秋冬物のオーダーなら今!このタイミングで上手なオーダーの仕方を再確認しておきましょう。 – その2
- 2018/09/28
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せっかく暑い夏を過ぎたのだから、気持ちの良い秋晴れを満喫したいのに。秋雨だし台風もまだ来るしでなかなかスッキリとした秋の空に出会えないのがもどかしい気分です。秋晴れの中で着て楽しみたい服たちが私のクローゼットの中で大渋滞を起こしてしまっていまるので、早いところこの渋滞を解消させたいところです。とはいえ一般的には今から秋冬物を揃えていくのが普通の感覚かもしれません。ということで、今回も前回だけで収まりきらなかったオーダーを楽しむためのコツをお届けしましょう。
ちなみに前回の記事はこちらからご覧いただけます。
「秋冬物のオーダーなら今!このタイミングで上手なオーダーの仕方を再確認しておきましょう。 – その1」
テーラーの格好にも注目したい
テーラーが客の格好から好みを察する様に、客である我々も、テーラーの格好から好みを判断する事が出来ます。クラシックなのか、前衛的なのか。はたまたチャラいお兄ちゃん系なのか、マフィアのドン系なのか。もしくは単に、そこら辺にいる中年のサラリーマン風なんてテーラーだって存在します。「そんな事ないでしょ!」と思うかもしれませんが、テーラーへ生地を売る会社にいて、様々なテーラーを見てきた私が実際に出会ってきたのですから、本当ですし、むしろもっと多種多様なキャラクターが存在します。
それらテーラーの格好やキャラクターから、自分の理想とする格好に近いかどうかを判断するというのは、とても大切な事です。クラシックなイギリス紳士を目指していたのに、入ったお店がイタリアのスゴ悪オヤジ系が営むテーラーだったら…
もちろんプロならイギリス紳士の格好が出来るでしょうが、少なくとも得意分野だという可能性は低いですから、それなら最初からイギリス紳士風のテーラーに行く方が良いですよね。別にナントカ系というのが分かる必要は無いんですよ。「あ、これ自分は好きな感じじゃ無いな」と思ったら、それは違うという事です。
採寸される時の姿勢は「胸を張らない」
採寸される時は、自然体で立つ様にしましょう。胸を張ったり、思い切り背筋を伸ばしたりお腹を引っ込めていると、その身体に合った服が出来上がります。その結果、常に胸を張り、背筋を伸ばしてお腹を引っ込めていないと着られない服が出来上がります。これは日本のテーラーではあまりお勧めしていませんから、そんな格好をしていると「もう少しいつものリラックスした姿勢にしてみて下さい」なんて言われます。
ちなみに、イギリスのテーラーなんかだと、リラックスした姿勢で立っていると「もっと背筋を張伸ばしなさい!」なんて言われるところもあるそうで、これは文化の違いですね。
バンチブックをチェックしてみる
バンチブックという、生地の見本帳があります。単にバンチと呼んだりするもので、ハードカバーで、中に色んな種類の生地が何枚も挟まっているものです。このバンチは、テーラーが生地屋から買ったり、場合によっては借りています。つまり、ちゃんと生地の用意をしようとしていないテーラーにはこのバンチが揃っていないのです。特にこのバンチはシーズン毎に新しくなりますから、最新のバンチが多く揃っているテーラーほど、用意も万全だし、ちゃんとお客がいてそれなりに人気があるという事になります。私がいた生地の会社は、イタリアの高級生地を扱っていたのですが、そこは限りある数のバンチを貸し出していました。数に限りがあるのですから、貸し出す先はもちろん「売れているテーラー」です。このバンチがあるテーラーは高級生地が売れているテーラーだろうという判断がついたものです。
簡単に見分けようとするなら、最新シーズンのものが2〜3社分あれば、それなりに売れていそうだと判断できると思います。
選択肢の提示だけでなく、提案をしてくれるか?
