取引先はNASA,Uber!年間2000人見学者が訪れるヒルトップってどんな会社?
- 2018/07/25
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国内にある大企業の下請け工場が、次々と閉鎖に追い込まれ、技術継承もままならない。
そんな中、早くから下請けという立場から抜け出し、一点ものを生産する事に活路を見出した鉄工所がある。
年間2000人も工場見学者が訪れる、謎の会社とは何だろうか。
NASAも取引先という業界の黒子
京都府宇治市に本社を構える「ヒルトップ」は、アルミ切削部品加工メーカーである。
新規5日、リピート3日で、依頼品が納品されるというスピードもさることながら、自社ビルのハデさが目を引く。
元鉄工所だったのに、ガラス張り、ショッキングピンクの壁というのは、中小企業の概念を打ち破る。
取引先は、医療機器、自動車、航空部品、映画業界など3000社におよび、東証上場大手ゼネコンから、Uber、NASAなどの世界的に名前が知れた所までも、お得意様だというのだから、すごい会社だ。
モノづくりで有名なだけでなく、一般的な鉄工所や中小企業の平均利益が3~8%なのに対し、この会社の利益率は20%。
データーによると、売上は17億3000万にのぼる。
京都は大企業の黒子から起業したベンチャーが多い。
トーセの様に未だに『黒子』として活躍し続ける会社もあれば、島津製作所の様に、会社の存在を前面に出した所もあり、さまざまだ。
ヒルトップは、トーセと同じ様に『業界の黒子』に当たるが、元々は、先代の社長が全聾となった現社長の為に興した、自動車部品メーカーの孫請けだったという。
どうやって現社長は、自動車部品の孫請け鉄工所から、『一点モノで利益の出る綺麗な会社』に自社を変えたのか。
そこには、波乱万丈の現社長と副社長兄弟のドラマがあった。
生死の淵からよみがえった会社
ヒルトップは元々、山本精工という鉄工所であり、現社長・正範氏と副社長で弟の昌作氏が会社を引き継いでいた。
兄弟は『油まみれになりながら、汚い工場で部品を大量生産する事が、魅力ある仕事なのだろうか?』と日ごろ常々疑問に感じていたという。
そんな2人の鉄工所が火災に見舞われたのが17年前。
昌作氏は事故で一か月意識が戻らない重症を負い、3度も生死を彷徨ったという。
‘火災で工場を立て直す結果となり、昌作氏は『夢工場プロジェクト』を立ち上げ、どんな社屋であれば仕事がしたいか、毎週水曜日に従業員を集め話し合い、デザイナーに来てもらい図面を引いてもらい、最終稿を幾つか選び、従業員の投票結果で選ばれたのが、あの社屋と各階のレイアウトだった。
オフィスに、部署間の区切りがないのは、昌作氏のアイデアだという。
就活生の目を引くのが、4階にあるスカイラウンジの様な社員食堂だ。
最上階の5階には和室、トレーニングルームの他に風呂もあるという。
下請けだから社屋は汚くてもいいというのは、親会社の押し付けのイメージだと語る、昌作氏。
親会社の言いなりで、大量生産をやっていては日本の中小企業は潰れると予感がした社長。
兄弟の思いが合わさり、生まれたビジネスモデルが『ヒルトップシステム』であり、このビジネスモデルに惹かれ見学者が後を絶たないのだという。
ヒルトップビジネスモデルとは、どんなものなのか。
ヒトもモノも一点モノ
ヒルトップのビジネスモデルは以下の三本柱の元に成り立っている。
1:一点モノを中心に手掛ける
2:職人を作らない
3:従業員にルーティンワークをさせない
一点モノを作るにも関わらず、職人を養成しないのには、おや?と思う人もいるかもしれない。
ヒルトップは、今までの加工情報、納期、取引先などのデータを一元化しているので、そこから技術を学ぶことが出来るのだ。
昼に従業員に知的作業をさせ、夜に機械によるルーティンワークをさせたからこそ、24時間稼働工場を可能にし、短期かつ正確な納品が可能になったのだ。
一点モノの商品開発の為、この会社では人材に対して、以下の3点を心掛けている。
1:わくわくして仕事ができるか
2:右肩上がりの仕事ができるか
3:旧態依然のビジネスモデルから脱却できるよう努力しているか
実際にこの会社に就職したプログラマーなど技術者にきくと、辛いがやりがいはあるというのだから、それなりの努力は求められるのだろう。
このビジネスモデルが確立している事もあり、この会社は、海外でも高く評価され、’17年にはシリコンバレーに進出する事ができたという。
いかがだろうか。
業界の黒子が、起死回生の一打を撃つのは難しい。
だが、この会社の様に『自分にしかできない強み』を見つけた事で、生き残る事も可能なのだ。