金委員長の「日本はなぜ直接言ってこないのか」発言への反応
- 2018/05/16
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悲観的な反応
北朝鮮の金正恩委員長が韓国の文大統領との南北首脳会談の中で「日本はなぜ直接いってこないのか」と発言したとするニュースが出回っています。この発言が出たのは、北朝鮮による日本人拉致問題についての話で、日本の意向を文大統領が伝えたことに対するものとされています。韓国やアメリカを経由した話ばかりで、日本が直接いってこないことへの突っ込みともいわれています。
このニュースを受け、日本の専門家たちの間でもさまざまな反応が起きています。その中で、悲観的な反応の代表的なものをまとめてみました。
・日本の発信力のなさ
日本は韓国を頼らなければ北朝鮮に対話の発信もできないとする反応です。
・日本が置き去りにされている証拠
金委員長が、日本が直接いってこないと思っているように、まさに日本は朝鮮半島と周辺の問題で置き去りにされているとの反応です。置き去りにされているからこそ、韓国に頼まないと北朝鮮へ拉致の解決に向けた話をすることもできないというもの。
・アメリカ追従で平和から遠いことをやっている
アメリカの強硬姿勢に追従し、北朝鮮と直接の対話もできない状況に陥っているとする反応です。加えて、北朝鮮の1億年たっても入れない発言とあわせ、北朝鮮に相手にされていないとまでいう説もあります。
こうした反応を見る限り、日本の外交はどうなっているだと思ってしまうオヤジも少なくないでしょう。しかし、こうした見方がある一方で、まったく別の見方をする専門家の反応もチェックしておく必要があります。
慌てる必要はないとする反応
金委員長の発言自体は、いわば事実を述べたに過ぎないわけです。今回の南北首脳会談に絡んで、日本が直接いっていないことはそのとおりです。(もちろん、別の場面や水面下の交渉ではいろいろあるでしょう)事実を確認しただけであることを前提として、以下のような反応があります。
・北朝鮮の焦りが出ている
わざわざ、日本がいってこないことに言及するということは、金委員長としては日本との対話を望んでいるのだろうとする反応です。なぜ、金委員長が日本との対話を望んでいるのかといえば、日本の態度を経済制裁、圧力一辺倒から、経済援助へと変化させたい。日本の援助を求めているからだろうとしています。
この反応には、米朝会談へシフトした背景にアメリカの強硬姿勢があるとする見方と同じ浄化があります。アメリカ同様の圧力をかけている日本の姿勢が北朝鮮を振り向かせたという解釈です。
・いつもどおり何も変わっていない
金委員長が何を発言したとしても、現実が何か変わったわけではないとする反応です。つまり、反応すること自体が時期尚早という意見であり、しばらく様子を見ていればよいとしています。
さて、こうした反応と見方がある中で、どれが当たっているかは断定的にいえるものでもありませんし、複雑に絡み合っているのが国際社会であり外交というものでしょう。ただ、いつまでもノンビリしているわけにはいかない事情もあります。
拉致被害者もその家族も、どんどん年齢を重ねている事実があることも、時間がない理由のひとつです。
慌てる必要はないものの、スピーディーに解決に向けた手立てを打つ必要があります。慌てずに急ぐという難しい対応が求められていることは間違いありません。
その後、2018年5月10日には、アメリカ高官の訪朝により、拘束されていたアメリカ人3人が解放されています。しかし、日本人拉致の問題は、この件とは同列に語れないものであり、日本として独自の対策を打ち出す必要があるでしょう。もちろん、アメリカなどの関係国との連携を無視した動きはできないという制約がある中で、厳しい対応になることも想像できますが、やるしかありません。