プロ野球選手の年俸大幅ダウンはどこまで許されるの?
- 2018/12/10
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6億→1億減額もまかり通るそのカラクリとは
今年のプロ野球は成績上位チームと下位チームの格差がハッキリしたせいもあって、戦力強化冬の陣・ストーブリーグが大いに盛り上がっている。
たとえばFA市場では「移籍の決め手は金ではありません事件」が頻発。
お金持ちのあのチームがよもやの本命を取り逃がすシーンも見られ、選手によって望む条件はさまざまなんだな、と改めて考えさせられた。
しかしその一方では「年俸6億→1億提示」オリックスの金子千尋投手(35)をはじめ、思わず「うはぁ…」とため息が出そうな厳しい条件提示を受けた(中にはそれを受け入れた)選手もいて、「おいおい、やっぱりプロは金もらってナンボじゃないのか」という気もしてくる。
というか、一度デッカい金額もらってからの大減俸って、来年の税金もさぞや大変そうだけど、何よりそんなことができちゃうってことがサラリーマン諸君には驚きだろう。
いったいプロ野球選手の年俸減額ってどうなっているのだろうか。
よく聞く○○で定められた減額制限って何だ?
まずこの手のニュースに必ず枕詞として出てくるのが
▼野球協約で定められた制限を超えた年俸減額
というフレーズだ。
そもそも野球協約の第92条には「報酬の減額制限」という条文があり、同条第1号には
(1)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円を超えている場合、(減額幅は)40パーセントまでとする。
とある。
今年の金子クンで見ると、推定年俸6億円の40パーセント減=3億6千万円以下では次年度の契約は締結されない、ということになる。
しかしこれにはただし書きがあって
…ただし、選手の同意があればこの限りではない。
とも書かれている。
つまり金子クンがウンと言えば3億どころか2億、1億でだって契約はできるし(そりゃ感情的には寂しいけど)、不備はないことになる。
こう聞くと「結局選手は球団の言いなりかよ〜」と思うかもしれないが、実は別の面から見るとあながちそうとも言えない事情があるのだ。
球団も経営プランの一環として選手契約を考えている
この「野球協約に定められた限度を超える減額」を示すことは、球団サイドにとっても「諸刃の剣」となる。
条件交渉にあたる前、球団には2つの選択肢があったはずだ。
ひとつは「有無を言わさない大減俸」であり、もうひとつは「協約の範囲内での減俸」である。
もし本当に奮起を促すだけなら「協約内減俸」に収めておけばいいだけの話。
それだと来年もチームとして最低限あなたが必要ですよ、というメッセージ代わりになる。(協約内だと選手は自由契約にもしてもらえない)
協約を超えた減俸を示すことはすなわち「戦力外通告」に近い。
選手に「今後の身の振り方を考えなさい」と即しているのだ。
もちろん今のチームに残る手立てもあるが、来季使ってもらえるか、やる気が出るのかなどの点では大いに疑問。
だから基本はその後選手側から自由契約になるのが普通で、別球団との交渉段階へ移る。
球団が減俸額を「協定内か外か」どちらに設定するかは、今後の球団経営と戦力分析を天秤にかけた「かなりアブないギャンブル」とも言えるのである。
FA市場の盛り上がりこそ大減俸の遠因か?
こうして浮いた予算は新たな戦力補強に使われる。
いまや2ケタをちょい超える勝ち星を挙げたピッチャーなら、FA市場では平気で年俸3億4億の声が飛び交う時代。
年俸がその億ケタに達するまでの時間が昔よりすごく短くなった。
これはFA市場が自由セリ市、いわばオークションサイトであるからで、選手をほしいと思えばいくらでも金を積むことができるからだ。
こうして膨れ上がった高額年俸が次の金子クンを生み、しぼんではまた次のFA選手へと流れる。
予算があとからあとから湧いてくる訳ではないので、結局は狭い世界でのパイの奪い合いでしかない(野球は決して人気産業でもなくなってきたし)。
「おお、あの選手が3年10億で○○に入ったぞ」というニュースの陰には「その予算はあの選手のリストラか」という側面もあるということだろう。
この光景はいよいよメジャーのストーブリーグにも似てきた感がある。
…なんなら、松坂にもっと広告料あげてやってくれよ。