悩めるオヤジは歌舞伎に学べ!伝統芸能はマナーの宝庫【マナーの達人】

  • 2019/05/30
  • ビジネス
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  • 杉浦 直樹【マナーの達人】
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オヤジは若い人たち、特に若い女性に注目されたい

オヤジは若い人たち、特に若い女性に注目されたいと思うと、ついつい派手な服装やアクションをしてしまいがちです。

しかし「へへ、俺ってちょい悪オヤジ」「バブル世代をなめるなよ!」なんていい気になっているのは自分だけで、周りには「うわ!下品、引くわ~」と思われているかもしれません。シラヌハオノレバカリナリ・・・。

今回はそんな悩めるオヤジへの処方箋として、元歌舞伎役者である私が、

・なぜ歌舞伎は派手なのに下品ではないか

・ダンディズムの原点「かぶき者」とは?

・伝統芸能から学ぶマナーと教養

といったポイントをお伝えします。

これさえ読めばあなたを見る周りの目が変わります。

ぜひ最後までお付き合いください。

 

派手なだけの「チャラい」ヤツにならないために

ここでは派手で大胆に振る舞ってもチャラいと思われない秘訣を、歌舞伎をヒントにして探ってみます。

歌舞伎は派手だがチャラいという人はいない

歌舞伎の舞台はとにかく派手です。金糸銀糸を使った派手な衣装に、デコレイティブなカツラ。顔には隈取りをほどこし、朗々とした大声でセリフを語ります。

しかし歌舞伎の舞台を観て「うわ!チャラい」「下品」という人はいません。

一体なぜなのでしょうか?

リスペクトされるためには伝統的なマナーと教養を身につける

歌舞伎が観客から喝采を浴び、歌舞伎役者が世間からリスペクトされるのは、400年にわたる歴史に支えられた伝統と、そこから導き出されるマナーと教養を歌舞伎役者が身につけているからです。

そしてそこには厳格なルールと、厳しいお稽古、訓練がある。

派手な見かけの裏にある「ちゃんとした」ところが人々の尊敬を集めるのです。

ということは、私たちも伝統的なマナーや教養を身につければリスペクトされる、ということになります。

 

歌舞伎の語源となった「かぶき者」とは?

歌舞伎の語源となった「かぶき者」とは?

「ステキ!」と言われるオヤジのモデルとして、歌舞伎の語源となった「かぶき者」を紹介します。

花の慶次

かぶき者として有名なのは、マンガ『花の慶次』の主人公「前田慶次」です。

パチンコ台にもなったので知っている方も多いのではないでしょうか。

加賀百万石の祖、前田利家の甥である前田慶次は、南蛮人のような服装の上に虎の毛皮を羽織り、京都の遊郭中の遊女を集めて豪遊します。

また気に入らない相手がいれば、それがたとえ誰であろうとケンカをして殴り倒す。それを時の天下人、太閤秀吉に叱られようが気にしない。

ちょい悪オヤジどころではありません。極悪オヤジです。

かと思えば和歌を詠み、茶の湯をたしなむという文化人・風流人の面も持ち合わせています。

マナーと教養に裏打ちされた派手さ。まさに現代の歌舞伎に通じるところがあるわけです。

和歌と茶の湯をたしなむパーティーピーポー

かぶき者とは「傾く」、つまり派手な格好をしてケンカなどに明け暮れる、現在の「半グレ」のような人々を指しました。

しかし現在の半グレとの最大の違いは、しっかりとしたマナーや教養を身につけていながら「あえて」それを無視し、「悪」を楽しんでいる点にあります。

楽しむといっても現代と違って一歩間違えば刀でバッサリ切られてしまう世の中ですから、傾くのも命がけです。

日々派手な格好をして遊郭で遊びまくるパーティーピーポーでありながら、友人達と和歌のやりとりをし、茶の湯への造詣も深い。

このジキルとハイドのような二面性こそ、人を惹き付ける強力な魅力となるのです。

 

伝統芸能から学ぶ男の「品格」とマナー

歌舞伎、能、狂言といった伝統芸能からは、男として大切な品格とマナーを学ぶことができます。

重心の低さ

歌舞伎の基礎となる日本舞踊では、ひざを伸ばしきって立っている状態、いわゆる「棒立ち」でいることはありません。

必ずほんの少しだけ(意識だけでも)ひざを曲げ、重心を下半身に持ってきます。そうすることで姿勢が安定し、次の瞬間にあらゆるアクションを取ることが可能となるからです。

