視聴率はスーパーボールを凌ぐ!イスラムの昼メロ・ムサルサルの本気度がスゴすぎる
- 2018/07/17
- ビジネス
- 319view
- 国際情勢
- 国際情勢
- 断食
- 昼メロ
毎年初夏になると、イスラム教徒は1か月間ラマダンという断食を行う。
実はこの時期、イスラム圏のメッカ・中央アジアでスタートするドラマは、民放・BS共々、ハンパなく力が入っている。
この一か月の視聴率が、スーパーボールと同じぐらいになると言われれば、そりゃ局も張り切らざるを得ない。
そんなイスラムの昼メロ・ムサルサルって、何がどんなにスゴいのだろう?
ラマダンって?
ムサルサルについて語る前に、おさらいしたいのがラマダンについてだ。
断食月とはいっても、一か月丸々飲まず食わずではない。
夜明けから日没まで、何も食べないだけだ。
ラマダンは、イスラム太陰暦(ヒジュラ歴)の9月一か月間行われる
このヒジュラ歴というのがクセモノで、閏月を設けズレを修正しないので、一年平均354日になってしまう。
太陽暦とのズレは、1年事に10~11日になり、33年ごとに季節が一周してしまうのだ。
その為、長生きしているイスラム教徒は同じ季節にラマダンを経験すると言われている。
ラマダンの本来の目的は、人間としての慎み深い行いを振り返る事なので、この期間中、喫煙、性行為、喧嘩、暴言などは禁じられており、他教徒や無宗教者であっても、イスラム教徒の前で、これらの行いをする事は、無礼であると言われている。
敬虔で厳格な教徒は日中、唾も飲み込まないというが、そんな人はごくまれ。
以下に該当する人はラマダンから除外される。
1:10歳以下の子供
2:妊婦
3:病人
日没から夜明けにかけて、一日分の食事を摂るので、この時期の食料品店の売り上げは逆に上がると言う。
お礼の時間にはお祈りして、水分補給し、昼間はグータラして、夜は食べまくって一か月を過ごすという人もいる。
そんな暇な時間に目をつけたのが、テレビ局だったのだ。
ラマダンの昼メロ・ムサルサルって?
ムサルサルの中身は、お国柄をよく反映している。
政府の検閲が厳しいシリアでは、ドラマはおろか映画製作もままらない。
その為、ムサルサルの内容も深刻なものになりがちだ。
国外コンテンツの輸入が可能になったイラクでも、『おしん』や『キャプ翼』は『真面目に努力すれば報われる』と大うけしているが、『失楽園』は言語同断らしい。
旧英国領のヨルダンでは、シリアに比べれば検閲問題では寛容だが、湾岸地域でウケるドラマは、かつての遊牧民ベドウィン人を主人公にしたドラマだ。
ヨルダンの現在の人々が、GAPやユニクロを着ていても、ムサルサルではベドウィン人のドラマをやっている。
近年大きく内容が変わったムサルサルと言えば、レバノンではないだろうか。
レバノンは、5年ぐらい前までは仏統治時代を彷彿とさせる宮廷ドラマが多かった。
『ダウントンアビー』と『風と共に去りぬ』をあべこべに混ぜたドラマが、この時期に放映されていた。
現在もこの様なドラマは『いかにもレバノン昼メロ』として作られているが、シリア内戦から逃れてきたテレビ局スタッフが
レバノンで制作するドラマは全く違う。
実際のレバノンの政界汚職を追及した、レバノンバージョン・ザ・ホワイトハウスの様なドラマを展開している。
これから最も期待できるムサルサル制作放映国の一つだ。
では、既にバラエティ豊かなコンテンツを持っている国とは、どこだろうか。
王族の肝いりで、ドラマ作りをするエジプト
中央アジアのムサルサルで最も予算がある国の一つに挙げられるのがエジプトである。
予算があるだけでなく、他国への文化の寛容度も、他の中央アジア諸国やアラブ諸国にくらべ高い。
『冬のソナタ』をこの地域で、いち早く国民に向け配信し、ヒットを飛ばした国である。
得にサウジ王族がメインスポンサーとなっている衛星放送MBCの番組バラエティは目を見張るものがある。
昨年作られたムサルサルは、ISと戦う女性たちのサスペンスドラマと同時に『パクリラブコメ』も登場。
元々ラマダンの時期に、ラブコメを多く制作しているエジプトだが、これはどうなのか?という代物だった。
昨年制作されたラブコメの題名は『ラ・ラ・ランド』。
本家かと思いきや『全くの別物』。
ドラマの内容はアダム・サンドラー主演のB級コメディに、マサラ映画のノリをミックスした、とんでもないラブコメだった。
観たいような、観たくないような、冗談半分のドラマが大真面目に作られているのである。
そんなラマダンだが、この時期の中央アジア諸国、アラブ諸国は、一番危険なのだとか。
それは何故か。
ラマダンの時期が一番危険な理由
ラマダンの時期は、国民がドラマに夢中だから平和なんだろうなぁと思うのは大いなる勘違いなんだとか。
ラマダンはイスラム五行の一つで、この時期、他のイスラム五行の一つ・喜捨(サガード)も行われる。
喜捨は寄付の事で、生活に必要な分を除き、財産の2.5%を寄付するのだ。
ラマダンの時期に寄付すると功徳が高くなると信じられており、言ってしまえば過激派にお金が集まる可能性があるのもこの時期である。
その為、過激派はムサルサルは観ていないというのだ。
中央アジアやアラブ諸国の人にとって、ムサルサルは『これだけしかない娯楽』の一つであり、観光客向けでない事はたしかなのだろう。