自動車ローンがあっても債務整理はできるが

自動車を新車で買うと安くても100万近くのお金が必要です。もちろん、中古車でも高級車となれば新車以上の価格が珍しくありません。そこで、現金一括購入できない、しないという人がローンを組んで買うことがあります。

自動車ローンとかマイカーローン、オートローンなどと呼ばれている商品ですが、住宅ローンとは異なり、利率も結構な数字であることが多いようです。

さて、自動車のローンだけならよいのですが、他にも複数のローンやキャッシングローンなどを抱えていると、毎月の返済が困難になってくることもあります。一時的なものであればよいのですが、恒常的に支払いが困難となれば、それは多重債務状態といえます。

借金で首が回らなくなったとき、債務整理をすることが一般化しています。債務整理とは、債務、この場合は借金のことで、借金を整理する手続を呼ぶ言葉です。債務整理の方法には、自己破産、個人再生、特定調停、任意整理の4種類があります。

簡単に違いを解説しますと、自己破産は、持っている財産を差し出す代わりに、残る借金について免責してもらい、法的には支払い義務がなくなる状態を目指す手段です。個人再生は、住宅ローン以外の借金を大幅に減額することで、3年間での完済を目指す制度です。

特定調停は、債権者との話し合いを簡易裁判所の調停委員会を通じて行う手続で、概ね3年程度で完済できる条件を探ります。そして、任意整理は、他の3種類と異なり裁判所を利用せず、当事者だけで和解すべく話し合いをすることをいいます。これも、概ね3年程度での完済を目指します。

ここで、自動車ローン支払い中のクルマがあるのだが、債務整理はどうすればよいのだろうという疑問があります。結論をいえば、債務整理はできますし、ケースによってはするしかない状況も考えられます。

そのクルマの持ち主は誰か

債務整理を行うと、借金を約束どおりに返済できないということを自ら認めたことになります。したがって、信用状態は著しく悪化します。当然、信用情報機関にも債務整理の事実が登録されます。

では、このときローンが残っているクルマはどうなるのか？
まず、そのクルマの持ち主は誰かが問題になります。一般に、ローンで買った商品の所有権は、返済が完了するまでは買主に移転されません。つまり、自分は所有者にはなっていないということです。車検証にクレジット会社やディーラーの名前が書いてあれば、自分のクルマではありません。

ただし、銀行のローンを利用している場合は話が別です。銀行ローンでは、所有権の留保をしていないケースが多いといわれています。かなりザックリとした表現をすれば、銀行としてはお金を貸しただけであり、クルマそのものについては関知していないというスタイルです。

所有権を持っていない場合、債務整理を原因として所有者がクルマを引き上げてしまう可能性があります。原則はそうです。そのかわり、自分のものではないので、自己破産した場合でも処分対象にはなりません。

実際に引き上げられるかどうかは、ケースバイケースです。引き上げても無意味な程度の価値しか残っていなければ、そのままということもあります。また、任意整理で、クルマのローンを対象から外している場合などは、返済が続いていれば引き上げられないこともあります。任意整理と特定調停では、整理する借金を選択できるのが特徴です。

所有権を持っており、自己破産した場合には、20万円を超える残存価値があれば財産として処分対象となります。しかし、クルマがないと困るという場合は、自由財産の拡張ということで残せる場合もあります。このあたりの運用は、裁判所によって異なることがあります。

中には、クルマを処分されるのが嫌だといって身内などに売却したことにする人もいるようですが、偽装は駄目です。財産隠しですから、発覚すれば自己破産した意味がなくなるどころか大変な事態に発展しかねません。