安定しつつも、いつでも不測の事態に備えることができる。カッコイイ大人の男の姿勢として相応しいものではないでしょうか。

落ち着き

重心の低い姿勢は精神的な落ち着きにも影響します。

どんなことにでも対応できる姿勢を取っているわけですから、「来るんだったらいつでも来い」と平然としていられるわけです。

そしてそんな落ち着いた姿は、人々を惹き付ける大人の男を演出することができます。

所作の美しさ

日本舞踊では指先の動きや目線の配り方が重要となります。なんとなく手を動かしたり、ものを観るのではなく、指先にまで神経を集中し、はっきりとものを見つめる。

例えば部下の女性に書類のコピーを頼むときも、渡す書類を無造作に持つのではなく、指先にまできちんと神経を通わせて持って渡せば、「あれ?いつもと何か違う」と思われるはずです。

そんなちょっとした所作(動き)の美しさに、人は惹き付けられるのです。

 

教養は「お金にならない」からこそ価値があり、おんなにモテる

小説家の吉行淳之介先生は、「知識は仕事につながり、金になる。しかし教養は金にならない。だが人を豊かにする」とおっしゃいました。

ここでは伝統芸能から学べる「教養」についてお伝えしていきます。

女形は女を知る一番の方法

歌舞伎では男性が女性を演じます。普通に考えれば、大の男が女性を、それも時には10代のお姫様などを演じるわけですから、キレイに見えるわけがありません。

しかしそれが時として女性よりも美しく見えたりもする。なぜなのでしょうか?

それは女形は女性の「エッセンス」を集めた、女の中の女だからです。

歌舞伎の女形は性転換手術をしているわけでも女性ホルモンを注射しているわけでもありません。それゆえ女らしく見せるためには、細部にまでこだわった緻密な工夫が必要です。

現代の女性が忘れてしまっている女性が本来持っている美しさ。それを集めて濃縮させたものが女形の「芸」なのです。

女形を見れば女性が分かる。ぜひとも歌舞伎を鑑賞し、女形の芸を堪能してみてください。

おとこもすなる着物の着付け

男性が着物の着付け教室に通っているという話は聞いたことがありません。

しかし男性が自分自身の着付けだけではなく、女性の着付けも覚えていたとしたらどうでしょう。

夏の花火大会で着崩れた浴衣をササッと直してあげたり、お正月の晴れ着の襟元を整えてあげたりすれば、「この人何者???」と驚かれ、強烈に興味を持たれるはずです。

たとえ着付け教室で必死に覚えたのでも構いません。「いや~母親が着付けの先生でね」とでもごまかしておけば良いのです。

仕事には多分なんの役にも立ちませんが、人生が豊かになることは間違いありません。

古典の重要性 人は知らないものに惹き付けられる

最新の映画や音楽に詳しい人はたくさんいます。しかし古典、特に日本の古典文化や文学に詳しい人はほとんどいません。

興味を引きたい女性に「ねえ、○○って映画知ってる?」と聞いても、「ああ、この間観た」と言われるのがオチですが、「この前、原宿にある浮世絵美術館に行ってきたんだ」といえば、「え!原宿に浮世絵美術館があるの!?」と驚かれ、「じゃあ今度一緒に行ってみようか?」という展開になるかもしれません。

人は自分が知らないものに興味を持ち、惹き付けられます。

女性にモテたければ、女性が知らない教養を仕入れておくのです。それには伝統芸能、伝統文化が最適です。

 

かぶき者はダンディズムの原点

かぶき者はダンディズムの原点

かぶき者は傾くため、つまり派手に目立つために命をかけました。そしてそのようにいつ「死の瞬間」が来るのか分からないからこそ、常に身の回りのことにはきちんとしたルールやマナーを持っていたのです。

派手なようでいて実は豊かな教養があり、自分を厳しく律するマナーも持ち合わせている。

かぶき者こそ、オヤジが目指すダンディズムの原点といえるのではないでしょうか。

 

今回の記事が悩めるオヤジの参考となれば幸いです。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

この記事の作者

杉浦 直樹【マナーの達人】
杉浦 直樹【マナーの達人】
間国宝 故四代目中村雀右衛門門下の元歌舞伎役者。日本舞踊の師匠は藤間流宗家七世藤間勘十郎(現三世藤間勘祖)。幼少の時より日本舞踊を習い、大学卒業後歌舞伎役者となり、歌舞伎座、国立劇場などの舞台に立つ。三味線、鼓などを得意とし、能や狂言、落語といった他の伝統芸能にも造詣が深い。歌舞伎役者を引退した後はJSA(日本ソムリエ協会)認定ソムリエの資格を取得し、広尾のフレンチレストランをソムリエ兼支配人として運営していたことから、ワイン、テーブルマナーにも詳しい。特にブルゴーニュとシャンパーニュの古酒(40年以上前のもの)を得意とし、繊細で壊れやすい古酒ワインを料理とマリアージュさせる知識には定評がある。
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