プロから見た市民ランナーの年間計画の立て方とは!?本番レースから逆算して〇単位で考えろ!?

  • 2019/06/28
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  • 角谷 剛【スポーツトレーナー】
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その時期に最も適したトレーニングを自ら取捨選択する必要
世の中に市民ランナー向けのマラソン指南書は数えきれないほどあるけど、その多くはレースへの準備期間として3か月ぐらいのトレーニングメニューを紹介しているものが多い。それより短いと走力を上げるには不充分だし、それより長いとモチベーションを維持するのは難しいからだろう。大抵の人は3か月ぐらいなら頑張れるものだ。

○○マラソンを走ろうと思い立ったら、そのレース開催日から逆算して3か月は走り込みに充てることをお勧めしたい。その期間のトレーニング内容は専門書に委ねるとして、今回はその3か月を中心に据えた市民ランナーの年間計画について述べてみたい。

市民ランナーに年間計画なんて大げさなものは必要ないと考えているとしたら、それはむしろ逆だ。あなたがもし大学の陸上部や実業団で走る専門のランナーだったら、コーチや監督がトレーニング計画を立ててくれるけど、市民ランナーは全て自分で考えなくてはいけないからだ。それに学生やプロ、セミプロのランナーと違って、市民ランナーにはトレーニングに費やす時間と体力が無制限にあるわけではない。限られた時間を出来るだけ有効に使うには、その時期に最も適したトレーニングを自ら取捨選択する必要があるのだ。

 

1年を4つのシーズンに分ける

1年を4つのシーズンに分ける
スケジュールを逆算するには、まずは目標とするゴールを設定しなくてはいけない。市民マラソンレースの多くは冬の季節にかけて行われるから、ここでは仮に1月から3月を本番レースの時期とする。すると、レースまでの準備期間は10月から12月までの3か月間ということになる。とりあえずは自分の中で本番レースを決めてしまうことだ。できればその前の3か月間は仕事などが忙しくない時期を選ぶのが望ましい。

だが、このレースまでの3か月間のことだけを考えたらいいというものでもない。1年のうち、残りの9か月を無計画に過ごせば、せっかく鍛えた体は元に戻ってしまうだろう。そうなると来年はまたゼロからの繰り返しになる。いや、確実に1年トシを取るわけだから、あるいは加齢によってマイナスになってしまうかもしれない。

とは言え、1年間ずっと走り込みを続けるのは市民ランナーには無理がある。モチベーションも続かないし、蓄積疲労によるケガの危険も大きくなる。そこで1年を通した長期計画が必要になってくる。

まずは1年を3か月ごとの4つのシーズンに分けよう。本番レースの日時によって時期は変わるわけだけど、それぞれのシーズンの目的そのものは変わらない。

1) オフシーズン(7月~9月)
基礎的な走力、体力を向上させることが目的の鍛錬期間。

2) プレシーズン(10月~12月)
レースに向けての本格的な準備期間。

3) インシーズン (1月~3月)
実際にレースを走る期間。複数のレースを走る場合、レース間のトレーニングの主な目的は調整になる。

4) ポストシーズン(4月~6月)
最後にレースを走り終えてからの休息期間。故障があれば治療に専念する。他のスポーツを楽しむのもよい。

 

暑い日本の夏にあったオフシーズンの過ごし方を考える

太字にしたオフシーズンが今回の主なテーマだ。プレシーズンから始まる本格的な走り込み中心のトレーニングにスムーズに入れるよう、この時期に長距離を走るために必要な基礎体力を出来るだけ上げておき、同時にランナーに相応しい体を作っておきたい。

さてそのオフシーズンであるが、季節的には梅雨の時期や高温多湿の夏とかなりの部分で重なることになる。そのような季節に戸外で走り込みをするのは体への負担が大きすぎる。走るのが何よりも好きだという人を止めはしないが、普通の人はなにもくそ暑いときに無理して走らなくても、やるべきことは他にいくらでもある。

暑い日本の夏にあったオフシーズンの過ごし方を考える
その意味で、オフシーズンの間は室内での筋トレや、可能であればプールで水泳などを取り入れることをお勧めしたい。固定自転車やトレッドミルを組み合わせてもよい。どのような方法を取るにしても、マラソンで求められる筋持久力と心肺能力をこの時期に底上げしておけば、プレシーズンの走り込みを高いレベルから始めることが出来る。

オフシーズンは時期的に色々なことを試行錯誤する余裕がある。新しいトレーニングを試して、自分に向かないと思ったら別の方法を考えてもよいのだ。同じことを繰り返して精神的に飽きてしまうことは避けたい。

但し、自分に甘えて楽なトレーニングを選択してはいけない。そもそも、オフシーズンとは1年のうち最もきついトレーニングをする鍛錬期間なのだ。「オフ」とは「イージー」のことではない。

食生活にもランナーとして最低限の自覚と節制が必要だ。暑い夏にビールを飲むなとは言わない。少なくとも筆者には無理だ。だが、マラソンは体重が軽い方が有利なスポーツであることも忘れてはいけない。勿論、プレシーズンに入れば、走り込みである程度の体重は自然に落ちる。だが、体重オーバーの状態では、そもそも走り込みの質と量のレベルを落とさざるを得なくなるのだ。それをカバーするのにプレシーズンの3か月では短すぎる。だから、オフシーズンの間に走れるだけの体に絞っておくべきなのだ。

市民マラソンは知的な大人のスポーツだ。誰からも強制されることなく、誰からも指導を受けない。だからこそ、自己マネージメント能力が何よりも重要になってくる。

 

プレシーズンは走り込み

一般的なコンディショニング理論では、プレシーズンの3か月間で、オフシーズンで培ってきた基礎体力をスポーツ特有の動作に移す。言うまでもなく、市民ランナーにとってスポーツ特有の動作とは、つまり長距離を走ることだ。

一口に走ると言っても、ロング、インターバル、テンポ、リピート、プログレッション、リカバリーなど、距離やスピード、そして練習の目的にはいくつもの種類がある。それをどのように組み合わせるかが走力を上げる上で重要なカギとなる。ランナーのタイプや能力は様々なので、誰にでも有効な唯一のトレーニングメニューと言うものは存在しない。

そうしたこともあるので、最初に述べたように、プレシーズン時期のトレーニング内容はランニングの専門書に委ねたい。数が多すぎて選べないという人には、筆者は最近惜しくも亡くなった故小出義雄氏の著書「30キロ過ぎて一番速く走るマラソン」を強くお勧めする。多くのメダリストを育てた名伯楽が市民ランナー向けに3か月間のトレーニングメニューを目標タイムのレベル別(サブ3、サブ4など)に詳しく解説してくれている。市民ランナー向けとは言え、かなりきつい内容なのだが、もともと42キロを走るなどときついことをやろうとしているのだから仕方がない。問題は指示されたトレーニングメニューをこなすだけの体力がランナーにあるかどうかなのだ。その意味でもオフシーズンの過ごし方を軽く見てはいけない。

この記事の作者

角谷 剛【スポーツトレーナー】
角谷 剛【スポーツトレーナー】
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大谷翔平を語らないで語る2018年のメジャーリーグ Kindle版』、『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。 【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani
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