最近は安くスーツを作ってくれるテーラーも増えました。でも、そういうテーラーで多いのは「選択肢はくれるけど、提案はしてくれない」というスタイル。選ぶ箇所も、選択肢も沢山あるのに「で、この中のどれを選びます?」しか言わないなんてのは、避けたいテーラーです。前述の通り、オーダーはテーラーと自分との共作ですから、提案する事を放棄しているところはテーラーとさえ呼びたく無いわけです。ただ安いところはコスト意識が強く働く分、出来上がった後のクレームをかなり嫌がります。ですから「だって、それを選んだのはお客様ですよね?」と言える状況を作りたがる傾向にあります。こんなところで良い服が出来る訳がありませんよね。
「一度ウチの店に入ったからには、格好悪いままで店を出すわけにはいかない」という気概のあるテーラーで、格好良くなるための提案を受けながら気持ち良くコラボレーションできるテーラーを見つけたいものです。
じっくりヒアリングをしてくれるか?
テーラーの技術において直立不動の姿勢に服を合わせて作るというのは基本中の基本です。出来て当たり前の世界です。ベテランであれば実際にメジャーを身体に当てる行為さえ不要で、見れば寸法が分かるものです(とは言え、見ただけで寸法を決めるとお客が不安がるので、形としては必ずメジャーを身体に当てます)。
問題はそこから。日常やビジネスの場で活動しても無理なく、格好良いままで着続けていられるか?というのが問題なのです。ですから、採寸の時には仕事や日常で行う事は何か?さらに運動をしているかなどなど、様々なヒアリングを行うものです。これらのヒアリングから、
生地のストックをすぐに確認するか?
バンチで選んだ生地は、どこから用意するか?といえば、そのテーラーではなく、そこから先の商社やメーカーです。テーラーはバンチだけを店頭で持っておいて、実際の生地の在庫は商社やメーカーにある訳です。そういった商社やメーカーからは定期的に、在庫情報が送られてきて、そこでどの生地が無くなった、などをチェックしているんですね。
でも時には、定期情報が送られて来た時にはあった在庫が、オーダーを受ける時には無かったなんて事もあります。ですから、テーラーはお客さまに生地を選んでもらったら、すぐさま商社なりメーカーに生地の在庫があるかを確認する、というのが大切。でないと、お客さまが帰った後に生地が無いことが判明したら、また別の生地を選ぶために来店してもらわなければ、なんて事になってしまいますから。土日や祝日は商社やメーカーが休みでその場で確認出来ない事が多いのですが、そんな時でも第二候補を聞いておくとか、それなりの対応をしておくのがテーラーの仕事の1つです。私の経験上、売れていないテーラーほどこの作業を忘れてしまいがち。また、実際にオーダーして店を出た後に生地が無かったなんて連絡をもらうと面倒ですから、オーダーする側の我々もとりあえず気を付けておきたいポイントです。
なにより、テーラーと相性が良いか?
ここが一番大切と言って良いでしょう。オーダーに慣れるまでは勝手がわからない分、結局は細かいところで「あ、これをやっておけば良かったな」なんて思うこともあるものです。テーラーだって万能ではないですから、こちらのクセや性格、好みなんて言う部分は、やはり付き合いが長くなっていくほどちゃんと把握してくれる様になりますから、最初のうちはお互い探り合いの部分が少なくありません。この時期を超えてお互い良い関係を築ける様になるにはやはり、人間対人間として相性が良いに越したことはありません。自分を分かってくれそうだし、自分もテーラーの好きなものが好きだな、など、好意的な印象を持てる相手(テーラー)を選びましょう。有名そうだからという理由で、相性の合わないテーラー相手に我慢してオーダーする必要なんてないのですから。自分らしい服を自分らしく楽しみたいなら、やはりそういったブランド思考みたいなものは不要ですよね。ぜひ、自分が自然体で気持ち良く楽しめそうな相手を探した方が良いに決まっています。
さて、今回はオーダーの最中でも判断できる様な事も含め書いていきました。今回で収めようと思ったら、なんだかちょっと長くなってしまいましたが、これから初のオーダーに挑戦しようと思っている方も、いますでにオーダーを楽しんでいる方も、参考にしてみていただければと思います。秋のファッションを大いに楽しみましょうね。