沸き起こったクレームに、グッチはどう対応したのか?
- 2019/02/23
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好調のグッチに浴びせられた冷水
過剰なボタニカルな刺繍があしらわれたり、巨大な虎がいたり、ヘビがいたり、ハチがいたり……「グッチ(GUCCI)」のコレクションがぶっ飛んでいます。これを手がけているのは、クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ氏。彼は2015年から、この職を務めているのですが、そのコレクションは奇抜で奔放。私、アントニオ犬助は常々、グッチのテイストは誰が支持するんだろう?と、思っていました。だって、あれでは大阪のオバちゃんです。ところが、これがウケにウケている、絶好調だといいますね。
ところが、そんなグッチに冷水を浴びせるような出来事が起こりました。秋冬のコレクションに含まれていた1枚のタートルネックのセーターにクレームが付いたのです。黒色のそれは襟元を口まで引き上げられるようになっており、そこには大きな唇がデザインされていました。
「奇抜を旨とするグッチらしいデザインなだけで、何が問題なんだ?」と、犬助には感じられたのですが、クレームを付けた側には黒人蔑視に写ったらしい。彼らの身体的特徴をカリカチュアしたものだというのですね。
クレームに対してグッチが取った対応
グッチのコレクション全体が理解できない犬助は、このクレームも同様に理解できず難癖に思えました。コレクションに心血を注いだミケーレ氏やスタッフなら、なおさらだったことでしょう。
クレームに対してグッチはどう出たのか?
黙殺するという方法もあったでしょうし、黒人蔑視の意図はなかったというコメントを出す方法もあったでしょう。また「クレームは表現の自由に対する挑戦である」と逆切れするのも有効だったはず。なぜなら、どこからかクレームが付くかもしれないとビクビクしながらおこなわれる表現など面白いはずがないから。奇抜さ奔放さがウケているミケーレ氏にとって、表現に制限をかけなけることは死活問題だけに、表現の自由を盾に取れば説得力も増したと思うのです。
言い放たれた、冷静かつ秀逸なフレーズ
しかし、この件に対してグッチが出したコメントは非常に冷静でした。
「われわれは、多様性は尊重されるべき基本的な価値観だと考えている」、ただちに店舗とオンラインショップから問題の商品を撤去したのです。
クレームと対決するようなコメントを出しても得られるものなど何もない、この様に判断したグッチは非常にスマートでした。すでに大きな名声を得ているグッチですから「金持ちケンカせず」、ケンカをして事を荒立てるのを嫌ったということでしょう。
そして感心したのが「多様性は尊重されるべき基本的な価値観」というフレーズ。つまり、自身のコレクションを不快だと感じる人も尊重すると宣言。全ての価値観を尊重しなくてはならないという、当たり前のことをグッチは再認識させてくれました。
もっと寛容であれというメッセージ
この件については学ぶところが多いもの。考えてみれば「多様性は尊重されるべき基本的な価値観」というのは魔法のフレーズなのです。
たとえばコンビニのおざなりなレジ対応に、不快な思いをしたとしましょう。そんなときに「多様性は」とつぶやくだけで怒りも収まるもの。なぜならレジ担当の人も、相手を不快にしてやろうとして対応したはずはないから。犬助の目におざなりに映った仕草も、彼にとっては精一杯の対応、それも多様性なのです。「多様性は」、このフレーズを突き詰めて考えると寛容さということになるでしょうか。
願わくば、もっと多様性が尊重される世の中を。といいますか、このことはグッチではなくクレームを付けた側も念頭に置くべきと思うのです。