兵銀・拓銀破綻から学ぶ・銀行崩壊の真実と教訓

  • 2018/05/28
  • ビジネス
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  • 沖倉 毅
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日本経済の失われた20年の分水嶺となったのが、銀行破綻、再編である。

銀行は潰れない、何かあっても国が預金者を保護してくれるという神話は崩れ去り、金融自由化が拍車をかけ、
ネット銀行の市場参戦も当たり前となった現在、私たちがバブル崩壊後の銀行破綻、再編から学ぶべき教訓は
何だろうか。

最後の頭取が就任した時は手遅れだった

メガバンク再編のスケープゴートとなった、北海道拓殖銀行(拓銀)と、戦後初の銀行破綻となった兵庫銀行(兵銀)。
この二行を例に、紐解いていこうと思う。

 

最後の頭取が就任した時は手遅れだった

拓銀も兵銀も、破綻当時は大蔵省トップや、法曹出身者が頭取に就いていた。
拓銀は、法曹一家に生まれた河谷禎昌、兵銀は元大蔵省局長、日銀理事の吉田正輝が頭取に就いた。

吉田氏は、平和相互銀行のテコ入れに成功した人物で、兵銀へもテコ入れの為に派遣された。
第二地銀に大蔵省のトップが派遣されるのは異例中の異例、この時既に銀行崩壊が秒読みだった事が判る。

 

最後の頭取が就任した時は手遅れだった

河谷氏も吉田氏も、頭取に就いたのは破綻の数年前だが、両者共『既に手の施しようがなかった』というのだ。

拓銀の場合、’77年から大蔵省出身者が頭取を務め、拓銀に就職する事は道内エリートコースの証でもあった。
だが内部では、役員会の緊張がなくなり、河谷氏が’94年に頭取に就任した頃には株価が下落し、不動産価格も
下落し、不良債権が増え続け、預金の流出が止まらなくなっていたという。

最後の頭取が就任した時は手遅れだった

兵銀も同じだ。
地銀合併、不動産融資で事業拡大した前頭取・長谷川寛雄が亡くなった後に頭取として呼ばれた吉田氏は
蓋をあけた途端、兵銀の財務状況の深刻さに、開いた口がふさがらなくなった。

不良債権の総額は1兆5000億円、回収不能とみられる債権はその半分の7900億となっていたからだ。
そこに襲った’95年の阪神淡路大震災。
三宮の本店が打撃を受け、さらに被害が拡大し、兵銀は後に営業譲渡する、みどり銀行さえも破綻に
追いやる事となってしまう。

銀行がつぶれないというのは嘘である。
’90年代当時は、呑気な事に誰もそれを信じていなかった。
兵銀が経営破綻した同じ日に、大阪最大の信金・木津信用金庫が破綻した時は、預金者の引き出しと怒号で、
木津信の支店は戦争状態となった。

では度重なる銀行崩壊の分水嶺として、これらの銀行がなぜ最初に選ばれてしまったのか。

 

地域密着型の銀行が切り落とされた事実

この2行に共通するのは、以下の2つである。

1:地域密着型の銀行だった
2:大蔵省に届けた事業拡大計画に黒い噂があった

破綻した拓銀の場合、河谷氏によると営業範囲は道内限定、日本経済全体への影響は5%なのだという。
拓銀は破綻前から不動産融資で暴力団が絡んでいたという噂があった為、メガバンク再編から切り落とされた。
政府は金融国会で金融再生法案で、経営が傾いた銀行を一時国有化し行政指導し再編した。

地域密着型の銀行が切り落とされた事実

その結果、多くの銀行が国有化され、名前を変えて再出発している。
日債銀は、あおぞら銀行、長銀は新生銀行という風にだ。

だが拓銀はこの法律が出来る前にスケープゴートとして切り捨てられた。
合併するにも他の12の都市銀行からも遠かった事とメリットが薄かった事、北海道銀行と合併にこぎつけた時には
大蔵省に事業拡大計画がずさんだと睨まれた経緯があったからである。

兵銀もしかりだ。
第二地銀な為、地域密着型の展開しかできないが、乱脈融資が焦げ付いた事や、震災の打撃もあり、
事業再編が不可能と政府から判断されたことが大きな要因だった。

地域密着型銀行は、中小企業に融資している為、破綻するという事は、地場産業の破綻を意味する。
事実、拓銀や兵銀が破綻した後、町のディスカウントスーパーが相次いて閉店し、地元密着スーパーや。
自営業、中小企業が経営危機に陥った。

地域密着型の銀行が切り落とされた事実

国は『日本経済のわずか数%の打撃』と思い、これらの銀行を見放すが、地域の産業はそういうわけにもいかない。
では、拓銀や兵銀だけでなく今の銀行をも脅かす不良債権の原因とは何だろうか。

 

系列ノンバンクや、投資商品勧誘が危ない?

日銀は黒田総裁の元で、株や不動産投資信託まで買い、物価をあげているが、実際に日本の消費を支えてるのは
’80年代の様な、バブリーな日本人ではない。
儲かってるのも一部の企業だけで、国民の大半に恩恵がない状態だ。

系列ノンバンクや、投資商品勧誘が危ない?

’80年代まで13行あったメガバンクが、今、みずほ、りそな、三井住友、三菱UFJの4行しかない。
主要大都市ではメガバンクの支店は大幅に減り、支店の跡地は商業施設になっている。
この様な状態を黙ってみているだけでよいのだろうか。

昔も今も、銀行の経営を脅かすのが、系列ノンバンクの融資である。

系列ノンバンクや、投資商品勧誘が危ない?

店舗要らず審査ほぼゼロキャッシングローンとして急速に進んだ系列ノンバンクや不動産融資だが、
これが母体である銀行を脅かす時限爆弾となるのは、今も昔も同じなのだ。

見返りが3割あるかどうか判らないのに事業をスタートさせた、スルガ銀行の女性向けシェアハウス
『かぼちゃの馬車』がいい例だろう
あれはバブルの教訓が全く生かされていない証拠である。

年金生活者向けに投資の勧誘をするのも、その商法がいつまで続くか分からない。
40代までのオヤジ予備軍は『給料は手元にあるだけ使ってしまう』という無計画な男どもが多く、投資を計画的に
やっている人間どころか、貯蓄をしている男もごくわずかだ。

系列ノンバンクや、投資商品勧誘が危ない?

これから銀行が生き残るためには、オヤジ予備軍である30代~40代の男性を中心に、無駄金をはたかせず、
利口に貯めさせるセミナーなどを定期的に開き、金融商品に紹介してけば良いのではと思う。

オヤジに出来る事は、バブルは金余りでよい時代だったとイタい話をする事ではない。
今だからこそ話せるバブルの教訓と、お金の運用方法を教える事なのだ。

この記事の作者

沖倉 毅
沖倉 毅
ビジネスと国際関連をメインに執筆しています沖倉です。 転職経験と語学力を生かし、語学教師とフリーライターをしています。 趣味は定期的に記録会に出る水泳、3000本以上お蔵入り字幕なしも観た映画、ガラクタも集める時計、万年筆、車、ガーデニング、筋トレです。 どうすれば永遠の男前になれるかをテーマに、取材は匿名を条件に記事執筆に勤しみます。
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