ランニングに飽きたランナーが挑む障害物レースなるもの!100%混じりけなしのアドレナリン!

  • 2019/09/19
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  • 角谷 剛【スポーツトレーナー】
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フルマラソンは走った。さあ次はなにをしよう?と自問する人への答えの1つとしてウルトラマラソンを前回の記事で紹介した。せっかく42キロを走ることが出来る脚力と心肺能力を手に入れたのなら、それを他のことに使わないのは勿体ない。今回はそんな人へのもう1つの選択肢として、米国で大人気を呼び、日本にも飛び火しつつある障害物レースを紹介したい。

スパルタンと呼ばれるレースの名を見聞きしたことがある人は少なくないだろう。楽天がスポンサーになり、日本でも障害物レースのイベントを開催している唯一の団体だ。ここで言う障害物レース(Obstacle Course Race, 以後OCR)とは、伝統的な陸上競技のそれやもちろん競馬の障害競走ではない。2000年代から米国で盛んになった比較的新しいタイプのレースで、コース内に設置された様々な障害物をクリアしながらゴールを目指すタイプの市民参加型フットレースだ。

 

元々は大人の泥遊び

元々は大人の泥遊び
最近になってOCRという一般名称が定着してきたが、以前はMud Runと呼ばれることも多かった。Mudとは泥のこと。このようなレースでは泥だらけの池に飛び込んだり、あるいは匍匐前進したりするので、参加者はみな頭のてっぺんから靴の中まで、全身が泥だらけになる。このような経験を味わえるものは他にはあまりない。

コース内の障害物はもちろん泥だけではない。崖を四つん這いでよじ登ったり、丸太を抱えて山道を走ったり、壁を乗り越えたり、池の上にかけられた雲梯で向こう岸に渡ったり(失敗すると池に落ちる)、といったものが次々と出てくる。レースによって数や種類は異なるが、そうした障害物が5~20キロぐらいのコースに散らばっているのが一般的だ。

 

より過激に、より過酷に、

より過激に、より過酷に、
ウルトラマラソンを走るランナーたちとOCRに挑む参加者層は多くの部分で重なりある。その両方をこなす人も少なくない。5キロ走、ハーフマラソン、フルマラソン、といった伝統的な市民レースに飽き足らず、より過激なものを求める人の数が世界的に増えているのだ。

国際陸上競技連盟(IAAF)が今年の初めに明らかにした報告書によれば、2016年からの3年間で、世界中で開催される5キロ走レースの数は13%減り、ハーフマラソン大会の数は25%減り、かろうじてフルマラソン大会の数はほぼ横ばいということだ。

ランナーの数が減っているわけではなく、その興味が別のフィールドに向かっているようなのだ。米国内のデータになるが、50キロ以上の距離を走るウルトラマラソンのレース数は2018年には2000を越え、約10年前の4倍以上になった。OCRが急成長したのも、それと時期を同じくする。

こうした過激なレースを求める傾向は中高年がミッドライフ・クライシスに抵抗することやソーシャル・ネットワーク・サービスで自慢したがる心情と結び付けて論じられることが多い。だけど、ぼくはそれだけでは説明できないと感じている。

ある種の人には、自分をとことん痛めつけてみたいという欲求と、自分がどれだけの痛みを乗り越えることができるかを知りたいという好奇心があるみたいだ。ウルトラマラソンもOCRも一応はタイムを競う競技はあるけれど、多くの参加者はあまり自分のタイムを気にしない。他人と比較することもあまりない。それよりも完走者であるかどうかが重要だ。そのような人たちはフルマラソンを走ることでは得られなくなった達成感をウルトラマラソンやOCRに求めているのではないか。ぼくもその1人だ。

どちらかと言えば、ダイエットとか健康とかを目的にする人は比較的短い距離のレース参加者に多く、ウルトラマラソンやOCRには少ない気がする。何もこんな過酷なことをしなくても痩せることは出来るし、健康にはかえって悪いような印象もある。

 

日本は障害物レースの元祖か

動機が何であれ、OCRは楽しい。ウルトラマラソンは走るという同じ動作を行う時間をひたすら伸ばしていくわけだが、OCRでは走ること以外にも、ありとあらゆる運動能力を試される。走るときに足を踏み出すかどうかは自分の意思にかかわってくるが、OCRの障害物にはその前にそれを出来るかどうか、というゲーム的要素がある。長距離走で培った持久力に加えて、重いモノを持ち上げるパワー、バランス、巧緻性など、まるで総合格闘技のような刺激を与えてくれるのだ。

