さっきトイレに行ったばかりなのに・・・。また尿意が!【内科医が悩み可決】

  • 2019/05/20
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  • 浅野 翔吾【内科医】
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尿意に
今回は30~40代の男性向けに頻尿に関して解説させていただきます。皆さんはこんな経験はありませんか?若いころと比べて尿意を感じて夜に目が覚めてしまうことが多くなったもしくはそうではないにしても必ず深夜もしくは早朝に最低1回はトイレにおきる。

しかも起きてしまうのが目覚まし時計が鳴る少し前であった時、ここでトイレに起きたらもう1回寝入る時間も確保ができない。しかし一方でトイレに行かなければ今度は尿意が気になって寝入ることができない。このような中途半端な悩みが早朝に生じしばらく布団の中でもぞもぞと悩んだ結果、その分の寝られるはずであった睡眠が削られてしまう。当然この頻度が高くなると慢性的な睡眠不足から仕事の効率にも悪影響を及ぼします。

周囲にも頼られリーダー的存在のいわゆる働き盛りの「オヤジ」世代の方からしたらこんなことに悩まされずにできれば朝まで十分に睡眠をとった状態で起きたいですよね。

またこのような生理現象に関する悩みは人には相談しにくいものでもあります。そんな中年世代の悩みに関して少しでもこの記事が理解に役立ち今後の参考になれば幸いです。

頻尿とは
頻尿とは一般的には尿が近いもしくは尿の回数が多い症状をいいます。具体的には朝起きてから就寝までの1日の排尿回数が8回以上の場合、もしくは夜就寝中に1回以上トイレに起きなければならない状態をいいます。もちろん尿の回数は人それぞれで違っていて個人差があります。

そのため日中の排尿の回数に関しては7回以下でも人や症状の経過によっては頻尿ととらえることもあります。そして調査によると夜間頻尿に関しては日本において40歳以上の男女のうち、実に4500万人の人が夜間に1回以上排尿のために起きる頻尿の症状を有していてそれは加齢と共に頻度が高くなってくると言われています。ちょうど40歳前後のオヤジ世代の男性もこの頻尿で困る年代に入ってきていることになります。そのため頻尿で日常生活に支障がでないようにするためにもある程度の知識と対応が必要なのです。

 

頻尿の原因

頻尿の原因

特にオヤジ世代に多い夜間の頻尿の原因は①多尿(単純に尿量が多いこと)、②膀胱容量の減少(膀胱内に溜めることができる尿の量が少なくなること)、③睡眠障害にあります。

 

①多尿(単純に尿量が多いこと)

多尿の原因としては特に昼夜問わずに尿量が多くて困っている場合は単純に水分を取り過ぎていることが挙げられ、その中でも特に糖尿病が原因になっているものがあります。糖尿病による頻尿では人間は血糖値高い状態が続くと喉が渇くようになるため必然的にたくさんの水分を摂取するようになります。その結果頻尿となるパターンです。しかし糖尿病を指摘されていて喉が渇く症状があるような場合は早急に血糖のコントロールが必要なケースが多いです。早めに医療機関への受診をおすすめします。

また糖尿病などではなくただ単純に水分摂取量が多いことはそれほど悪いことではありません。しかし水分とは言ってもアルコールに関しては別です。皆さんは夜に晩酌をする習慣がありますか?アルコールを飲んだ後にやたらとトイレが近くなることは身に覚えのある方も多いかと思います。これは体内でアルコールが分解されると最終的には水や二酸化炭素として尿や汗、呼気(吐き出す息)になって排泄されていきます。これからわかることはアルコールを飲めば飲むほど体内に水が生成された結果、多尿になるのです。これは身体全体としてみればお酒を飲むことでその分解のために水分が失われることを意味しており特にビールに関しては1Lのビールを飲むことで体内からは実に1.1Lもの水が失われているとも言われています。そのためアルコールの摂取は頻尿の原因にもなりますがそれに加えてさらに脱水の原因にもなってしまいます。

これに加えて日中ではなく夜に尿量が多くなる場合には高血圧や心不全、腎臓機能の低下、睡眠時無呼吸症候群などが原因となっていることがあります。このため健康診断などで生活習慣病特に糖尿病や高血圧症などを指摘されている方はこれらが関連した頻尿である可能性がありますので注意が必要です。

 

②膀胱容量の減少

膀胱容量の減少の原因としては過活動膀胱や前立腺炎、膀胱炎などがあります。これが起こると膀胱の壁が過敏な状態になるため尿が少量膀胱に溜まっただけでも尿意を催すようになります。尿は腎臓で休むことなく作り続けられています。そして尿管との連絡によって膀胱の入り口に絶えずつくられた尿が流れ込んでいきます。膀胱は非常に伸縮性のある袋のような構造をしていて一般的に300~500ml程度の尿をためることができます。

