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市民ランナーだからこそ必要な筋トレがこれだ!

  • 2019/07/11
  • ライフスタイル・娯楽
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  • 角谷 剛【スポーツトレーナー】
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市民ランナーの場合は心肺能力より筋力を重視するべき
つい最近になるまで、長距離ランナーの多くは筋トレを積極的には行わなかった。走る筋肉は走ることによって身につくと考える指導者は多かったし(今でも多いかもしれない)、筋トレにはランニング・パフォーマンスを構成する心肺能力 ― 最大酸素摂取量(VO2Max)、乳酸性作業閾値(LT)、ランニング・エコノミー ― などを高める効果もないと思われていたからに他ならない。

そのため、あまたあるランニングの指南書でも、筋トレはあくまで補助的な扱いで、せいぜいスクワットや腹筋運動をやりなさい、くらいの記述で間に合わせているものが多い。

一方で、筋トレが無酸素運動能力を高めることは様々な研究で明らかになってきた。フルマラソンの世界記録が2時間に迫ろうとするなど、年々長距離レースの高速化が進むにつれて、無酸素運動能力の重要性が高まり、長距離ランナー達も筋トレを取り入れる動きが始まっている。

ここまではランニングのパフォーマンスを追求する専門ランナーたちの話。ところが、市民ランナーだからこそ筋トレが必要になる理由は別にもある。

それは市民ランナーの場合は心肺能力より筋力を重視するべきだということだ。

理由は一度でもマラソンを走ったことがある人なら分かるだろう。最初から最後まで同じペースで42キロを走り切れる人はめったにいない。大抵の人はどこかの時点で極端にペースダウンするか、歩いてしまう。その原因は42キロを走り切る脚力がないためであって、心肺能力の不足ではない。たとえ呼吸がゼーゼーハーハーと苦しくなっても、とぼとぼ歩いているうちに心拍数は落ち着いてくる。だけど、筋肉痛で重くなった脚がレース中に戻ることはない。

だからこそ、市民ランナーは脚力をつけることをまずトレーニングの主な目的に考えるべきなのだ。

 

筋トレの種類

筋トレにも様々な種類があるけど、最も一般的かつシンプルなのは、バーベルに重量負荷をかけて持ち上げるトレーニング(リフティング)だ。リフティングはさらに主な2つの形態に大別することができる。

一つはスクワット、デッドリフト、ベンチプレスを行う「パワー・リフティング」、もう一つはスナッチ及びクリーン&ジャークを行う「ウェイト・リフティング」だ。

どちらもバーベルを持ち上げるトレーニングなので、この両者はよく混同されるが、実際はそれぞれに合った目的とやり方がある。

「パワー・リフティング」では比較的ゆっくりとした動作で、筋肥大を目指す。「ウェイト・リフティング」では可能な限り素早い動作で、瞬発力や爆発的なパワーを高める。
伝統的に「ウェイト・リフティング」を取り入れるのは短距離ランナーに限られ、長距離ランナーには瞬発力は無用のものとして「パワー・リフティング」のみを行うことが多かったが、筆者は後述する理由で、市民ランナーはそのどちらも時期を分けて行うことを勧めたい。

比較的ゆっくりとした動作で、筋肥大を目指す
「パワー・リフティング」も「ウェイト・リフティング」も動作のやり方を解説し始めると1冊の本になってしまうので、ここではごく簡単に紹介したい。

 

パワー・リフティング

スクワットはバーベルをラックから外し、体の前面あるいは後面にバーベルを維持して、体を屈伸させる。

パワー・リフティング
デッドリフトはバーベルを床から両膝の上まで持ち上げる。

ベンチプレスは仰向けの状態からバーベルをラックから外し、胸の位置まで下し、また持ち上げる。
ベンチプレスは仰向けの状態からバーベルをラックから外し、胸の位置まで下し、また持ち上げる。

スクワットはバーベルをラックから外し、体の前面あるいは後面にバーベルを維持して、体を屈伸させる。

 

ウェイト・リフティング

スナッチは床に置かれたバーベルを一挙に頭上に持ち上げる。

スナッチは床に置かれたバーベルを一挙に頭上に持ち上げる。
クリーン&ジャークは床に置かれたバーベルを肩まで持ち上げ(クリーン)、一呼吸置いてからバーベルを肩から頭上へと持ち上げる(ジャーク)。

ウェイト・リフティングはフォームを習得するまでに少し時間がかかる
競技としてのパワー・リフティングとウェイト・リフティングはどちらも1回だけ挙げることが出来る最大の重量を競うわけだけど、日々のトレーニングでは比較的軽めの重量で複数回の動作を行うことが普通だ。

