あそこが痛い!口から移る梅毒、淋菌などの性感染症の恐怖【歯医者アドバイス】

  • 2019/06/17
  • ヘルスケア
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  • 橋詰 和英【歯科医】
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はじめに

はじめに
性感染症というと、性器やその周辺部に症状が現れる病気と思われがちですが、中にはお口に症状が現れる性感染症もあります。
近年、オーラルセックスを行う性風俗店の増加や、オーラルセックスの普及によって、お口の性感染症が増えています。
ところが、お口の中を潤している唾液には抗菌作用があるので、性感染症を生じても症状が現れにくい性質があります。
もちろん、お口に生じた性感染症も、性器の性感染症と同じくパートナーに感染させてしまうリスクがあります。
そこで今回は、代表的な性感染症であるヘルペス、梅毒、淋菌のお口の症状を中心に詳しく解説します。
心当たりのあるオヤジの皆さんはもちろん、そうでないオヤジさんたちも、今回の記事をぜひ参考にしてください。

 

オーラルセックスで性感染症になる?

オーラルセックスとは、口や舌を使うセックスです。普通のセックスの最中に、口や舌を使うと、それもオーラルセックスに含まれます。オーラルセックスではコンドームを使うことが少ないので、オーラルセックスを介して性感染症が広がりやすい傾向があり、注意が必要です。

オーラルセックスでの性感染症の起こり方

オーラルセックスで性感染症が起こるには、
①性器の中にいる病原菌が、お口に感染する
②お口の中にいる病原菌が、性器に感染する
これらの2通りの感染経路があります。
一般的にイメージされるのは、①の経路だと思いますが、近年②の感染経路も増えてきています。

キスでもうつる?

淋菌やクラミジア、HIVのようにキス程度では感染しない性感染症も有りますが、ヘルペスや梅毒のように唇が病原体に触れるだけで感染する可能性がある性感染症もあります。

 

オーラルセックスで感染を起こす性感染症

オーラルセックスにより、しばしばお口に感染が生じるヘルペス・梅毒・淋菌について、解説します。

ヘルペスウイルス

・ヘルペスウイルス感染症とは?
ヘルペスウイルスによる性感染症です。
ヘルペスウイルスは、お口や唇に症状が現れるHSV-1というタイプと、性器に感染するHSV-2というタイプに分けられます。
WHOによりますと、全世界で50歳未満の人の70%がHSV-1に感染しているということです。
・お口の症状
まず、お口や唇に水疱(水ぶくれ)が現れます。そして、水疱が破れて潰瘍とよばれる深い傷になります。
こうした症状により、ヘルペスウイルス感染症は、痛みを伴う経過をたどります。
HSV-1は、お口と性器の接触により、性器に感染する性質があるので、HSV-1が、オーラルセックスで性器に感染し、性器に水疱や潰瘍を生じさせることも珍しくありません。
なお、HSV-1は、お口の中に水疱や潰瘍などの症状が現れているときはなおさらですが、そうでないときにも感染力を持っています。

梅毒

・梅毒とは
梅毒は、トレポネーマ・パリダムという細菌による感染症です。
男性では20〜40代に満遍なく広がっていますが、女性の場合は20代が多くを占めています。
梅毒は長らく減少傾向にあったのですが、ここ数年急激に増加しています。
・お口の症状
梅毒は、お口と性器が同時に感染を起こします。
梅毒の症状は、第1期から第4期までの4期に分けられます。
お口の症状は、感染から3週間ほどののちの第1期と感染かあ3ヶ月ほどのちの第2期に生じます。
第1期では、唇や舌の先、喉のあたりに、大豆台のコブが生じます。このコブは、数日で潰れ消失します。
第2期では、舌や喉のあたりに、境界がはっきりした赤い斑点や白い斑点様の模様、潰瘍が生じます。この模様が、お口の中に喉のあたりを中心として左右対称に蝶が羽を広げたように現れ、これが第2期の梅毒の特徴的な症状です。

淋菌

・淋菌感染症とは
淋菌による性感染症です。
淋菌は、激しい尿道炎の痛みを引き起こす病気として知られていますが、近年咽頭(喉のこと)に感染を生じるケースが増えています。
・お口の症状
淋菌は主に咽頭に感染を生じますが、歯ぐきや舌、頬にも感染するケースがあります。
淋菌がお口に感染すると、軽い喉の痛みや扁桃腺の腫れが起こりますが、困ったことに、90%近くは無症状で、本人に自覚がないことがほとんどです。

 