尿が溜まって膀胱内の圧が高まり膀胱の壁が張り詰めてくるとそれが刺激となって神経をつたって脳へ情報が送られます。一方膀胱の出口である尿道は膀胱が尿をためている間は尿がもれないようにしっかりと尿道をしめています。脳から排尿の指令がくるとこれらが緩んで膀胱から尿が排泄されていく仕組みです。しかし過活動膀胱は膀胱の壁が過敏になっていてまだ尿量があまり溜まっていないのにも関わらず脳へ尿意を催していると刺激を送ってしまう状態になります。そのためトイレにいってもあまり尿量が多くないのに何回も尿意を催してトイレにいくようになるわけです。

過活動膀胱は40歳以上の8人に1人がその症状をもっているとされていて実はわれわれオヤジ世代の深刻な悩みになることもあるのです。さらに前立腺炎や膀胱炎などの膀胱の近くで起こる感染でも似たような症状が出現することがあるので注意が必要です。またここでも関連してくるのは糖尿病です。糖尿病で血糖値が高い状態が続くと排尿をコントロールする神経が障害される神経因性膀胱を引き起こします。神経因性膀胱とは膀胱をコントールする神経機能の脱落で尿がしっかりためられなかったり、排尿がうまくできなかったり自分の意思通りに膀胱が機能しない状態を言います。そしてこれはゆくゆくは失禁や残尿感の原因にもなります。

 

③睡眠障害

睡眠障害が直接の頻尿の原因になることがあります。実は睡眠障害は国民の5人に1人 が抱えているとされ、40歳前後のオヤジ世代によく共通する悩みの一つなのです。睡眠障害にはいくつかのタイプがあり大まかには入眠困難(布団に入ったもののなかなか寝入ることができない。)、中途覚醒及び早朝覚醒(寝入ることはできるが朝まで睡眠を維持することができない。)があります。

例えば毎晩6時間程度1回も起きることなく睡眠をとる方の場合、日中に同様にして6時間もトイレに行かないことはよっぽどの抜けられない切迫した状況の仕事などでない限りはないと思います。きっとその前に尿意を感じてトイレにいくことが多いでしょう。健康な成人の場合200ml程度の尿が膀胱内に溜まってくると尿意を感じ始めます。つまり人は普通2~3時間くらいの間隔で尿意を感じるためなかなか寝入ることができない入眠困難がメインの睡眠障害では布団の中で2時間程度が経過するうちに膀胱内に尿がたまり、今度は尿意が気になって眠ることができなくなるのです。また中年世代に最も多いのは中途覚醒及び早朝覚醒です。

40代以上の実に55%が程度の差こそあれ、この早朝覚醒に悩んでいるとも言われています。若いころは朝まで1回も目を覚ますことなくぐっすりと寝られたのに年を経て自分がオヤジになるにつれてなぜか早朝に目が覚めてしまいます。さらに早い場合にはまだ丑三つ時ともいえる夜中に目が覚めてしまいます。こんな日が多くなると「あともうちょっと寝たかったのに、、、、これじゃ昼間の仕事中に眠気が残ってしまう。」と悔しさにも似たような感覚を覚える方がおられるのではないでしょうか。

そして目が覚めてしまうと膀胱内にはある程度の尿が溜まっていることから尿意を感じて、仕方なくトイレへいく、一度起きてしまうと睡眠時間はまだ足りないのに再び眠れなくなってしまうなどの悪循環が生まれやすくなります。もちろん状況により程度に差こそありますが眠気で日中の仕事や生活に支障がでるような場合は近隣内科もしくは心療内科などを速やかに受診された方が良いでしょう。夜間のトイレで目が覚めて睡眠が妨げられていると思ったら実は睡眠障害の方が原因だったといいうことも当然あり得ます。

 

まとめ

頻尿がつらい
いかがでしょうたでしょうか?今回は頻尿に関して30~40代のオヤジ世代の方向けに解説させていただきました。実は40歳前後という年齢は加齢の変化の影響が少しずつ目立ち始め、その最初の身体的な症状が頻尿ともいえます。頻尿に対する対策の中で最も注意しなければならないことはやはり生活習慣病の存在の有無と思われます。

特に30~40代のオヤジ世代の方々は身体の代謝も若いころに比べて低下が顕著になる時期であり、この年代くらいから生活習慣病に関連の深い肥満に悩むことも珍しくありません。頻尿はその生活習慣病をとらえるための身体に起こっている変化の重要なサインであり、もしこれに悩まされている方がおられるならばその原因をはっきりさせるためにも速やかに医療機関への受診をおすすめします。

この記事の作者

浅野 翔吾【内科医】
浅野 翔吾【内科医】
1978年生まれ。中部地方のとある病院で内科医として勤務医をしつつ、ライター活動をしている。趣味はサイクリング、ランニング。2児の父、子育てをきっかけに医師の働き方に関して真剣に考えるようになる。2017年にそれまでの不眠不休の労働を改め、地方の急性期病院を退職し現在に至る。
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