革靴の使い分け、出来ていますか?
- 2019/09/21
- ファッション
- 1057view
- 鞄/靴
- シューズ
- ファッション
- 革靴
秋の装いを考えたくなる季節。つい最近、友人のテーラーに行った時に話をしたのですが、その友人はまあ、お店でオーダースーツを売るし、スーツなども好きなため、自分用の服もオーダーする訳です。
しかし、その友人は今回、ジャケットは1着も作る予定がないと。理由は簡単で、ジャケットって身体のサイズが変わらない限りは、結構長く着続けられるんですよね。
だから買い足したくても、クローゼットが一杯になってしまっていると。自分も10年以上前のジャケットがまだ普通に現役で残っています。
じゃあ、他のどんなファッションアイテムを買うのか?という話になるのが、ファッションにどっぷり浸かっている我々らしいダンディズム。
ダンディって、日本では渋くて格好良いイメージが先行しますが、そもそもは「服バカ」という様な、軽蔑の意味も含みます。
我々はその、そもそもの意味の方でのダンディというヤツが少し(?)は入っているんだろう、という自覚のもと、ファッションの提案に邁進しているのです。もちろん、かのボー・ブランメル(元祖ダンティです)の様に莫大な借金で国外逃亡までして格好をつけるほどではないですけどね。
話が逸れましたが、そのテーラーの友人はジャケットを作らないなら、靴が欲しいという話になりました。それは私も分かる。服に偏っていると、服の量に対して靴が少なく感じるものです。
そこで意気投合したこともあり、私も靴を少し調べたりして、物欲を掻き立てられておりました。
しかもこの時期、ちゃんとした装いが当たり前になっていく季節の中で、靴を疎かには出来ません。
実のところ、靴をどうするか?というのはファッションアドバイスでは最初というより、服を決めていくその最中にハッと気付いて「どうしたら良いんですか?」なんて聞かれる事が少なくありません。
という事で今回は、あらかじめ靴の事を知っておいていただくためにも、大人の靴、革靴について大まかな全体像をお伝えしましょう。
これを知っているだけでも、革靴の使い分けが出来る様になるので、結果的にお洒落になれます。なんと言っても「お洒落は足元から」ですからね。
今回は色んな名称が出てきます。個々に言及していくと話が進まなくなるので、お話の流れ重視で書き進めています。それぞれ分からない言葉などは、ぜひ検索してみて下さいね。
フォーマルな靴を知っておく
ↁ
まずは、フォーマルな靴って何か?という話からスタートしましょう。革靴ですから、合わせる大人の服となるとスーツがメインになってきます。スーツが出てくるなら、イギリス由来のフォーマルにも触れておくのが妥当ですからね。
まず、最もフォーマルな靴はオペラパンプスです。これは最もフォーマルな服とされる燕尾服(テイルコート)に合わせる靴とされるため。
いきなり革靴ではないのですが、何故か?という理由もあります。革靴だと、そこに付ける靴墨で、女性のドレスを汚してしまうから。
「え?そんなの、汚さない様に気をつければ良いだけでしょ?」と、思います?
このルールが定められた時代が古いんですよ。その当時、フォーマルな装いをするのは社交界。そこでは、男性と女性でダンスをするのが当たり前の事としてありました。
つまり、ダンスの際に女性のドレスの端を踏む事は珍しくなかったのです。だから、オペラパンプスだったんですね。
ちなみに、現在では貴族が集まってダンスまでする場は、日本にあるのか?という状況だし、オペラパンプスを売るところも少ないためあまり現実的な選択肢とはなりません(画像素材サイトを探しても、なかなか出てこないくらいですから)。
そこで次に出てくるのが、エナメル仕様の内羽根キャップトゥです。いきなり専門用語でなんの事か分からない状態になってしまいますね。
革靴なのですが、エナメル塗料を塗って表面をテカテカにし、靴墨も付かない様にします。さらに内羽根と、キャップトゥ(ストレートチップとも呼ばれます)という仕様で出来たものを、オペラパンプスに次ぐフォーマルな靴とみなしています。
簡単にいうと「なるべく継ぎ目がなくてツルッツル」なのがよりフォーマルなのです。でもね、その考え方で行くと、実は疑問が出てきます。
『キャップトゥよりも、プレーントゥの方が継ぎ目が無いぞ。プレーントゥの方がフォーマルじゃないのか?』と。
この考え方は正しいです。が、このルールも定められたのは遥か昔。その当時は、プレーントゥという、継ぎ目なく靴の型に成形できる技術が無かったのです。だから、キャップトゥという形がフォーマルとされたのです。そこからルールが変わっていないので、キャップトゥが最もフォーマルとされているのです。
ただ、ここまででも「ルールブック上の話」な感じが強いんです。実際のところ、我々が良く使うであろうフォーマル靴というと、普通の黒い革で出来た、内羽根のキャップトゥという事になります。これは、1つ持っておくとフォーマルな場にも臆する事なく履いていけるので、良いですよ。
内羽根か外羽根か
さて、内羽根という言葉を普通に使ってきました。これって、紐を結ぶタイプの革靴の、紐を通す部分の仕様について言う名前。内羽根に対して、外羽根という仕様があります。
内羽根は、その名の通り紐を通す羽根の様な形状のパーツを本体の内側に付けたもの。外羽根は、本体の外側から付けたもの。
「なるべく継ぎ目がなくてツルッツル」に見えるのは内羽根なので、内羽根タイプの革靴の方がフォーマル寄りのデザインとされます。
内羽根タイプならスーツに合わせ、外羽根タイプならジャケット&パンツスタイルに合わせる。なんていうのが、定番の合わせです。
ただその仕様以外でも、靴の装飾などでフォーマル度は変わってきますから、実際にはもう少し複雑な選択をする楽しみがあって面白いんですよ。
紐靴かそうでないか
さて、紐靴の大まかな違いはお伝えしました。ただ革靴の中には紐を通さないもの、スリッポンタイプというのがあります。ローファーなんてまさに、スリッポンタイプの代表格ですね。
このローファーは、紐靴よりもカジュアル向きとされます。オペラパンプスはスリッポンタイプなんですけどね。でもそこは別格で、革靴としてはスリッポンタイプの方がカジュアル。
なので、スーツスタイルよりもジャケット&パンツスタイルに良く合います。
コインローファーやタッセルローファー、ビットローファーやコブラヴァンブなど、クラシックなスリッポンタイプにも色んな種類があるので、結構悩めます。
ちなみに、日本では室内に入ると靴を脱ぐ場合もあるので、このスリッポンタイプが脱いだり履いたりしやすいという事も良く言われます。その辺りも考慮しつつ、このスリッポンを上手に選べると良いでしょう。
色はどう選ぶ?
