正午は午後0時?正午の反対の呼び方ってなんでしょう?
- 2018/10/02
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探せばある太陰暦や尺貫法の名残り
トンカツにしろ、カレーライスにしろ、スパゲッティ・ナポリタンにしろ。
日本は欧米の物を取り入れてまったく別のものにしてしまうのを得意としています。このルーツは何か? と考えてみると、明治維新期に盛んに唱えられていたスローガン「和魂洋才」にあるのでしょう。日本古来の精神を大切にする一方で、欧米の優れた文物も取り入れていこうという考え方ですね。
その過程ですっかり廃れてしまったものとして、太陰暦や尺貫法があります。しかし、それらは日々の生活の片隅でしっかり生き残っているもの。
例えば今年の「十五夜」は9月24日だったのですが、十五夜とは元来、月が美しい特定の秋の夜を指していたのではありません。
太陰暦では満月が出る特定の日を、十五夜と呼んで30日ある月の真ん中としていたから。つまり、十五夜は太陰暦では毎月あったもの。満月の夜はいつも十五夜だったということですね。
また尺貫法の名残とえいえば建築業界が思い浮かびますが、それだけではありません。
ケーキ店でホールケーキをオーダーする際に用いる4号とか5号とかいうサイズ。これは直径が4寸、5寸であることを表しているもの、実は尺貫法に由来しているのですね。
人を呪うなら、決められた時間に!!
太陰暦や尺貫法と同じく廃れてしまったかに思えるものとして、「十二時辰(12じしん)」と呼ばれる、明治期以前に使われていた時間の単位があります。
一日24時間を順に、子・丑・寅……の十二支に割り振ったもので、23時からの2時間を「子の刻」、1時からの2時間を「丑の刻」といった具合に呼んだもの。
人を呪い殺すには「丑の刻参り」と今も昔も相場が決まっていますが、これはワラ人形を適当な木に打ち付ければ良いというものではありません。ワラ人形を打ち付けるのは霊験あらたかな神社境内のご神木、もしくは大鳥居。時間はもちろん丑の刻……午前1時から3時の間におこなわなければならないのです。
正午の「午」はウマのことなのです
さて、刻には2時間ずつが振り分けられているというのは、ご説明したとおりなのですが、2時間という幅はいくらなんでも幅が広すぎる。「未の刻に待ち合わせね」なんて約束の仕方では、最悪2時間待たされても文句が言えなくなってしまいます。
そこで用いられていたのが「一つ」、「二つ」という副単位、それぞれ30分が当てられていました。つまり「草木も眠る丑三つ時」とは、午前2時からの30分間を指すのです。
また、二つと三つの間を指して「正」と呼んだ。「正丑」とは午前2時ちょうどのこと。
江戸時代に時間を知らせるために用いられていた寺の鐘は、それぞれの正の時間、1日12回鳴らされていたといいます。
ということは午後0時、午前12時は「正午」、もちろん「牛」ではなくて「午(うま)」の刻の「正」という意味ですね。
また、正午を真ん中と考えて、その前を「午前」、その後を「午後」と呼ぶのも「十二時辰」の名残ということになります。
正午の反対語は「正子」、「まさこ」ではありません
では正午の反対語、今でいう午前0時、午後12時のことを十二時辰では何と呼んだのか? というと「子の刻の正」つまり、「正子(しょうし)」と呼びました。
しかし、正午と比べて正子の存在感のなさはどうでしょうか。これについては私、アントニオ犬助の想像になるのですが正子の時間は普通寝ているから、正午ほどは日常的に使われなかったからではないか? と思うのです。
正子だけではありません、もちろん正丑、正寅、正卯なども同様に使われなくなってしまいました。この理由は語呂が悪かったからではないでしょうか? 「しょううし」「しょうとら」「しょうう」……これはちょっと呼びにくい、ならば午前2時、4時、6時でいいではないか? となったのではないかと思うのです。
ところで、先ほどの「丑の刻参り」なのですが、安易な気持ちで取り組むのはやめておきましょう。「人を呪わば穴2つ」……なんて、いいますし。