アブドーラ・ザ・ブッチャーはなぜ人気ものだったのか!
- 2019/03/11
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コミカル、キャッチー、かつ凄惨というキャラクター
昭和のプロレス黄金期、最も有名な外人レスラーといえば、アブドーラ・ザ・ブッチャーでした。初来日は1970年、2012年に引退するまで来日回数は140回以上、40年以上に渡り日本マットを賑わせてきた人気者です。私、アントニオ犬助はブッチャー初来日の年に生まれましたから、当時の印象はありませんが、そのころのブッチャーは体重100kg程度で細身の体型。スピードを活かした打撃中心のスタイルだったといいます。しかし、そのスタイルを続けていたならば、大成はしなかったのではないか?と、犬助は思うのです。
なぜなら、ブッチャーが日本で人気になった最も大きな要因とは、ブッチャーという言葉の響きと、アンコ型の体型がマッチしていたから。何ともコミカルでキャッチー、「太めの体型=ブッチャー」という図式ができあがるほどで、当時、各学年に一人は「ブッチャー」というあだ名の子どもがいたもの。アンコ型のレスラー故・橋本真也氏のニックネームも、やはりブッチャーでした。
そんなブッチャーですが、リング上では一転して恐ろしかった。五寸釘、栓抜き、フォークといった様々な凶器で相手の額を割り、挙句は自身も大流血、凄惨な試合にお茶の間は恐怖で凍りついたものでした。象徴ともいえるのが、1977年の世界オープンタッグ選手権におけるザ・ファンクスとの一戦。ブッチャーがテリー・ファンクの右腕にフォークを突き立てる!アブドーラ・ザ・ブッチャーと聞いて犬助が、真っ先に思い出す試合なのですが、コミカル、キャッチー、そして凄惨というキャラクターが同居しているという様が、ブッチャーが人気者だった理由でしょう。
キャラクター作りに、大きな役割を果たした梶原先生
また、そのころ「週刊少年サンデー」で連載されていた「プロレススーパースター列伝」もブッチャー人気に拍車をかけました。タイトルは「地獄突きがいく!A・T・ブッチャー」、梶原一騎先生によるストーリーが光ります。空手の師匠がガマ・オテナ先生だとか、炒めた小石に手刀を突き立てて地獄突きを特訓したとか、今思うとほとんどが創作なのですが、犬助を含めた当時の少年はブッチャーのストーリーに夢中になったものでした。
そして、ここでもクローズアップされるのはブッチャーのコミカルさ。
「はずかしがる女の子のパンティーをぬがすみたいで、おもちろーい」「あッ、いった、いった、ミーが一番トサカにくることをー」どんなシーンで発せられたセリフなのかは割愛しますが、これだけでもブッチャー編の雰囲気は十分伝わることでしょう。また、ブッチャーを単にコミカルなキャラクターとして終わらせないのも梶原先生の素晴らしいところ。「同情されるくらいなら憎まれろ!それが男だ!」
ヒールとして、男としての美学を感じさせるセリフを(作品中で)ブッチャーは口にしているから、カッコよさもある。これなら人気が出るのは当然ですよね。
サービス精神の固まりの様なレスラーだった
その後ブッチャーは新日本プロレスへ移籍を経て、1987年からは再び全日本プロレスのリングに上ることになるのですが、このころからブッチャーは、お茶の間を凍りつかせるようなファイトを控えるようになります。そして前座試合で会場を暖める役割を担っていくのですが、それでも人気はすごかった。飛び抜けた知名度のある外人レスラーですから、入場曲のピンク・フロイドが流れ、おなじみの巨体が表れただけで大歓声。会場の雰囲気が最高潮に達するのです。
そして試合もそこそこに終わらせると、ブッチャーは客席でひと暴れして帰っていくのですが、テレビカメラも入っていない地方会場にも関わらず、必ず流血してくれたもの。期待されていることをやってやろうという、サービス精神の固まりがブッチャー人気なのだと犬助は感じたものでした。
一言で表すなら、キャラが立っていたということ
キャッチーなリングネーム、凄惨かつコミカルという唯一無二なキャラクター、一言で表すならば「キャラが立っていた」ということになるのですが、これブッチャーを稀代の人気者にした要因です。今の時代、ここまでのキャラクターが存在するか?と考えた場合、寂しさを感じてしまうのは、犬助だけではないと思います。彼に比べたら、現在のプロレス界の何と薄味なことか。まあ稀代の人気者、アブドーラ・ザ・ブッチャーと比較すること自体が、間違っているのかもしれませんが。
そして旺盛なサービス精神、期待されているならば、どこでも流血してみせることに加えて、リングを降りてもサービス精神が旺盛というのがブッチャー。プライベートでのブッチャーに握手を求めた友人いわく、地獄突きを繰り出す手の感触は非常にサラサラしており、触り心地が良かったそうです。