革靴の色は、スーツスタイルではその他の革小物と色を合わせるのが基本とされます。革小物とは、腰のベルトと腕時計のベルト、あと鞄ですね。これらは、着る服の色ともバランスを取る必要があります。
スーツと、フォーマルウエアが生活の中に溶け込んでいるヨーロッパの文化では、無地の黒い服はフォーマルウエアとしての認識が強いもの。シャツは白。だから、フォーマルではないビジネスの場では、それ以外の色が選ばれる事が多いんです。つまり、黒無地のスーツや白無地のシャツは、基本的にビジネスウエアとしては選ばれにくい。
実際には、スーツの色としてはチャコールグレーやネイビーだし、柄は織りによって作る柄や、あとはストライプが一般的です。
シャツは、淡いブルーや、白でもストライプなどの柄入りが良く使われます。
この辺りの装いから、装いを組み立てていきます。
バランスとしては、モノトーンに近い装いなら、黒い靴が合わせやすく、色が付いてくるなら、茶色が合わせやすいだろう。という、かなり大雑把ではありますが、こんな判断を最初にすると選びやすいかと思います。
ちなみに、ヨーロッパと言ってもイギリスではビジネススタイルに黒い靴を合わせる事が多い反面、大陸側にいくと茶色が多くなる様です。
私はイタリアスタイルを実践しながら学んだタチなので、革靴は黒だと落ち着かなくて、茶色を選びがちです。そんな国の違いといった視点で選んでみるのも面白いですよね。
使える靴って?
写真素材番号:
こんな風に色々選ぶところがあるので、結局どうしたら良いのか?ってなかなか分かりにくいですよね。なので、それなりに使える靴の形を最後に少しご紹介しておきましょう。
- 紐靴なら
フォーマルな感じを出したいなら内羽根。キャップトゥにするとかなりフォーマルですが、そこにブローグ、つまり穴飾りがあると、華やかにカジュアル感が出るのでオススメです。穴飾りの度合いごとに、フルグローブ、セミグローブ、クオーターグローブと大まかに分かれています。
アクティブに歩いたり動き回る事が多いなら、外羽根が良いでしょう。プレーントゥのシンプルなタイプが、使いやすくて良いですよ。
ちなみに、ブーツをスーツスタイルに合わせるのも格好良いのですが、ちょっとテクニックが必要になってくるので、ここでの説明は省きます。興味ある!ならぜひ、個別にご相談下さい。
- 紐履でなければ
ローファーやビットローファー、タッセルローファーは王道です。特に靴の脱ぎ履きが多い日本文化では、このスリッポンタイプが活躍します。畏まったスーツに合わせると、足元だけカジュアルな印象になってしまう場合があるので注意が必要ですが、ビジネスの現場ではカジュアル化が進んでいることもあるので、もっと出番は増えてくると思います。
あと、ストラップを使ったモンクストラップというタイプもオススメ。ストラップが1本のものと、2本のダブルモンクストラップがあり、どちらも足元にアクセントを与えてくれます。
- 色は?
色にも少し触れておきましょう。日本のメーカー含め、ビジネスの場では黒い革靴の着用率が高いですね。しかし先述の通り、着る服の色によっては黒い靴だとそこだけ主張が強くなり過ぎてしまう場合があります。黒って、合わせるのはそんなに簡単ではないのです。
グレースーツなど、白黒をメインとした着こなしであれば黒の靴でも良いのですが、そうでなければ濃い茶色の靴をオススメします。それだけで、装いにまとまりが出てくるものです。
- 形の注意点
最後に、気をつけたい形についてお伝えしておきましょう。靴の先があまりにも長く尖ったものは、もう趣味の範疇になるので、畏まった場ほどオススメできません。
比較的ちゃんとしたフォーマルな靴を売るお店で、どれくらいの靴先が適正なのか、機会のある時にチェックしておくと良いですよ。
ここは若干流行もあり、ちょっと前までは先が丸く、やや野暮ったい感じのものが流行っていました。いまはスタンダードなものが多いので、チェックするには良いタイミングと言えます。
以上、革靴と言っても全てではなく、オーソドックスに普段使いできるところを中心に、その使い分けの基本的な部分をお届けしました。まずは、この分け方に沿ってお手持ちの靴、そして服を確認してみてはいかがでしょう。自分がどんな格好をしていたかが見えてくるはずです。