なぜローカルサイダーが生き残っているのか?(後編)
- 2017/09/10
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全国各地で生き残る、ローカルサイダー
先日帰省した際に、よく通っていた銭湯が閉店しており寂しさを感じた一方で、懐かしい地元密着型の炭酸飲料とコンビニエンスストアの店頭で再会し、嬉しい思いをしたのです。
中学高校のころ、学校の近くの駄菓子屋などで口にしたローカル色の濃い炭酸飲料。地元でしか目にしたことのない、そんなローカルサイダーは日本全国に分布しているもの。
試しに、身の回りの人にたずねてみて下さい。
今まで耳にしたことのない、ローカルサイダーの銘柄を上げる人が必ずいるはずなのです。そして、その銘柄でWebを検索してみると結構な確率で、現在も生き残っていることを知り驚くはずなのです。
ローカルサイダーの製造元の多くは、ラムネも手がけている
そんなローカルサイダーの製造元は地元密着型の小企業、こんな時代によく生き残っているなと感心しつつ、全国の企業を調べていくと意外な共通点に気が付きます。
大抵のローカルサイダーの製造元はラムネも製造しているのです。
例えば、ローカルキャラクターがラベルにデザインされているようなラムネ、観光地などでよく販売されていますが、それらを手がけているメーカーも大抵地元の小企業。
そして、ローカルサイダーも手がけているのです。
なぜローカルメーカーが、ご当地ラムネを手がけているのか?
「別におかしな話ではないじゃん?」と思われるかもしれません。
しかし、観光地にある「◯◯サブレ」とか「◯◯ラスク」とか。包装紙を解くと、中身はどこの観光地で売られていてもおかしくないような汎用性が高いお菓子。実はそのお菓子、観光地とは何ら関係のないメーカーが手がけており、包装紙だけ変えて流通させていたというケースはよくあるもの。
ご当地ラムネも大手清涼飲料水メーカーが製造し、ラベルだけ変えて販売するという手法が取られても、おかしくないはずなのです。
実は、ラムネメーカーは法律で守られていた?!
ご当地ラムネを地元以外が製造しない、それには訳があります。
大手清涼飲料水メーカーが製造しないのではなく製造できない、参入できない仕組みがあるのです。
「中小企業分野調整法」という法律があります。まあ、正式名称は例によって長いので割愛しますが……
「大企業の事業参入が既存の相当数の中小企業者の経営の安定に著しい悪影響を及ぼす事態が生ずるおそれがあると認めるとき、中小企業団体は大臣に対し勧告をするよう申し出ることができる。(第六条)」
……というもの。この法律の対象に「ラムネ」が含まれているのです。
他に対象になっているのは「豆腐」、シャンメリーなど「シャンパン風密栓炭酸飲料」、チューペットなど「ポリエチレン詰清涼飲料」……といった具合。
つまり、ご当地ラムネを大手企業の参入という脅威に晒されず製造し続けられるからこそ、ローカルサイダーも製造し続けられるというのです。それって、立派な既得権益ですよね。
生き残ったものと、消えゆくもの
ラムネやローカルサイダーを手掛けるメーカーが、中小企業分野調整法のお陰で生き延びてきたことを批判するつもりもありません。そして、何もせずにただ生き延びてきたという訳でもないということを理解してはいます。
ただ、法律で保護されている対象のものと、そこから外れているもの。
方や生き残り、方や消え去ってしまったもの。両者にはどの様な差があったのでしょうか。
大企業の参入により地方色が薄れ、見慣れない風景に変化していく国道沿いで、ローカルサイダーを飲んでいたら、懐かしさだけでない何だか不思議な味がしたという……そんなお話でした。