だからだろう、OCRを好む人はまたサスケ(米国ではNinja Warriorと呼ばれている)を好む。その両方を専門にしたトレーニング・ジムまで次々と誕生している。そのようなジムでは、普段はサスケのような障害物(サーモンラダー、そそり立つ壁、サイドワインダーなど)を使ったトレーニングをして、週末には各地で行われるOCRのイベントに参加している。サスケを生み出した日本でOCRが受けないわけはないと思う。

 

多様化する障害物レース

OCRの人気が高まるにつれ、参加者の好みやレースに求めるものも多様化してきている。初期の頃は泥の障害物と山道での長距離走が必ずセットになっていたが、最近は泥や長距離走を排してスポーツ志向を高めたもの、逆に家族向けのやさしいもの、など好みに応じて様々な種類のOCRレースを選べるようになってきた。

もっとも、日本ではスパルタン・レースぐらいしか選択肢がないのが現状だが、そのスパルタン・レースも以下のように、走行距離と障害物数によって、いくつかの種類に分けている。

• スプリント:3マイル(5キロ)以上、20 以上の障害物
• スーパー:8マイル(13キロ)以上、25以上の障害物
• ビースト:13マイル(21キロ)以上、30以上の障害物
• ウルトラ:30マイル(50キロ)以上、60以上の障害物

さらに子供用のレース、野球場で行うスタジアム・レース、そしてトレイルランのみのレースも最近新設された。

ウルトラマラソンの距離と障害物を合わせた「ウルトラ」は日本ではまだ開催されたことがない。スパルタン・レースと並ぶOCRのメジャー団体であるTough Mudderには24時間耐久レース(通常のコースを何回も繰り返す)もあり、これは世界で最も過酷な障害物レースと呼ばれている。

 

仲間と乗り越える楽しみ

仲間と乗り越える楽しみ
過酷なコース設定に加えて、OCRでもう1つ強調されるのはチームワークの精神だ。壁に手が届かない仲間に手を差し伸べたり、1人では担げない石や木を協力して運んだりする。職場の同僚や、ジムの仲間などでチームを組んで参加するケースも多く、チームメンバーが手をつないでゴールするのはよく見られる光景だ。

チームではなくても、OCRの参加者同士はライバルというより仲間意識が強く、レース中は励ましあったり、助け合ったりする。

そういうチームワークが苦手な人には、1人で参加して真剣にタイムを競うエリート部門もある。主催者側はこうして多様化したニーズに応えているのだ。

主なOCRの公式ホームページ

スパルタン・レース(日本語):http://spartanracejapan.info/
Tough Mudder: https://toughmudder.com/
Rugged Maniac: https://ruggedmaniac.com/
EPIC :https://www.epicseriesocr.com/
GORUCK:https://www.goruck.com
WarriorDash: https://warriordash.com
スパルタン・レースを除き、OCRに出場するには海外に出かける必要がある(現在では)。日本人ランナーが大半を占めることで有名なホノルル・マラソンを始めとして、海外でマラソンレースを走る人は多い。各旅行会社が航空券、宿泊、レースのエントリーまでもパッケージしたツアーを販売していて、その人気は根強い。それも楽しいだろうし、何よりラクだ。ただし、そこでやっていることは日本と同じマラソンだ。42キロを走るということ自体は変わらない。エイド・ステーションやギャラリーの応援が嬉しい、と言う声もあるけど、正直に言って日本のレース以上のホスピタリティを海外で求めるのは難しいのではないか。外国の景色が珍しいかもしれないが、走っている最中は苦しくて、何も覚えていないってことだってある。
何も海外ランにケチをつけるつもりはさらさらないけど、どうせ高いおカネを払って海外に行くのなら、日本では得られない種類の経験を求めてもよいのではないか。OCRは悪くない選択肢だと思う。ぜひ一度試してみることをお勧めする。

 

ここまで読んだオヤジにおすすめの記事2つ。

フルマラソン完走!次は何する?と迷う人が挑むウルトラマラソンなるもの(https://yaziup.com/life-style/sport/63474)
ランニングは仲間と走る派?1人で走る派?どっちがいいのか?(https://yaziup.com/life-style/sport/63440)

この記事の作者

角谷 剛【スポーツトレーナー】
角谷 剛【スポーツトレーナー】
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。 【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani
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