特にウェイト・リフティングはフォームを習得するまでに少し時間がかかる。間違ったフォームで行うとケガの原因になりかねないし、充分なトレーニング効果も得られない。出来れば専門家の指導を受けることが一番望ましいのだが、自習する場合は軽すぎるくらいの重量で始めてほしい。

 

心肺能力も高めるウェイト・リフティング

ウェイト・リフティング(スナッチ及びクリーン&ジャーク)はパワー・リフティング(スクワット、デッドリフト、ベンチプレス)より長距離走のパフォーマンスを向上させる効果があるか? 残念ながら、この命題に明確な回答はない。

広義の筋トレがランニングに効果があること自体は様々な研究調査で証明されているが、それらの多くが筋トレのサンプル例として自重トレーニングやパワー・リフティングの動作を取り上げているからだ。

だが、ウェイト・リフティングがパワー、スピード、筋持久力、瞬発力、全身のコーディネーション、骨密度、など様々な身体能力を向上させることには疑いの余地はない。さらに、クロスフィットの創始者グラスマン氏は「ウェイト・リフティングこそは心肺能力において最も重要な要素である最大酸素摂取量を高める唯一の筋トレだ」と語っている。

 

見逃せない体幹への効果

ランナーにとって、長時間走ってもフォームと姿勢を維持するために体幹の筋肉もまた重要だ。体幹トレーニングと言えば、プランクや腹筋起こしなどの自重トレーニングがよく行われて、それらは有効なトレーニングなのだけど、長い時間や回数が必要になるのが難点だ。

パワー・リフティングやウェイト・リフティングではバーベルを頭上や肩まで持ち上げ、さらにその重量を支えてバランスを取る。そのことによって、腕、肩、下半身を鍛えると同時に、体幹も短時間で効果的に鍛えることが出来る。

その点、同じ筋トレでもマシンに座って行うものは、体幹への効果は乏しい。
同じ筋トレでもマシンに座って行うものは、体幹への効果は乏しい

 

オフシーズン前期にパワー・リフティング、後期にウェイト・リフティングを

ランナーにとって筋トレはあくまで走るための基礎体力作りが目的だ。レースの直前になってから筋トレを始めても間に合わないし、効果も期待できない。レース前の走り込むべき時期には走ることに集中すべきで、筋トレは主にオフシーズンに取り組むのが賢明だろう。

特にオフシーズンの前半は筋持久力をつけることに集中する方が良い。走力に直接関係する下半身を鍛えるにはスクワットやデッドリフトなどのパワー・リフティングが有効だ。重量や回数などは人によって異なるが、基本的には長距離ランナーには10~20回ほど挙げられる低重量で高回数のメニュー(例:20回3セット)が適している。筋力がさほどない人は自重スクワットから始めるとよい。

オフシーズンも後半に入り、ある程度の筋力がついてきたことを前提に、筋トレの内容をパワー・リフティングからウェイト・リフティングへと移行していく。持久力に加えてスピードを高めるためだ。パワー・リフティング同様、長距離ランナーにはウェイト・リフティングであっても低重量高回数のトレーニングが基本になる。

 

筋トレの原則

筋トレで効果を得るためには、負荷を段階的に増やし続けることが重要な原則になる。単純化した例で言うと、10キロの重量を10回挙げることが出来たら、次回のトレーニングでは重量を重くする(10キロ→12キロ)か、回数を増やす(10回→12回)か、あるいはその両方を同時に行う。

ただし無理は禁物だ。あくまで正しいフォームで挙げることが出来る重量と回数で、徐々に負荷を上げていく。

その負荷を決める際に重要な指標になるのが、正しいフォームで1回バーベルを持ち上げることが出来る重量、最大挙上負荷重量(1RM)だ。出来れば頻繁に、2~3週間に1回程度の頻度で1RMを測定することが望ましいが、最低でもオフシーズンに入った最初の段階で測定しておこう。

 

トレーニングメニュー例

オフシーズン期間中は、以下のような筋トレとランを1日ごと交互に行うことをお勧めしたい。

オフシーズン前期(週3回)
1.スクワット20回3セット、1RMの30~50%
2.デッドリフト20回3セット、1RMの30~50%
3.スクワット5回5セット、1RMの50~80%

オフシーズン後期(週3回)
1.スナッチ、あるいはクリーン&ジャークのフォーム練習(30分程度)
2.スナッチを毎分5回行い、10分間繰り返す。1RMの30~50%
3.クリーン&ジャークを毎分3回行い、10分間繰り返す。1RMの30~50%

 

まとめ

市民ランナーはレース後半にスピードを極端に落とさないようにしたい。そのための筋力をつけるには筋トレが効果的だ。もちろん、伝統的な走り込みの必要性と効果を否定するものではない。

この記事の作者

角谷 剛【スポーツトレーナー】
角谷 剛【スポーツトレーナー】
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。 【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani
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