ロックとは、友だちがいない子どものためのもの
- 2017/08/30
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ネヴァーマインド前夜の米音楽シーン
アルバム「ネヴァーマインド」の大ブレイク以前、アメリカのヒットチャートはガンズ・アンド・ローゼズに代表されるスタジアムロック勢と、ティーンエイジャー向けのポップミュージックに占有されていた、とされるのですが広く音楽シーンを見てみると当然そうではありません。
当時、盛り上がりを見せていたのが「CMJチャート」、大学生向けのミニコミ誌「カレッジメディアジャーナル」による音楽チャートです。そこには、ビルボードのようなダイナミズムこそないものの、熱心な音楽リスナーであるアメリカの大学生らによる、独自のミュージックチャートがあり、ユニークなバンドが小ブレイクをしていた。結果、大ブレイクしたのが「REM」なんですけれどね。
華のなさで大ブレイクしそこねたピクシーズ
ニルヴァーナ前夜のCMJで盛り上がっていたバンドといえば、ダイナソーJrやソニック・ユースなど、歪みまくった音を特徴とするギターポップ勢。アメリカのオリジナルパンクの影響が非常に色濃い連中です。
その中でも、独特のポップな曲調で人気を集めていたのが「ピクシーズ(PIXIES)」なのですが、まあメジャーでブレイクするには少々難点がありました。リードボーカルのブラック・フランシスを始めとして、華が一切ないのです。
ブラック・フランシスはとんでもないデブですし、ベースの紅一点キム・ディールはただの姉ちゃんです。ドラムとサイドギターに至っては、さながら中南米からやってきた不法移民……まあ、華がない。
しかし、彼らの音は非常に先鋭的でしたし、ニルヴァーナも大きな影響を受けたのは有名な話。
だって、彼らの最大のヒット曲「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」はピクシーズの「ディベイサー」という曲を耳コピーしていた際に生まれたという話もあるぐらいですから。
ロックとは本来、陰キャラのためのもの
「元々ロックなんて、友だちがいない子どものためのものなんだから」
そんなピクシーズのデブちんフロントマン、ブラック・フランシスの言葉です。
日本でも、大体満ち足りた学生生活を送っている人間は、アメリカのCMJチャートからピクシーズなんてバンドを見つけてきて悦に入ったりはしませんし、ギターを手に取ったりはしないもの。犬助の時代の、今でいう「リア充」は、カラオケ映えする曲ばかり聞いていたものです。
ロックとは本来、友だちがいないといった「陰キャラ」の心の隙間に染み入るものという言葉は、非常に的を射ていたのです。
オヤジにロックは必要ないのか?
最近のロックが心にしみないのはなぜなのか? しばらく、こんなことを考えていた時にふと思い出したのが、先述の言葉でした。
犬助の感受性のエッジが鈍ったか? とか、いや、つまらない音ばかりだからか? とか、色々考えていたのですが、何のことはない犬助自身が陰キャラからリア充へと、変貌を遂げたからに違いないという結論に達したのです。
家族を持ち、職場や取引先では良い仲間に恵まれ……そんなオヤジには、ロックなんて必要ないのです。
例えば、皆さんもご両親を思い出して下さい。彼らはロックなんて聴いていましたか? 絶対に聞いてはいないでしょう。
さて、件のピクシーズ、2004年の再結成以来、すっかり伝説のバンド扱いをされてしまい、フジロックフェスティバルやサマーソニックにも出演していました。
これで、ブラック・フランシスもリア充への転換を遂げたのかな? などと思った次第。
まあ、相変わらず、デブで冴えないルックスでしたけどね。