小室哲也さんの引退会見で話題になった高次脳機能障害ってどんな病気?

  • 2018/02/09
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小室さんの引退会見で明かされた妻・KEIKOさんの病状

小室さんの引退会見で明かされた妻・KEIKOさんの病状
1月19日、音楽プロデューサーの小室哲也さんが芸能活動からの引退を表明しました。このきっかけは「週刊文春」が報じた看護師との不倫疑惑で、小室さんは不倫の事実を否定しましたが、「騒動のけじめをつける」として引退を決意したそうです。
この会見で注目を集めたのが、ヴォーカリストで妻のKEIKOさんの現状です。KEIKOさんは2011年にくも膜下出血を発症し、身体的な後遺症は残らなかったものの、脳に「高次脳機能障害」が残り、歌うことがなくなったり会話が続かなくなったりしているとのこと。このようなKEIKOさんの病状を小室さんは「女性から女の子」に変わったようだと表現しました。
小室さんの会見で高次脳機能障害を初めて知ったという人も少なくありません。しかしこの病気は日本人の三大死因である悪性新生物(ガン)・心疾患・脳血管疾患のうち、脳血管疾患と深くかかわっています。誰しも無関係とはいえないので、よく理解しておいたほうがよいでしょう。

 

高次脳機能障害は脳血管疾患によって発症することがほとんど

高次脳機能障害は脳血管疾患によって発症することがほとんど
高次脳機能障害は多くの場合、脳血管疾患の後遺症として現れます。
脳血管疾患とは脳の血管になんらかの異常が起きて脳の血流が滞る病気で、この大部分を占めるのが脳卒中。脳卒中はさらに出血性と虚血性に分かれます。出血性には血管が破れる脳出血と動脈瘤が破裂するくも膜下出血、虚血性には血管が収縮したり詰まったりする脳梗塞があります。
脳卒中の原因には高血圧がよく上げられますが、KEIKOさんも発症したくも膜下出血は生活習慣に関係なく家系で発症することも多くあります。これは脳血管の配置が遺伝で似るため、動脈瘤ができやすいポイントも似ることが理由です。近親にくも膜下出血患者がいる人は、血圧に不安がなくても脳ドックを受けてみるとよいでしょう。
脳を構成している神経細胞は記憶を司る海馬を除くと自然には細胞分裂しないため、一度死滅した部分は機能を失ったままになります。こうして部分的に脳の機能が失われると、高次脳機能障害が発症します。

 

高次脳機能障害の主な症状

高次脳機能障害の主な症状
「高次脳機能」とは、高等な脳のはたらき、つまり人間らしい脳のはたらきを指します。この機能が失われる病気が高次脳機能障害です。
具体的には新しいことが覚えられなくなる記憶障害、集中力がなくなる注意障害、順序立てた行動が取れなくなる遂行機能障害、言葉が認識できなくなる失語症などのほか、ささいなことで怒りやすくなったり、逆に感情の起伏がなく無気力になったりします。
もちろん、このような症状がすべて現れるわけではありません。脳は部分ごとに担当する役割が違うので、損傷のある部分に応じた機能が失われます。たとえば言語機能は左側の大脳である左脳が担当しているので、失語症は左脳に損傷のある人にだけ現れます。高次脳機能障害は患者ごとにまったく違う症状になるといえるでしょう。
また、高次脳機能障害は外見からわからないので周囲に理解されにくく、患者の社会復帰に支障がある点も大きな問題とされています。

 

高次脳機能障害は治らない病気なのか?

高次脳機能障害は治らない病気なのか?
一度死滅した神経細胞は元に戻らないのなら、高次脳機能障害はまったく回復しないのでしょうか。
そんなことはありません。完全に元どおりは難しいですが、早い段階から適切なリハビリテーションを受けることで日常生活に問題ない程度までは回復が見込めます。これは、訓練の繰り返しによって失われた機能の回路が新たに構成されるためと考えられています。
アメリカの脳科学者ジル・ボルト・テイラー博士は37歳のとき、左脳に脳出血を発症して失語症になりました。しかし8年にわたる訓練を経て回復し、仕事に復帰しています。時間と根気が必要ですが、高次脳機能障害はポジティブに向き合うことで良化することが多いのです。
また、現在は様々な細胞に分化できる間葉系幹細胞を利用した再生医療の研究が盛んになっており、脳の神経細胞を再生する薬の開発も急ピッチで進んでいます。この薬が実用化されれば、多くの高次脳機能障害患者が元の生活を取り戻せるでしょう。

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