予期間を「弁当付き」とも呼んだりする。同様の表現に「爆弾を背負う」というのもありますね。

そして「弁当持ち」にも関わらず、刑事事件を犯して実刑判決が下ってしまうと「アカオチ」となる。昔の囚人は逃走した場合にも目立ちやすくするために、赤色の囚人服を着せられたとか。だから、刑務所に入れられることを今でも「アカオチ」と呼んでいます。

まあ「YAZIUP!」を読んでいる皆さんは、弁当も爆弾もアカオチも全部無縁でしょうけれど、おぼえておくといつか役に立つ……かもしれませんね。