トレイルランの魅力とメリット - ロードだけではなく、山を走る人が増えているのはなぜか

  • 2019/07/31
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  • 角谷 剛【スポーツトレーナー】
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トレイルランの魅力とメリット

トレイルランの魅力とメリット
舗装された道路ではなく、山間部の登山路や未舗装の林道を走るのがトレイルランだ。1人で走ってもいいし、レースに出るのもよい。長い歴史があるロードの長距離走(マラソンの起源は紀元前450年の「マラトンの戦い」にまで遡る)と比べると、比較的新しいスポーツだ。国内外の有名なトレイルランのレースの殆どが2000年以降に始まっているし、その中でも最も歴史と権威があるとされるウェスタンステイツ・エンデュランスラン(米国)ですら1973年創設だ。

このトレイルランの人気が高まっている。レースの数は増えているし、山道を走る人の姿をよく見かけるようになった。理由は様々だ。登山の延長で、自然の中を走るのは気持ちが良いからという人もいる。山道を走ることで脚力を強化したいとか、不安定な足場を走ることでバランス感覚を養う、なんて真面目なランナーもいる。誰にも邪魔されずに自分だけの時間を持ちたいという人もいるだろう。そのどれが動機であっても構わないと思う。なぜなら、それらはすべてトレイルランで本当に起きることだからだ。

 

トレイルランを始めるには

トレイルランを始めるには
トレイルランに特別な装備は必要ない。トレイルラン専用のシューズを履いた方が走りやすいけど、普通のランニングシューズでも充分に用は足りる。

街中と違って自動販売機もコンビニもないから、ほとんどのトレイルランナーは念の為に水を持って走る。ハイドレーションパックと呼ばれる水を飲むチューブがついたバックパックが人気だ。必要なものと言えばそれぐらいだ。

無論、100キロ以上のウルトラマラソンとか24時間ランとかになれば、ヘッドランプや携帯食料品など登山同様の装備が必要になることは言うまでもないが、いきなりそんな長い距離に挑むのは無謀なので、まずは5キロ、10キロぐらいの距離から始めてみよう。

ロードのフルマラソンを完走したことはある人は、トレイルランでは50~80キロぐらいの距離に挑戦してみてもいい。筆者自身の経験から言えば、ロードでフルマラソンどころかハーフマラソンを完走できるくらいの走力がある人なら、トレイルで50キロは走れると思う。なぜなら、トレイルランでは最初から最後までずっと走り続けるわけではないからだ。登山と同じで、急な登り道は歩くことになるし、足元が不安定でスピードを上げることが出来ない場所もある。トレイルランでは、歩いたり休んだりする時間が必ずあるのだ。むろん時間はロードに比べてやたらかかるわけだけど、それを楽しむことが出来るメンタリティがむしろトレイルランナーには必要で、ランニングの能力はそれほど問題にはならない。走れなくなったら歩けばいいのだ。

技術的なことより、トレイルラン未経験のランナーにとっては、まずは走るコースを見つけることが最初の難関になるかもしれない。適当な距離で、険しすぎなくて、登山客の迷惑にならなくて、万が一の時には助けを呼ぶことが出来て、と考えれば考えるほど、条件にあう選択肢が狭まっていく。一番の近道はやはり経験者に連れて行ってもらうことだろう。そのような知人がいなければ、近場でレースにエントリーしてみるとよい。何回かトレイルランの経験を積んでいくうちに、自分の好みが分かってくるし、それに合ったコースを見つけるカンも養われていくはずだ。

 

自然の中で自分と向き合う

自然の中で自分と向き合う
1人で勝手に走るときもレースでも、周りに人が少なくなることが、トレイルランがロードと大きく異なる点だ。レースに参加したとしても、多くても千人以下、中には数十人しかエントリーしないレースもある。何万人ものランナーが集まる都市型マラソンとは規模も雰囲気も全然違う。

トレイルランでは、よ~いどんで一斉にスタートしても、すぐにランナーはまばらになる。あとはゴールするまでの間、山道を黙々と1人で走り続けることも珍しくない。給水ステーションには数人のボランティアしかいないし、その数もコース中に数か所ぐらいしかないのが普通だ。

だからボランティアや見物している人たちからの声援を励みにすることはできない。一緒に苦しむラン仲間も近くにはいないかもしれない。トレイルランでは、走るためのモチベーションは外部からやって来るものではないので、それを自分の中に持っていないと走り続けることはできない。

もっとも、人数が少ない分、かえってランナー同士の連帯感が強くなることもある。初対面同士のランナーが何時間も話しながら一緒に走って仲良くなるなどといったこともしばしば起きる。

それでもトレイルラン中に怪我やアクシデントが起きたら、まずは自分で何とかしなくてはいけない。走っている途中で足が攣ったり、足首をひねったりして、もう駄目だ、これ以上走れないよって状況になったとしても、メディカルスタッフもいないし、街中のようにバスもタクシーも地下鉄もない。携帯電話の電波が届かないこともある。その地点から一番近くに助けを呼べる人がいる場所までは、なんとか自力で歩いていくしかないのだ。

 

トレイルランは人生に通ずる?

トレイルランでは多くの坂を上り下りすることになる。だからコースの説明も距離だけではなく、標高差も併せて表示されることが多い。例えば、ポルトガルで行われた2019年トレイルラン世界選手権のコースが距離44キロ、累計標高差は2100メートル、という具合だ。

上り坂を走るのは当然苦しいけど、下を向いたり顔をしかめたりしていると、よけいに疲れて自分自身を苦しめることになる。そのような時こそ、あえて背中を伸ばして視線を上げ、周りの景色に目をむける余裕がほしい。終わらない坂はないって自分に言い聞かせるのもよいし、こんな坂走っているオレってすげえって自分を褒めたっていい。要は苦しさにとらわれないこと。

下り坂はもちろん楽なのだけども、速く走れる分、自分や周りの状態に目がいかなくなる。 流れに乗ることと調子に乗ることを隔てる壁はとても薄い。自分の走力以上のスピードで走っていると、知らず知らずのうちに脚に負担がかかり、その後で必ずつけが回ってくる。何かにつまずいて転ぶと、スピードが乗っている分、怪我も大きくなる。そのスピードは自分の力でないことを常に意識して、周囲への注意を怠らないことが重要。

別に人生の話ではなくって、単に山道を走るテクニックですけどね。

走ることが好きで、トレイルランをしたことがない人は、ぜひ一度試してほしい。新しい世界が見つかるかもしれない。

この記事の作者

角谷 剛【スポーツトレーナー】
角谷 剛【スポーツトレーナー】
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。 【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani
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