性器や皮膚に症状がないことも

性器や皮膚に症状がないことも
性感染症というと、性器や皮膚の症状があるように思われがちですが、そうでないこともしばしばです。

最初の症状が口に現れることも

性感染症の最初の症状が、性器やその周辺部ではなく、お口に現れることもあります。
しかも、口や喉への感染ケースでは、喉の違和感や痛みという症状が多く、風邪と間違われることもしばしばです。

不安なら早めの検査を

性感染症かなと不安な症状があるなら、早めに検査を受けましょう。
ただし、検査で陽性か陰性かの判定ができる時期は、性感染症によって異なります。
例えば、淋病は感染直後から検査で判定できますし、クラミジアもしかりです。
ですが、梅毒やHIVは感染から1ヶ月くらい経過しないと正しい判定ができません。
ですから、疑われる性感染症によって、検査の時期が異なることを覚えておいてください。

 

ヘルペス・梅毒・淋菌に感染したかもと思ったら・・・

ヘルペス・梅毒・淋菌に感染したかもと思ったら・・・
もし、お口の中に治りにくい口内炎や白や赤の斑点状の模様が生じたら、どうしたらいいのでしょうか。

セックスを控える

もしかしたら性感染症かもしれませんので、セックスを控えるようにしましょう。

医療機関を受診する

おすすめの診療科は、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、皮膚科です。
お口の中に現れる性感染症の症状は、それだけを診ると他の病気と間違えてしまうことも珍しくありません。その傾向が特に強い梅毒の場合、「偽装の達人」とあだ名されるほどで、口内炎がなかなか治らないので採血してみたら実は梅毒だったということもあります。
ですから、医師や歯科医師からの問診には恥ずかしがらずにしっかりと答えるようにしてください。

 

ヘルペス・梅毒・淋菌の治療法

ヘルペスや梅毒・淋菌に感染した場合、どのような治療が行われるのでしょうか。

ヘルペス

ヘルペスウイルスには、アシクロビル・ファムシクロビル・バラシクロビルなどの抗ヘルペスウイルス薬が開発されていますので、この薬を使った治療が行われます。
基本的には、抗ヘルペスウイルス薬の内服薬(商品名ゾビラックス錠やバルトレックス錠など)が処方されます。ゾビラックスなら1日5回(1回200[mg])、バルトレックスなら1日2回(1回500[mg])を5〜10日間投与します。
なお、重症のケースでは、抗ヘルペスウイルス薬の点滴が行われます。
唇に生じたヘルペスに対しては、商品名アラセナ軟膏やゾビラックス軟膏などの外用剤が処方されます。

梅毒

梅毒には、ペニシリン系の抗菌薬がよく効きます。そこで、アモキシシリン(商品名パセトシンやサワシリンなど)という抗菌薬を1日3回(1回500[mg])4週間投与します。
もし、ペニシリン系の抗菌薬にアレルギーがある場合は、ミノサイクリン(商品名ミノマイシンなど)を1日2回(1回100[mg])4週間投与します。

淋菌

淋菌の治療法は、淋菌の感染が生じた部位によって異なります。
今回は、お口の性感染症がテーマなので、喉に生じた淋菌感染症の治療法を紹介します。
この場合は、セフェム系の抗菌薬の点滴が行われます。
セフトリアキソン(商品名ロセフィン)を1回(1.0[g])点滴します。
もし、セフェム系抗菌薬にアレルギーがある場合は、ニューキノロン系やテトラサイクリン系などのタイプの異なる抗菌薬が用いられます。
淋菌は、近年耐性化が問題となっており、抗菌薬が効かない菌種が増えてきています。

 

お口の性感染症の予防法

お口の性感染症は、どのようにすれば予防できるのでしょうか。

コンドームを使う

オーラルセックスだけする場合も含め、コンドームが予防に効果的です。ですが、100%予防できるわけではありません。

不特定多数としない

不特定多数とオーラルセックスを含め、セックスしないこと、つまり特定のパートナーとだけセックスするようにしましょう。

 

まとめ

今回は、お口の中に現れる性感染症の症状やその対策について解説しました。
特に覚えておいていただきたいのが、
①最初の症状が性器やその周辺ではなく、お口に現れることがある
②お口の症状は、口内炎や風邪と間違われることもある
③予防のために特定のパートナー以外の人とはセックスを控える
ということです。
今回の記事を参考にして、性感染症の正しい知識を身につけて、健康なセックスライフを送るようにしてください。少しでも不安な時は、早めに医療機関を受診して検査を受けるようにしましょう。

この記事の作者

橋詰 和英【歯科医】
橋詰 和英【歯科医】
市中病院の口腔外科で口腔外科部長をしています。親知らずの抜歯からお口の出来物、顎の痛み、口臭、神経痛など様々な病気の治療にあたっています。オヤジの歯・口腔の悩みを解決するためYAZIUPの執筆&監修を行う。
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