西宮神社で参拝一番乗りを競う「開門神事福男選び」ってどんな歴史があるのか?
- 2019/01/29
- ライフスタイル・娯楽
- 252view
- 教養/知識
- イベント
- 教養
- 日本
- 歴史
- 知識
- 神社
福男の前に、べっぴんそろいの「福娘」をご紹介
「商売繁盛で、笹もってこい」といえば、関西ではおなじみ「十日えびす」。
商売繁盛の神様として信仰を集めていますから、祭りがおこなわれる毎年1月9日から11日には、えびす様をおまつりする神社が参拝客でにぎわうもの。
中でも有名なのが、大阪市浪速区にある「今宮戎(いまみやえびす)神社」。商売の街・大阪だけに、3日間で100万人が参拝しますが、お決まりの手順は、まず本殿で参拝して「福笹」を授けてもらうというもの。その後、小判や米俵などを形取った縁起物「吉兆」を笹に結びつけてもらい、「銅鑼」を叩いて神社を後にします。
ということで吉兆は付き物なのですが、悩ましいのは1個当たり1,500円ほどしてしまうこと。吉兆がいくつも付いた豪勢な福笹にするには、お金がかかる。かといって吉兆が1個だけの福笹は何ともさびしいものなのです。ということで多くの人が買い求めるのが、あらかじめ吉兆が付けられた熊手や箕(みの)。これらは関東でもおこなわれる「えびす講」でも、おなじみかもしれません。
一方で高額な吉兆の購入には楽しみもあり、それは「福娘」が笹に結わえてくれること。何しろ今宮戎の福娘は、数1,000人の中から選ばれるということもあり、べっぴんさんぞろい。彼女たちと言葉を交わすだけでも、吉兆代の価値があるという人も多いもの。人出が比較的少ない「本えびす」10日の午前中や、「残り福」11日には、記念撮影にも応じてくれるかもしれません。
方や殺気立っていることで有名になった「福男」選び
とまあ、和やかな(忙しいときには修羅場っていますが)「福娘」に対して、何とも殺気立っているといえば「福男」、兵庫県西宮市「西宮(にしのみや)神社」の「開門神事福男選び」。こちらは全国に1,500あるという、えびす神社の総本社ですから格式も充分に高い。「十日えびす」には、件の今宮戎に負けないほどの人出でにぎわいます。
毎年1月10日、開門と同時に大勢が本殿目がけて駆け出す午前6時。その様子はテレビでも報道されるようになり、近年すっかり有名になりました。そして今年も「福男選び」に参加した約5,000人が230mの参道を駆け抜け、1番に参拝した人が「一番福」となり、3着までがその年の「福男」となったのです。
そんな福男、選ばれると何か恩恵が得られるのか?というと、木彫りのえびすさんや認定証、酒などがさずけられる「だけ」。にもかかわらず、あそこまで殺気立つ理由といえば、単に名誉のため。
福男に求められる能力は230mをトップスピードで走りきる力だけではありません。事前の抽選で好位置に陣取れるという運も必要。福男は力と運を備えているという、名誉ある称号なのです。
イベントが全国区になったのは、2004年の騒動から?
しかし、私、アントニオ犬助の記憶では「開門神事福男選び」は、それほど有名なイベントではありませんでした。現在のように全国に知られるようになったのは、2004年に起きた「福男妨害事件」がきっかけではなかったでしょうか?
仲間内から福男を出すために、他の参加者を組織的に妨害したという騒ぎは、テレビでも取り上げられて、大きなものとなりました。そして数日後、福男を返上することで騒動は幕を閉じたのですが、今でいう「大炎上」。
妨害騒ぎは決して良いことではないと思うのですが、そこまで叩くか?と、元福男が気の毒になったのを犬助は覚えているのです。
昔はのどかなものだった、福男選び
そんな不幸なことになってしまった福男、2004年の彼だけではありません。
トラックにひかれる、バイクを盗まれる、新車に傷をつけられる、彼女と別れる、インフルエンザに2回もかかるなどなど、少し調べただけでも不幸になった福男の例が出るわ出るわ。今回の福男もSNSで良からぬことを暴露され……こうなってしまうと名誉とはいえ、福男も考えものなのです。
そんな「開門神事福男選び」、記録に残っている最古のものは1913年(大正2)ですが、それ以前の江戸時代から開門にあわせて競うように参拝することは、おこなわれていたといいます。また、西宮神社の公式HPには1921年(大正10)からの歴代福男が掲載されているのですが、驚くのは今の様にイベントが過熱する以前は、連続して福男となっている人物がめずらしくないこと。田中太一なる人物は1921~1935年と15回連続して福男の栄誉に輝いています。
そんなのどかな「開門神事福男選び」、そして現在の殺気立ったイベント。えびす様は一体、どちらを支持するのでしょうね?