周辺国も関心?いずも型護衛艦は空母になるのか
- 2019/02/16
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護衛艦はどこまでいっても護衛艦
海上自衛隊が保有・運用している「いずも型護衛艦」は空母になるのかといった話題があちこちで関心を呼んでいます。韓国や中国といった、あまり友好的ではない周辺国も感心を寄せています。中国よりも韓国の方が何かと反応は早いようです。日本の軍事大国化を警戒する声は中国に多く、日本に負けないように軍備を増強しようという声は韓国に多いイメージがあります。
それはともかく、本当にいずも型護衛艦は空母になるのでしょうか。
そもそも、自衛隊は軍隊ではないことになっている日本では、空母を持つことはありえません。護衛艦はあくまでも護衛艦なのです。護衛艦とは、ざっくりいえば軍隊でいう駆逐艦に相当するもの、空母のような全通甲板を持っていても駆逐艦は駆逐艦、護衛艦は護衛艦となります。
ひとつ前の「ひゅうが型護衛艦」の設計時から、全通甲板を持っているのは空母を作るためではないかとの指摘はありました。それが、さらに大型のいずも型になっていよいよ暗黙の了解的なものとなる反面、設計上は空母としての運用に耐えないものであり、改修するくらいなら新造した方が合理的との理由から、あれは空母じゃないよとの意見も多数でした。
そして、現在はF-35Bを載せるという話が本格化してきており、やっぱ空母じゃね? という話になっているわけです。
F-35Bといえば、アメリカの最新鋭ステルス戦闘機であり、短距離発艦と垂直着艦ができることから小型空母や強襲揚陸艦での運用も可能となっています。有名なイギリスのシーハリアーの現代版とでもいうべき軍用機です。
さて、空母という艦種の定義は国によって異なる部分があります。また、駆逐艦(巡洋艦と呼ぶべき艦もある?)を護衛艦と呼んでいることもあり、名目が空母かどうかではなく、実態で判断すべき面があるのも事実です。
空母とは何か?
強襲揚陸艦なども、昔の感覚でいえば空母の一種といえます。少なくとも、一定規模の全通甲板を持ち、固定翼の戦闘用航空機を一定数搭載し運用していれば空母と呼んで差し支えないでしょう。
整備ができないと空母ではないという意見もありますが、一定数の機体を搭載して作戦海域へ進出し、武装を施して発艦させることができれば、戦闘における空母の役割は果たしているわけです。着艦させることができればいうことはないでしょう。その程度で勝負になるかどうかは別にして、空母であることは担保できます。
そもそも、現代では第二次大戦中のような空母機動部隊同士の航空戦などは想定されていません。双方が複数の大型空母から3桁の作戦機を飛ばして戦うという事態など、起こりようがないわけです。空母といっても、数機から十数機の作戦機を飛ばせれば十分なケースがほとんどといえます。そういう意味では、かつての軽空母が思い起こされます。
そこで昔の航空機搭載艦を振り返ってみましょう。この分野では日本海軍がダントツの実績を持っています。
まず、駆逐艦こそ航空機を搭載していませんでしたが、軽巡洋艦や重巡洋艦、戦艦には「下駄履き」と呼ばれるフロートをつけた水上偵察機を複数搭載するのがデフォルトでした。ミッドウェー海戦で一線級空母4隻を失ってからは、重巡洋艦最上を航空巡洋艦に改装しただけでなく、戦艦伊勢と日向に至っては、水上機ではなく艦上爆撃機を空母並みに各22機搭載できる航空戦艦に改装しています。
さらに、潜水艦でさえ水上機を載せたものがありました。風船爆弾を除いて唯一のアメリカ本土空襲となったオレゴン州での攻撃も、潜水艦搭載の水上偵察機が行ったものです。そして、潜水艦の空母化は「伊400型」の投入で実現しました。
従来の水上偵察機ではなく、特殊攻撃機「晴嵐」を3機も搭載する潜水艦で、潜水空母として知られています。下駄履きのデメリットを消すために、発進後はフロートを切り離せる構造になっていたのが晴嵐です。パナマ運河攻撃を計画されていたものの、戦局の悪化で実現しませんでした。
このように振り返ると、改修後のいずも型護衛艦にF-35Bが10機前後搭載されることにでもなれば、空母と呼んで差し支えないといえそうです。それだと憲法違反ではないかとの声もありますが、それはそれで議論されるところです。